胸腔鏡下左心耳切除術は左心耳を迅速,安全,完全に閉塞: Heart Rhythm誌


目的:左心耳閉鎖のための胸腔鏡下左心耳切除術 stapler-and-loop techniqueの安全性,完成度,中期的予防に関する後ろ向き評価

方法:
・2008年10月ー2017年2月までの患者
・中止前1ヶ月の抗凝固療法
・主要評価項目:院内死+手術関連主要合併症(血栓塞栓症,出血イベント,横隔神経麻痺)
・予防評価項目:心原性血栓塞栓症
・術後1年でMRIによる血栓塞栓症を検索

結果:
1)201人(女性83人,平均74歳;68-94歳),CHA2DS2-VAScスコア4.1点,HAS-BLEDスコア2.9点

2)平均手術時間28分

3)すべての左心耳を切除。術中経食道エコーで左心耳完全閉鎖を確認

4)院内死,手術関連合併症なし

5)心原性血栓塞栓症:2例/198例(0,25/100人年),平均追跡期間48 (12-110)ヶ月

6)MRIによる新規小梗塞像:2/51(3.9/100人年)

結論:胸腔鏡下stapler-and-loop techniqueは,NVAF患者の左心耳を迅速,安全,完全に閉塞した。抗凝固薬なしでの中期的塞栓症予防は受容できる結果である。

### 東京都立多摩医療センターの大塚俊哉先生からの発表です。

カテーテルによる左心耳閉鎖デバイスWATCHMANの成績は2000年台登録のPROTECT AF試験 がかなり以前に発表され,その後の臨床試験(PREVAIL)も発表されており,米国では2015年に承認されています。日本でも3月の日本循環器学会で臨床試験(SALUTE Trial)の成績が発表されました。

PREVAIL試験でも合併症が認められており,ワルファリンとの間で非劣性も示されずどんなものかと思っていましたが,大塚先生の成績は安全性有効性とも非常に良好です(しかも手術時間平均28分!)。全国から見学に来る医師が絶えないとのことで,今後広く普及することが期待されます。

WATCHMANが日本で承認されれば,これとの比較が論じられると思いますが,抗凝固療法に代わる非常に有力な手法として今後も注目していきたいと思います。

$$$ 今日のニャンコ どこにいるでしょうか。
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# by dobashinaika | 2018-06-13 06:13 | 心房細動:左心耳デバイス | Comments(1)

周術期の塞栓症予防と出血リスクはDOACとワルファリンで同等。中止しない場合はDOACで出血が少ない:RCTメタ解析


目的;心房細動患者の周術期におけるDOACとワルファリンの比較に関するメタ解析

方法:4つのDOACのRCTおよびそのサブスタディの解析

結果:
1)抗凝固薬中止なしの場合:
・脳卒中/全身性塞栓症 [pooled risk 0.6% (29 events/4519 procedures) vs. 1.1% (31/2971), RR=0.70, 95% CI= (0.41, 1.18)] ,
・死亡 [1.4% vs. 1.8%, RR=0.77, 95% CI= (0.53, 1.12)]は有意差なし
・大出血はDOACで有意に少ない [2.0% vs. 3.3%, RR=0.62, 95% CI= (0.47, 0.82)]

2)抗凝固薬中止の場合:
脳卒中/全身性塞栓症:0.4% (41/9260) vs. 0.5% (31/7168), RR=0.95, 95% CI= (0.59, 1.55),死亡:0.7% vs. 0.6%, RR=1.24; 95% CI= (0.76, 2.04)2.1% vs. 2.0%, RR=1.05, 95% CI= (0.85, 1.30,大出血:2.1% vs. 2.0%, RR=1.05, 95% CI= (0.85, 1.30)ともに両者で有意差なし

3)各研究間には,中止時の死亡の比較以外は均質性あり(I2= 0.0%)。

結論:周術期においては,短期間の安全性と有効性に関し,DOACとワルファリンとで有意差はなし。抗凝固薬中止をしない場合,DOACはワルファリンに比べ大出血を38%減少させた。

### 現在,周術期は特に,on/offが簡単なDAOCを使用する施設が多いと思われます。こうしたデータが有るとなおさら使いやすくなるでしょう。ただ各試験のサブ解析の比較と思われますので,患者背景には違いがある可能性は含まれます。

中止時と非中止時でDOACの大出血率はあまり変わらないのが目に付きます。メタ解析内での比較なのであまり適切ではないかもしれませんが,やはり周術期でも抗凝固中止しない,よいことを予感させます。

$$$ 最近散歩するとあちこちで花が咲いていて,ホッとさせてくれます。
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# by dobashinaika | 2018-06-12 07:15 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)

