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カテゴリ:開業医の勉強( 34 )

医学界新聞今週号に「Lifelong Learner”としての町医者の「心得」」について書きました

医学界新聞9月3日号の特集「”Lifelong Learner”としての町医者の「心得」」で、医者の生涯学習に関し、思うところを書かせていただきました。

そうそうたる先生方の中で書かせていただき、恐縮しておりますが、ご笑覧いただければ幸いです。
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02992_01

1)自らの知識、学習方法、さらに学習意欲を批判的吟味する
2)学習したことを「作品化」する
3)他医師、他職種とつながる

の3箇条を上げましたが、いくら医者が学習しても、学習することで「患者さんのアウトカムが良くなっている」「患者ー医師関係が良くなっている」のでなければ、ただの自己満足で終わるとも言えます。

学習することが、自分自身の仕事のビジョン、ミッションの実現につながっているか、自分の行動変容にどう影響しているかを検証することが最終的には大事かなと思います。これソロプラクティスではなかなかできないことですが。

そこで他職種、他医師との連携やピアレビューが大切になってくると思うのです。

そのへん字数の関係で書けなたったので、ちょっと補足。
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by dobashinaika | 2012-09-03 13:49 | 開業医の勉強 | Comments(0)

家庭医療学冬季セミナー、そしてジャクソン・ポロック展

この土日は、東京で行われた第7回若手医師のための家庭医療学冬季セミナーに参加しました。
「気持ちが若手」なら誰でも参加可能ということで、医院リニューアルのヒントも得たいと考え「家庭志向」「地域診断」の2つのワークショップを選択しました。

ワークショップなので、写真のようにロールプレイあり、ワールドカフェあり、普段の医師会の講演会などとは全く違った楽しくも緊張感のある時間です。
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「家族という枠組みの中で患者の医療に焦点を当てる」「Community as Partnerモデルを用いて地域を診断する」
などなど明日からやらなきゃと思うこと満載でした。

このプライマリケアの熱気を、自分がやっている医師会の活動にも取り込みたいのですが、なかなかままならないで時間が過ぎていきます。
しかしながら、そう言っている間に、自分が何もしなくてもこの勢いは必ず無視できない日本医療のひとつの潮流になってくるように思えてなりません。


セミナーのあとは、会場やや近くの東京国立近代美術館に「ジャクソン・ポロック展」を観に行きました。
絵の具のはね、滴りは偶然の産物でカオス的と思われがちですが、じっと見ていると必然性を帯びたものであることに気づきます。

タイム誌が彼の作品を「カオスだ、くそったれ!」と評したのに対し、ポロックは「カオスなんかじゃない、クソったれ!」との反論を電報で送ったそうですが、本音なのだろうなと思いました。
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なかなかにいい休日でした。
by dobashinaika | 2012-03-04 18:55 | 開業医の勉強 | Comments(0)

ロールプレイ体験を通してうつの人への接し方を学ぶ:第23回寺子屋勉強会

今日は、7年前から私と森るりこ先生(森るり子内科クリニック)が幹事で開催している「寺子屋勉強会」の23回目でした。

今回は昨年5月に引き続きメンタルクリニック秋田駅前の稲村茂先生、同院看護主任の斎藤衆子先生を講師にお招きして、「かかりつけ医がうつを診る工夫」と題して、ロールプレイを交えた体験学習をしました。

前半のレクチャーから稲村先生の箴言が随所に発せられ、うつを診るプライマリケア医としては刺激満載です。
「自院は『医療を否定する』つもりでデザインした」−医院らしくない待合室、白衣無しなどなど
「開業してみると少量の薬でも聞く人がいることがわかった」ーレキソタン1mgx2 でも効くパニック障害もあり
「患者さんの話には優先順位がない。診察していくとだんだんそれがクリアとなる、それが治っていく過程」
「薬を出すときは、これは最高量の何分の1ですよ、といって出す」
「減量のタイミングを常に考慮する」
「薬だけでは治りませんと最初に言う」

