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2019年 10月 30日 ( 1 )

CHA2DS2-VAScスコア1点の心房細動の人に対する抗凝固療法:欧州心臓病学会(ESC)からのオピニオンステートメント


【バックグラウンド
・CHA2DS2-VASc 1点の適応については依然としてチャレンジングである。
・ESCワーキンググループとしてオピニオンステートメントを発表する

Doing no harm、にフォーカス
・個別に出血リスクを評価することがカギ
・HAS–BLEDスコア1点の年間出血リスクは0.59-1.51%、CHA2DS2-VASc 1点の年間血栓塞栓症リスクは0.6–1.3%。ネットベネフィットからの意思決定は難しい
・なので、一般的な推奨はできない。個別対応となる。
・一方HAS–BLEDスコア2点以上の患者では、年間出血リスク1.88-3.20%になるので、中等度血栓塞栓リスクの場合、抗凝固薬は開始すべきでない。

CHA2DS2-VAScスコアにおける個別的リスク層別化
・年齢(65歳以上)、2型糖尿病は最重要リスク因子
・AFバーデン:心房粗動でなく細動。持続性/永続性(発作性でない)は考慮して良い
・その他として、肥満(BMI30以上)、腎機能低下(タンパク尿150mg/日またはeGFR<45mL/h)

・画像評価:左房容積(73mL以上)または左房径(4.7cm以上)または左心耳血流速度(<20cm/h)は簡便で合理的な評価法である

・バイオマーカー:高感度トロポニンT/I、NT-proBNP(1400ng/L)も考慮される

・注意すべきことは、上記追加リスク因子の重み付けよりも、患者さんの選好が意思決定の上で最も重視すべきものであり、コンプライアンス強化とアウトカム向上に強く寄与するという点である。

オピ二オンドキュメントのインパクト
・ESCワーキンググループは、意思決定は血栓塞栓リスクと出血リスクの個別のバランスに基づくべきと結論する
・主要な治療戦略としては、Do no harmを脳梗塞防止よりも優先させるということである
・これを目指して、幾つかの価値やリスク層別化が提供されるのである
・CHA2DS2-VAScスコア1点患者へ抗凝固薬を開始する場合はNOACがVKAよりよい
・ASAを用いるべきではない
・以下のアルゴリズムを提示する
a0119856_17342458.png
### ESCから、CHA2DS2-VAScスコア1点の人への,より詳しいリスク層別化に関する提案です。これまで1点でもリスク<ベネフィットだとする論文が多少あって、ガイドラインも1点から推奨でしたが、ここへ来てやっぱり追加リスク増やしますっていうことです。今さらという感じもしますし、追加リスクの妥当性も実はあまりvalidateされていないような印象もあります。だからステートメントに留まるわけですが。

まずHAS-BLED2点以上は投与なし,とし

その上で
「抗凝固薬処方した方が良い」の主要リスクとして
・65歳以上
・2型糖尿病
・心房細動(心房粗動ではない)
・持続性/永続性心房細動

血栓塞栓症リスクの追加因子として
・肥満(BMII≧30)
・タンパク尿(150mg/24時間)
・eGFR(GFR<45mL/h)
・NT pro-BNP
・心筋トロポニンT,I:陽性(1400ng/L≦)
・左房容量拡大(73mL以上)または左房径拡大4.7cm以上)
・左心耳血流減少(<20cm/h)
・ABCスコア(年齢/バイオマーカー/既往歴) :以下参照

これらの因子を考慮せよとありますが、合計で何点あれば投与推奨、などというクリアカットな説明はないようです。
「主要リスク」が2個以上、または1個だったら追加リスクが多ければ考える、という感じでしょうか。それぞれの数値にも注意が必要かもしれません。

ただ、左房血流やABCスコアなど、プライマリ・ケアレベルではかなり敷居が高いものあるようです。

「65歳以上、糖尿病、持続性、肥満、タンパク尿などがあったら考える。その他の因子はできれば考慮」という受け止め方でいいのではと思います。

それより先に日本の代表的コホートスタディの統合解析によるモデルがありますから、日本ではそれで十分という気もしますね。日経メディカルオンライン連載でここのところは詳説しておりますので、参考になさってください。
当院では、「持続性」「BMI18.5未満」「貧血」「左房径>45mm」(「CCr30未満」はケースバイケース、腎機能低下例は出血も多いので)を追加因子としています。

$$$ この本は掛け値なしに素晴らしい。
a0119856_17405180.jpg


by dobashinaika | 2019-10-30 17:36 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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