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2020年 03月 14日 ( 1 )

2020 年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン 心房細動に関するまとめ

昨日(3月13日)、日本循環器学会 / 日本不整脈心電学会合同ガイドラインとして、「2020 年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン」が発表されました。

心房細動治療も含まれますが、心房細動(薬物)ガイドラインは2013年(発表は2014年1月)に前回の改訂が行われていますので、実に6年2ヶ月ぶりの改訂です。

前回のガイドラインから変わったと思われるポイントを列挙しました。
1. 心房細動の診断についての記載が増え、自覚症状,潜因性脳梗塞,塞栓源不明脳塞栓症 (ESUS)の検出について強調された

2. 心房細動の包括的管理(臨床的問題,治療の5つのステップ,併存疾患の管理,多職種によるチーム医療など)の強調

3. 抗凝固療法の新しい視点
1)「生体弁」は今回から「非弁膜症性」扱い

2) CHADS2スコア1点以上ですべてのDOACが「推奨」となり,ワルファリンは「考慮可」で年齢によらず原則 INR 1.6 ~ 2.6

3) CHADS2スコア0点では「持続性・永続性心房細動」「腎機能障害」「低体重(≦ 50 kg)」「左房径(> 45 mm)」を新たに「考慮可」

4. 周術期の抗凝固療法
1) 出血低,中リスク手技での抗凝固薬継続。出血高リスク手技での抗凝固薬休薬

2) ワルファリン, DOAC休薬時のヘパリン置換は推奨クラスIIb(エビデンス・見解から,有効性・有用性がそれほど確立されていない)

5. 虚血性心疾患合併心房細動の抗血栓療法
1) DAPTはなるべく短期間で,12ヶ月以降は抗凝固薬単剤(原則

6. 心拍数調節療法
1) ⽬標安静時⼼拍数<110/分とし,ビソプロロール,カルベジロールを使用

以下やや細かくみていきます。

1)心房細動の診断との検出についての記載

- 症状の把握には、欧州不整脈学会(EHRA)の「modified EHRA スケールの使用」が勧められています(推奨クラスIIa、エビデンスレベルC)。

- 心房細動の検出には「65 歳以上の高齢者における定期的な検脈および心電図検査(I、A)」のほか「脳梗塞 / 一過性脳虚血発作(TIA)既往患者における短時間心電図記録とその後の長期間心電図モニター(72 時間以上,体外式)(I、B)」「潜因性脳梗塞患者への非侵襲的長時間心電図モニターまたは植込み型心電計( IIa B)」が推奨されています。

2)心房細動の包括的管理の強調

- 心房細動の臨床的問題点として、1)死亡 2)脳梗塞 3)入院 4)QOL 5)左室機能低下と心不全 6)認知機能低下/血管性認知症 の6つが示されています。特に死因は脳卒中による死亡は少ないことや認知症との関連が新た記載されています。またESC同様多職種によるチーム医療の記載も追加されています。

- 治療の5つのステップとして1)急性期の管理 2)増悪因子の管理 3)脳梗塞リスクの管理 4)心拍数の評価 5)症状の評価 があげられています。

- 併存疾患として、肥満、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、慢性腎臓病などの管理の重要性も指摘されています。

3)抗凝固薬のリスク評価における新しい視点

- 「生体弁」は今回から「非弁膜症性」扱いとし、僧帽弁修復術(僧帽弁輪縫縮術や僧帽弁形成術)後,あるいは,リウマチ性でない僧帽弁閉鎖不全症は,従来通り「非弁膜症性」として扱われています。

- 心原性塞栓症のリスク評価は、欧米ではCHA2DS2-VAScスコアが用いられていますが、簡便さおよび「年齢(65 ~ 74歳),血管疾患,女性」は日本では有意な危険因子ではなかったため、CHADS2スコアが今回も採用されました。

- 薬剤は,今回CHADS2スコア1点以上ですべてのDOACが「推奨」となり,ワルファリンは「考慮可」で年齢によらず INR 1.6 ~ 2.6 と記載されました。前回DOACのうちリバーロキサバン,エドキサバンはエビデンス不足で「考慮可」でしたが,今回は「推奨」でした。

- ただし,Shinken Database,,J-RHYTHM RegistryやFushimi AF Registryなどの日本の代表的観察研究から「持続性・永続性心房細動」「腎機能障害」「低体重 (≦ 50 kg)」「左房径(> 45 mm)」(これまでの「心筋症」「年齢(65 ~ 74 歳)」「血管疾患(心筋梗塞既往,大動脈プラーク,末梢動脈疾患など)」に加え)があればDOAC,ワルファリンどちらでも「考慮可」となりました。腎機能低下の定義は図には明記されていませんが,本文からはCCr < 30 mL/ 分と受け取れます。

- ワルファリンの場合のINR目標値は年齢によらず1.6〜2.6とされますが,「なるべく 2 に近づけるようにする」とされ,「脳梗塞既往を有する二次予防の患者や高リスク(CHADS2 スコア 3 点以上)の患者に対するワルファリン療法では,年齢 70 歳未満では INR 2.0〜3.0 を考慮(IIa,B)」となりました。