後半は斉藤先生の手際の良いfacsillitateに先導されて、まず全員参加自己紹介(囲んだ椅子の中で、参加者ひとりづつと一定時間中に、昼食べたものを言いながら自己紹介)。
続いて3人1組になり、それぞれは「患者」「医者」「観察者」の立場になり、シナリオにそってロールプレイしました。医者役はBad役とGood役のシナリオが与えられ、叱責、根性論で患者を追い詰める役回りと、つらさを受容し傾聴を行う役、2役を演じます。

各立場を演じることで「気づく」ことは多々あります。
「励ましは、患者の不快を誘う」
「まず受け入れる」「患者さんの言葉を繰り返す」
「希死念慮を聴くときは、『それくらい辛いと死にたいと思うこともありますか?』というように「辛さの程度」を聴く形で聴く
「ストレスはありませんか」と聴くより「つかれること」「つらいこと」はありませんかと聴く

ロールプレイの後は、皆で拍手をするという行為により、自分に戻る儀式をしました。
その後円座になり、今日感じたことのシェアリング(言語化)を行いました。
「解決しようと思わないこと、解決はできないと思うこと」
「内科的な訴え、頭痛、腹痛などの来院でも、まずは受け入れ、傾聴することが大切だ」
「次の受診につないでいく一言を」
「何回も繰り返し来院する患者さんであっても、苦しいから来るのである」
「リーダーシップ、メンバーシップ、オブザーバーシップの3者の視点を考えることが大切」ー3人1組はその点で最適でした。

久々の参加型学習、参加人数は雪の影響もあり、少なめでしたが、濃い「気づき」がありました。
稲村戦線、斉藤先生、ご参加の皆様、ありがとうございました!!!
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by dobashinaika | 2012-02-25 23:57 | 開業医の勉強 | Comments(0)

急性冠症候群地域連携パスの取り組みについての講演を聴く

今日は、仙台循環器病センターの藤井真也先生の講演を聞きました。

演題名は「急性冠症候群地域連携パスの取り組み」です。

藤井先生は、循環器専門病院の循環器内科部長として、専門治療にあたっておられながら、現在の病院−診療所関係の紹介−逆紹介モデルに対し明確な問題意識を持ち、かかりつけ医をハブとして患者を中心にその回りに医師、看護スタッフ、介護福祉スタッフ、行政などが取り巻く患者中心モデルへの脱却を唱えておられ、その高い意識に敬服いたしました。

同センターは心臓疾患の急性期治療のみならず、専任医師のもと、心臓リハビリに力を入れているとのことです。
宮城県は急性期心臓カテーテルを施行できる施設が13あるのに対し、心臓リハビリ指導士のもとにリハの出来る施設は4つしかないとのことです。これは実は大変アンバランスだと思われます。もちろん急性期のカテーテル治療は非常に大切ですが、その後のリハビリテーションはそれと同等、いやそれ以上に大切です。心臓リハビリには、患者さんの予後を明らかに改善するというエビデンスがあるからです。これは、カテーテル治療などのエビデンスよりも強固です(両者を比べることは乱暴ではありますが)。

また藤井先生から、同センターで行なっている「急性冠症候群の地域連携パス」についてご紹介がありました。
同センターでは地域の循環器専門開業医9施設と連携を取り、急性冠症候群で紹介された患者さんに、服薬指導、食事指導を行った上でパスを作成し、退院時、4ヶ月後、12ヶ月後の心カテ時に開業医に郵送し、事前に外来での経過を記載してもらい、入院時の経過や検査結果を記載の上また郵送するという形で情報共有を行なっているとのことです。

この郵送法だと、患者さんが「運び手」となることがなく持参忘れがないという利点があります。診療所では経過や検査結果を記載し専門医に報告する、専門医はカテの結果などを報告する、こうしたキャッチボールを紹介状の上だけでなく、パスという共有ツールを使うことで、患者情報がより「見える化」できるというわけです。