日経メディカルオンライン連載:「プライマリ・ケア医のための心房細動入門リターンズ」 開始いたしました。

日経メディカルオンラインで4年前まで執筆させていただきました,「プライマリ・ケア医のための心房細動入門」ですが,このほど「プライマリ・ケア医のための心房細動入門リターンズ」,つまり「帰ってきた心房細動」として再開させていただくことになりました。

前回から4年が過ぎて,もう心房細動のネタもなかなかないと思ったのですが,考えてみるとNOAC狂騒曲が終演を迎えた今,じっくり考えたいこともまだあるなと思い返し,再開するに至りました。

今回は,心房細動を軸にもう少し広い範囲の循環器診療,医療全般について脱構築できればと思っています。

月1回ペースで書いていきますので,ご期待いただければ幸いです。

初回は,心房細動診療の根本姿勢について考えています。


# by dobashinaika | 2018-05-30 19:23 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

リバーロキサバンは塞栓源不明脳塞栓(ESUS)の再発予防においてアスピリンと同等。出血は増やす :NAVIGATE ESUS


ESUS(Embolic Stroke of Undetermined Source)に対しNOACが有効かどうかを検証する研究です。

目的:虚血性脳卒中の20%はESUSで,高再発率。リバーロキサバンが再発を抑制するか?

方法:
P:最近の虚血性脳卒中。動脈硬化性,ラクナ梗塞,塞栓源の解っている塞栓症を除く
E:リバーロキサバン15mg1m日1回
C:アスピリン100mg1日1回
O:主要有効性評価項目:虚血性及び出血性脳卒中/全身性塞栓症の再発
主要安全性評価項目:大出血

結果:
1)7213例,459施設,リバーロキサバン群3609例,アスピリン群3604例

2)平均11ヶ月追跡で中止:リバーロキサバンに脳卒中予防効果なく,出血リスク大

3)主要評価項目:
リバーロキサバン群 172例;5.1%/年
アスピリン群 160例;4.8%/年
ハザード比 1.07 (95%CI:0.87-1.33; P=0.52)

4)虚血性脳卒中再発:
リバーロキサバン群 158例;4.7%/年
アスピリン群 156例;4.7%/年

5)大出血
リバーロキサバン群0 62例;1.8%/年
アスピリン群 23例;0.7%/年
ハザード比 2.72(95%CI:1.68-4.39; P<0.001)
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結論:リバーロキサバンはESUS後の脳卒中再発予防において,アスピリンよりも優位性を示せず,大出血リスクはより高かった。

### ESUSというのは塞栓源が特定できない脳塞栓症のことで,従来は”Cryptogenic stroke (潜因性脳卒中)”と呼ばれていましたが,画像診断の進歩その他でラクナ梗塞などではない”Undetermined”な塞栓症を新たに定義しようというコンセンサスから生まれた疾患概念(呼称)と思われます。

従来からこうした脳卒中は,無症候性心房細動が大きく関与されていると考えられており,実際以下のWARSS試験というものでは,ワルファリンと明日ポリンを比較していて,有意差はないもののワルファリンに有効性の傾向が見られたと報告されていて,今回の試験の根拠にもなっています。

ところが今回の試験では,NOACの優位性が示されずかえって大出血だけ増やしたという結果でした。おそらく今回の試験のESUS患者の中には,無症候性心房細動以外の大動脈プラーク由来や卵円孔開存などが関与しているものと推察されます。
今回の試験には比較的軽度の脳梗塞例が含まれていることも関係しているかもしれません。

脳血管専門施設ではこれまでもESUSUに対しては抗凝固薬を処方するところもあって,実臨床でも心房細動が記録されていない症例にもNOACなどが処方されているケースはかなり多いと思われます。今後現場で再考を迫られそうです。他の知見の集積を待ちたいと思います。

$$$ 今日のニャンコ
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# by dobashinaika | 2018-05-29 06:54 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

6月30日(土) 第13回どばし健康カフェを開催します。

6月30日(土) 第13回どばし健康カフェを開催します。今回のテーマは,『健康食品やサプリメントは「からだにいい」ってホント?』

テレビや雑誌など様々なメディアで紹介される健康食品やサプリメント。
くすりを飲むより体によさそう?病気になりにくい体作りには使ったほうがいい??
興味はあるけど、使うところまでは・・。自分にあったサプリメントって?

日頃疑問に思っていることをみんなで話し合ってみませんか?  

皆様お気軽にご参加ください。

お申込みはこちらからできます。
直接メールまたは電話を頂いても結構です。
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# by dobashinaika | 2018-05-13 18:05 | 土橋内科医院 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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