- DOACの選択については,「出血リスクの高い患者に対しては大規模臨床試験において大出血発生率が低い DOAC(アピキサバン,ダビガトラン 110 mg,1 日 2 回,エドキサバン)を用いる(IIa,B)」となっています。
2020 年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン 心房細動に関するまとめ_a0119856_18013230.png
4)周術期(抜歯,消化管内視鏡,外科手術など)の抗凝固療法

- 前回は推奨クラスIはありませんでしたが,今回は「出血低リスク手技での抗凝固薬継続(I,A)]「抜歯時の,至適治療域に管理されたワルファリン継続)I,A)」がクラスIとなりました。

- 「出血中リスク手技での抗凝固薬継続」「出血高リスク手技での抗凝固薬休薬」はいずれもIIa,Cで推奨。

- 休薬時のヘパリン置換は,前回と大きく違うポイントです。推奨クラスIIb(レベルC)で「一般的にはワルファリンの休薬を要する出血高リスクの外科的手術・処置の際には,ヘパリン置換は不要と考えられる」となりました。DOAC 休薬時のヘパリン置換もIIb,Cです。弁膜症性心房細動や「血栓塞栓症リスクが非常に高い非弁膜症性心房細動患者(3 ヵ月以内の脳梗塞の既往がある,CHADS2 スコアが非常に高いなど)においてはヘパリン置換を考慮するべきである」とされています。

5)虚血性心疾患合併心房細動の抗血栓療法

- 「血栓リスク高/出血リスク低」患者と「血栓リスク低/出血リスク高」患者に分け,「前者はPCI3ヶ月後まで3剤併用,後者は2週間以内まで(I,C),その後は12ヶ月後まで両者とも抗凝固薬+P2Y12受容体拮抗薬(I,A),12ヶ月以降は抗凝固薬のみ(I,B)」と明確化されました。ただし血栓リスク,出血リスクによっては期間は変わるとされています。

- 日本発のAFIREの内容も反映されていますね。

- 同時期に発表された「2020 年 JCS ガイドライン フォーカスアップデート版冠動脈疾患患者における抗血栓療法」も合わせて読むと良いと思われます。

6)出血時の対応

- 出血時,DOACの場合の対応が明記され,軽度では「経過観察,DOAC 1 回もしくは 1 ⽇分休薬」,中等度から重度では「休薬,活性炭投与,止血,輸液,十分な降圧,中和」となっています。

- 中和は「ダビガトラン→イダルシズマブ,Xa 阻害薬→ andexanet alfa(2020 年 3 ⽉現在未承認),DOAC →プロトロンビン複合体製剤 / 遺伝⼦組換え第 VII 因⼦製剤(いずれも保険適⽤外)」と具体的に記載されました。

7)心拍数調節療法

- 基本的に安静時<110/分を目標とし,心機能別,急性期慢性期別に記載されています。

- 心機能低下(LVEF<40%)例では「急性期ランジオロール静注」「慢性期ビソプロロール経⼝ / 貼付,カルベジロール経⼝(少量から開始)」「ジゴキシン傾向(追加で使用)」

- 心機能温存(1LVEF≧40%)例では「急性期,慢性期ともビソプロロール経⼝ / 貼付・カルベジロール経⼝ベラパミル経⼝・ジルチアゼム経⼝(通常量で使用)」→無効時には併用

8)洞調律維持療法

- 概ね前回と同じですが,器質的心疾患あり/症候性頻拍なしと器質的心疾患なし/症候性頻拍ありで,アミオダロン使用が加わっています。

- 再発予防で「患者の意向,実施施設の条件」が合えばカテーテルアブレーションが第一選択としてシェーマ化されています(不整脈非薬物療法ガイドラインに準じています)。

### 全体に大変わかりやすく,図や表も見やすくなっていて,臨床家ファーストの非常に実践的な内容だと思います。

包括的視点が冒頭で強調されているのもこれまでからさらに進歩した印象を受けます。

ただ,GRADEシステムベースではなく,その点は注意すべきかと思います。

抗凝固療法のリスク評価は,FUSHIMI AFをはじめとする日本の観察研究の結果が反映されていて,世界的にも新しい視点が取り入れられていると思われます。わたしが以前日経メディカルオンラインで提案させていただいた私案にかなり似通っていてびっくりしています。
2020 年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン 心房細動に関するまとめ_a0119856_18020670.jpg

DOAC第1選択はもはや世界標準ですが,昔ながらの医師としてはw,コストやTTRのことももう少し触れていただいてもいいかなと個人的に感じました(「ワルファリンを用いる際には TTR をなるべく高く保つ」はクラス1,レベルA!)。

図表の引用は,発表当初のこともあり(怒られることも考え),キモとなるの1点だけにしました。
これから臨床の場で使い勝手を試していきたいと思います。
2020年3月14日、日本循環器学会HP閲覧、最新情報はhttp://www.j-circ.or.jp/guideline/をご確認下さい。

by dobashinaika | 2020-03-14 18:00 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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