開業医にとっては、急性期入院の時、どのような指導や支援がなされたのかが明確にわかり、その後のフォローは大変スムーズに行くと思われます。

藤井先生は「かかりつけ医の高い意識がなければここまでできなかった」とおっしゃておられましたが、やはり藤井先生始め同センターの初期努力の賜物とも言えると思います。
このような、開業医からの視点、そして何より患者さんからの視点をしっかりと持った専門医の存在は、大変貴重でかつ心強いと思いました。

追記:本日やや暖かかったせいか、患者さんが多く、疲れていたため会場の写真を撮り忘れました。代わりといっては僭越ですが、仙台循環器病センターのホームページをご覧下さい。
http://www.mygsji.or.jp/junkanki/index.html

by dobashinaika | 2012-02-21 23:48 | 開業医の勉強 | Comments(0)

β遮断薬の講演会を聴く

本日は名古屋から平光ハートクリニックの平光伸也先生を仙台にお招きして、循環器内科を標榜されている仙台周辺のプライマリケア医の先生を対象とした講演会の座長を務めさせて頂きました。

平光先生は、名古屋で自らのクリニックをご開業の傍ら、大変な数の講演会や執筆活動をされています。そして、これがすごいのですが、近隣のご開業の先生方のグループで臨床研究を常に企画され、年に数本の論文を発表されているという、ある意味サブスペシャリティを持ちながらの開業医としてのロールモデルとなるお仕事をされておられます。そのご活動の一端は先生のホームページで伺うことができます。
http://www.hiramitsu.jp/

今日のテーマは「高血圧から慢性心不全〜β遮断薬を使い分ける〜」の演題名でご講演いただきました。

慢性心不全の慢性期治療として、現状ではまだまだベータ遮断薬は開業医にとってアンダーユーズになっていること

ACE阻害薬との併用法

各β遮断薬の使い分け方、導入法の実際、心拍数、血圧が高い場合、低い場合の投与法

抗不整脈作用、突然死予防、抗狭心症作用

拡張障害とβ遮断薬

などなど、いずれも興味深い内容でしたが、平光先生にはエビデンスとご自身の経験の両者のバランスが大変程よい形で提示いただき、特にご自分のクリニックのデータをふんだんにご紹介されるところに大変共感を覚えました。
参加者は10名ちょっとと少数でしたが、それだけに質問が絶えず、質疑応答20分以上、その後の情報交換会でもさまざまなディスカッションが活発に行われ、双方向性の高い勉強会だったと思います。

今後参加したい勉強会はこのような、「目の前の患者さんの問題解決に役立つ」「双方向性である」ことが大切であることを再確認です。
by dobashinaika | 2012-02-08 23:29 | 開業医の勉強 | Comments(0)

携帯電話と脳腫瘍の関係についての大規模コホート研究を批判的吟味しました

本日、”ジャーナルクラブはやぶさ”(開業医仲間で月1回行っている論文抄読会)で6月に引き続き「携帯電話と脳腫瘍」に関するコホート研究を読みました。

Use of mobile phones and risk of brain tumours: update of Danish cohort study
BMJ 2011; 343:d6387


南郷栄秀先生の「初めてコホートシートVer6.2」を使用して批判的吟味をいたします。

0. このチェックシートを用いるのは適切か?
コホート研究→なのでこのままチェックを続ける

1. 論文のPICOは何か
P: CANULI コホート:1925年以降に生まれ1990年まで生きている30歳以上のデンマーク人。移民は除く。デンマークの社会的不公正と癌に関する疫学研究施設によるコホートであり、登録者の社会経済的背景が把握されている

I: 携帯電話非購入者:1982年-95年のデンマークの購入登録記録からの収集データ。個人契約に限る,初回登録時18歳未満を除外など。 358,403人

C: 携帯電話非加入者

O: 中枢神経腫瘍発症率、全がん発症率

2. 予後、病因、危険因子、害、予測ルールのいずれかを見る研究か?
害をみる

3. 追跡期間はどれくらいか?
1990年から2007年までの18年間
Outcomeを生じるのに十分は追跡期間である

4. 結果に影響を及ぼすほどの脱落があるか?
Strength and limitations of the studyのところに全体の脱落率2.2%の記載がある

5. Outcomeの観察者が危険因子についてmaskingされているか?
記載がない。
しかし、がん発症の有無は登録患者のデータベース検索によるものであり、outcome評価には影響を与えないと考えられる

6. 交絡因子の調整が行われているか?
多変量解析による調整が行われている。
log linear Poisson regression morel

7. 結果の評価
1)がん発症男性122,302人、女性133,713人。中枢神経腫瘍は男性5111人、女性5618人
2)男性は携帯電話使用者で減少傾向、女子は減少傾向なし
3)喫煙関連がんは、男性も女性も携帯電話使用者で減少傾向
4)高学歴者では携帯による癌の相対危険と喫煙者の相対危険は同程度
5)携帯電話使用の中枢神経腫瘍発症相対危険は男女とも1に近い
6)神経鞘腫の発症は携帯使用男性でやや高いが明らかではない。5年未満の使用者でやや増加するがdose-response関係はない。女性では関係なし。
7)髄膜腫は女性で携帯使用者の相対危険が22%減少したがdose-response関係なし
8)その他の脳腫瘍では結果は様々で、dose-response関係なし
9)部位ごとの神経鞘腫の発症は、側頭葉でやや増加した。最初の9年で増加しその後減少。
10)後頭葉で最も増加し、4年以内使用者が最高発症率
11)頭頂葉では関係なし
12)その他の部位および部位不明の脳腫瘍は明らかに増加し、10年以上使用者で多かった→nが少ない

結論
1)全体としては、携帯電話使用と中枢神経腫瘍発症との関係は見られない
2)携帯使用により女性の髄膜腫は減少し、男性の神経鞘腫は増加したがdose-response間消えはなかった
3)最も注目される側頭葉での神経鞘腫の増加は見られなかった

###デンマークは国民層背番号制を敷いており、健康管理、疾病管理が日本と比べて信じられないほど遂行されています。そのしっかりしたデータベースで様々なコホート研究がなされている訳ですが、今回も30万人に及ぶ大コホートで、しっかりした追跡がなされ、発症率などは確かなものと思われます。ただし、対照群の選定方法が詳しく記載されていないようです。

結果としては、以前6月のブログで取り上げたinterphone研究の、最高10分位の通話時間の群で神経膠種が有意に増加したという結果とは違い、全体として一定の関係はないということです。

ただし、本文でも述べられているように研究限界として1)携帯電話加入者でもあまり使っていない人の存在 2)個人加入者のみが対象であり、法人契約をして使っているビジネスユーザーを対象としていない 3)1996年以降の加入者が非使用者にカウントされている 4)通話時間でなく加入年数で比べている、といった点があり、特に2)のビジネスユーザーが対象となっていない点は、曝露最高位の層が含まれていない恐れがあります。

まだ議論すべき点の多い問題のようです。
by dobashinaika | 2011-10-31 23:08 | 開業医の勉強 | Comments(0)

ストレス関連疾患についての勉強会

今日は、当院のご近所、国見台病院から診療部長の小田康彦先生をお招きし、近隣の開業医の先生方対象に「ストレス関連疾患の理解と治療」というテーマで勉強会を開きました。

小田先生は毎日午後をストレス外来に当て、一人1〜1.5時間かけてストレスが原因と思われる症状を示す方を診ておられます。いわゆるストレス関連疾患は多岐にわたっており、治療法も多様です。それらを体系的にわかりやすく解説していただきました。
印象に残った情報を列挙します。

・ストレスはゼロにはできない、良いストレスと悪いストレスがあり、良いストレスを持つように努力すべき
・経過には警告期、抵抗期、疲弊期があり、たいてい疲弊期になって紹介されることが多い
・ストレスによる不安は予期できる不安と予期できない不安がある。後者の制御が難しい
・患者は辛い気持ちをファンタジーとして捉え膨らませてしまう。
・辛い症状さえなくなれば大丈夫と思い込みがちだが、内面の葛藤に注目することが重要
・ストレスへの防衛規制が過剰になったときに疾患となる

・最近のうつ病はメランコリー親和型はまれで、新型うつと呼ばれる,他者に責任を求める他責型、逃避型が増えている。
・うつ病では各種治療法で、気分が良くはなるが社会復帰に至る道のりが困難。リハが重要
・阪神大震災と今回の震災を療法経験している人が数人受診している。診断はPTSD。阪神のときがフラッシュバックする。
・PTSDに対する記憶想起法では、過去の記憶が無防備に訪れるのを防ぐため、自分から意図して記憶を言語化してもらう。それまでに辛さがあるので、守ってあげることが大事

いっぱい勉強になりました。何より大事なのは、近くに頼りになる精神科専門医がいることですね。
by dobashinaika | 2011-07-28 23:35 | 開業医の勉強 | Comments(0)

ジャーナルクラブ”はやぶさ”開催しました!

本日、開業医仲間のジャーナルクラブ“はやぶさ”を開催しました。(新幹線「はやぶさ」と衛星「はやぶさ」にわいた2010年に発足したところからの命名です)

以下の3論文につき、批判的吟味を心がけて行いましたが、ほとんど雑談しながらのリラックスムードで楽しめました。

1)境界型人格障害Borderline Personality Disordersに関するNEJMの総説
Borderline Personality Disorder N Engl J Med 2011; 364:2037-2042
・BPDはプライケア患者の6%、75%が女性
・9つのうち5つのクライテリア(現実回避や自暴自棄、不安定で強烈な対人関係、気分や感情の不安定、怒りの制御困難、自己障害行動、自殺企図,アイデンティティ障害、転化やストレスに関連した偏執狂的観念)を満たせば診断できる
・42-68%が遺伝因子に関連。MRIでの診断研究あり。環境の影響も重要
・2年間で45%、10年間で85%の高い寛解率、10%の低い再発率
・患者は本当に心配をかけている誰かに関わっていないと生きている価値はないと思っている。
・病名告知によって助けられたと思う
・うつ、双極性障害との誤診されやすい
・弁証法的行動療法が有効,薬物療法の効果は限定的

2)高齢者アルツハイマー型認知症における身体活動と認知機能の関係に関するRCT
Effect of Physical Activity on Cognitive Function in Older Adults at Risk for Alzheimer DiseaseA Randomized Trial JAMA. 2008;300(9):1027-1037
・P:オーストラリア、パースの50歳以上の地域住民
・E:歩行を中心とする6ヶ月身体活動
・C:教育プログラムだけで身体活動に変化の少ない例
・O:認知機能
・結果;18カ月の追跡で、わずかではあるが身体活動群で有意に認知機能の改善が見られた

3)非ワーファリン服用心房細動患者における脳卒中リスクスコアの価値
こちら参照

やっぱり、複数人と論文を読むとたくさんの新たな発見があって、大変勉強になります。来月もまたやります。
by dobashinaika | 2011-07-20 22:51 | 開業医の勉強 | Comments(0)

3.11後、同時改定前のこの時期の日本プライマリケア連合学会参加記 #PCconf2011

皆様には休診などで大変ご迷惑をおかけいたしましたが、札幌で開催された日本プライマリケア連合学会に出席して参りました。文字通り日本のプライマリケアに関する最大の学会で、今回は1,800名の参加を数え盛況のうちに終了しました。

私は日頃、循環器系の専門医の学会によく出席しますが、この学会はそうした専門医学会とはまるで雰囲気が異なります。
まず、夏だとはいえノーネクタイ、軽装の人が非常に多い。なんとTシャツにジーパン、サンダル履きの人も発見しました。また講師のおはようございますの挨拶に大声で答える若い医師をいくつかの会場で見かけました。こんなこと専門医学会ではないことです(笑)。会長の草場先生からして1999年卒でまずかなり若いですし,デイスカッションで時間オーバーもあまり気にしない,ワークショップ形式が多いなど、大変フリーな空気が流れていたのが印象的でした。

しかしそれにも増して感じたのは、日本の医療の大きな潮流です。
猪飼周平氏の「病院の世紀の理論」にあるように、病院中心の医療は20世紀で終焉を迎え、歴史の必然として地域包括ケアへと、医療の中心が大きくパラダイムシフトしつつあります。
学会では、この時代背景に呼応するかのように、さまざまなパラダイムシフト的なキーワードが語られました。
「patient」から「person」へ、「キュア」から「ケア」へ、「問題解決型」から「解釈型へ」、「仮説検証型」から「仮説生成型」へ、「医師主導」から「多職種コラボへ」そして「病院」から「地域」へ。

こうしたコンセプトの重要性はずいぶん早くから気づかれていて、同学会が何年も前から認識し実践してきたことだと思われます。
しかし、3.11以降、医療介護報酬同時改訂前のこの時期に丁度符牒するかのように、プライマリケア医、家庭医の持つ熱気、熱いエネルギーが一定の形を持ってこれほど台頭してきたことに大変な頼もしさと、そして大きな時代のうねりを感じました。

もちろん、まだ例えば家庭医の後期研修プログラムを持っている医療機関は少ないですし(宮城県でようやく一施設で立ち上げが予定されています)、全体としてはスタートラインに立ったばかりかもしれません。既存勢力、特に医師会などとの調整といった障壁もあるでしょう。

しかしながら、3.11を経験してしまい、コミュニティーのつながりがいかに大切かを知ってしまったわれわれは、もはや地域全体を俯瞰する視点の大切さを否定することは到底できないし,そうした俯瞰的視点を持値、なおかつ個別の問題に対処できる医療者の重要性も身を以て知ったと思います。ライフラインがすべて止まったあの日々、一人暮らしの高齢者を支えたのは、ご近所の人の差し入れや民生委員さん、町内会のかたがたの支援でした。避難所では全般的問題を相談できる医療者が何より求められました。在宅患者さんやご家族は、往診のありがたさをこれほど感じられたことはないと口々におっしゃっていました。今後慢性期の地域復興で最も要求される医療リソースはプライマリケアです。

もはやこの潮流はあらがいようがありません。そうした時代の大きな潮流が、目の前にありありと立ち現れたことを北の大地で実感して参りました。
それにしても梅雨のないからっとした風が吹く北海道はよかったです。本気で住みたいと思いました。この時期だけね(笑)。

4日からまた通常診療&心房細動関連のブログ再開します。
by dobashinaika | 2011-07-04 00:31 | 開業医の勉強 | Comments(0)

脳腫瘍リスクと携帯電話使用の関係:WH0ワークグループ分類の元論文を読む

本日、”ジャーナルクラブはやぶさ”(開業医仲間で月1回行っている論文抄読会)で「携帯電話と脳腫瘍」に関する論文を読みました。
トピックスとなっていますので、取り上げてみました。

Brain tumour risk in relation to mobile telephone use: results of the INTERPHONE international case–control study The INTERPHONE Study Group*

International Journal of Epidemiology 2010;1–20 doi:10.1093/ije/dyq079

この論文は、先日WHOの国際がん研究機関(IARC)が、携帯電話を発がん性評価カテゴリの「2B」;Possibly Carcinogenic to Humansに位置づけた根拠が含まれていると考えられます。

南郷栄秀先生の「はじめてケースコントロールシートVer2.5」に沿って批判的吟味いたします。

1.論文のPECO
O(結果):神経膠腫、髄膜腫
P(患者):症例=2000~2004年に神経膠腫、髄膜腫と診断された患者2425例および2765例。世界13カ国、30~59歳。
対象=年齢、性別、居住地域(イスラエルでは民族も)をマッチングさせた一般住民。
E/C(曝露):携帯電話を6ヶ月以内に平均週1回以上通話した(regular use) /累積通話時間/累積通話回数。

2.症例は偏りなく集められているか?
症例の選び方の基準:脳神経内科または外科専門施設で組織学的あるいは明らかな画像で上記と診断された症例。
施設内での連続症例かどうかの記載はないが、おおむね医療機関ないで明確な基準で診断されている。

3.対照は偏りなく集められているか?
対照を集める基準:年齢、性別、居住地域(イスラエルでは民族も)をマッチングさせた一般住民。
同じ母集団ではなく、その地域での住民を選んでいる。
マッチンクがされているが、社会経済因子、家族歴等の因子は考慮されていない。

4.曝露因子はバイアスを最小にして適切に測定されているか?
Discussionで述べられているように様々なバイアスが考えられる。
インタビュー時間:全部の項目に答えなかった例が症例で78%、64%、対照で58%いる。短いインタビュー時間の人に全く携帯を使わない人が多い。
前駆症状;頭痛などの症状があると診断がつく前に気以来の使用を控えてしまう可能性がある。
インタビューの時期:最近インタビューした人ほど携帯を使っている傾向がある。

5.論文で取り上げられた交絡因子は何か?
年齢、性別、居住地域、民族(イスラエルのみ)は考慮された。
社会経済的地位、遺伝的因子などはマッチングされていない。

6.交絡因子が最小になるように調整されているか?
マッチング、統計学的補正はなされている。

7.結果
1)Regular userでは神経膠種[OR 0.81; 95% confidence interval (CI) 0.70–0.94] 、髄膜腫(OR 0.79; 95% CI 0.68–0.91)のリスク減少が認められた。
2)10年以上のユーザーでの脳腫瘍リスク上昇は見られない。
3)生涯通話回数の全10分位と生涯通話時間の下位9分位のオッズ比は1未満。
 4)生涯1640時間以上通話した人では、神経膠種のオッズ比は1.40 (95% CI 1.03–1.89) 、髄膜種のオッズ比は1.15 (95% CI 0.81–1.62) 。
5)神経膠種は側頭葉に多く、常に片方の耳で通話する人に多い傾向にあった。

8.その曝露因子はOutcomeの原因となっているか?(因果推論)
ヘビーユ—ズが神経膠種の原因かどうかについては、一貫性(各地域ごとでも言えるかなどは不明)、強固性(OR1.40で何とも言えない)、特異性(1:1対応あるとは言えない)、時間的関係(期間中のどの時期に診断されたか不明)、整合性、生物学的説得性、類似性(述べられていない)、用量反応関係(なし)、実験的根拠(述べられていない)、とのことで、因果関係の推定7項目を満足させるものではないと考えられる。

###結果をもう少し要約すると、脳腫瘍例の方が携帯電話使用者がむしろ少なかった。ただし生涯1640時間以上通話した人で、神経膠種にのみ40%のリスク増加があった、とのことです。しかし本文中で述べられているように、様々なバイアスや交絡因子の調整がされていませんので、著者自身が言っているようにいまだ implausible valuesだと思われます.実際はこの論文を受けてのこちらの論文なども考慮されています。
いずれにしても今回のWHOの評価を「携帯電話使用すなわち発ガンリスク増加」と短絡的に考えることだけは、今のところ慎みたい態度だと思います。
IARCのステートメントはこちら
by dobashinaika | 2011-06-22 23:58 | 開業医の勉強 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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