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2019年 08月 13日 ( 1 )

オープンダイアローグと診療所診療

【外来診療に抱く日々の「違和感」】
診療所医師になって15年になるのですが,実は以前から診察室で行われる「外来診療」という形式に漠然とした違和感をずっと持ち続けてきました。どんな違和感なのかと問われても明確に答えることはできないのですが,毎日数十人の人と数分刻みでお話をすること,そこにどうしても「仕事をこなしている」感みたいなものを感じていました。

その解決策を得るためというわけでもないのですが,8月第1週の週末3日日間,オープンダイアローグネッドワークジャパンが主催する「オープンダイアローグトレーニング3DAYSワークショップ」に参加しました。オープンダイアローグ(OD)については,すでに多くの場面で普及しており詳細は省きますが(ODNJPのホームページにあるガイドラインが大変参考になります),そこで得られた「体験」により,私の違和感の輪郭がややはっきりし,どう解消していけばよいのかの緒をつかんだように思いました。

【対話主義】
ODにはいくつかの原則がありますが,最も刺激的だったのは「対話主義」です。「対話は何かの手段ではなく,それ自体が目的であり,解決はその先に現れるものである」「対話の場で今まさに起きていることに焦点を当てる」,ODのガイドラインにはそう書いてあります。しかし実際にロールプレイなどを行ってみると,いかに対話自体を目的とすることに自分が馴染んでいないのかを痛感させられます。

私たち医療者(少なくとも自分)は医学的根拠や自分の専門性を「正しさ」の後ろ盾にして,当事者の発する言葉を自分の「正しさ」と照合し,適合させようとする心の癖があります。そこまで大きく言わなくても「説得」や「説明」が診察室でのコアになりがちです。対話の場に発生する関心,恐れ,喜怒哀楽の感情などのさまざまな「起きていること」に注意を向け応答するーそうした対話だけに集中し感情に敏感になることには疎いかもしれません。

たとえば患者さんが発した「これから自分がどうなってしまうのか不安だ」という言葉。通常,身体疾患であれば現在の病状を説明し,これから予想される状況や取りうる治療選択について説明することになりますが,ODでは「不安だ」という言葉を発した患者さんの内面のみならず,自分がどう感じたか,あるいは同席者がどう感じたのがが重視されます。患者さんが不安だと発したことを「自分がどう感じたか」をその場に発して患者さんや他の同席者の反応を見るのです。

この姿勢は,当事者にとっての病の意味や解釈を引き出すナラティブアプローチや構造化された面接技法ともやや違います。また安易な「傾聴や共感」とも一線を画すもののように思います。まず病の意味聞いて,次に共感的な言葉をかけて。。。といった技法的な態度とはODはむしろ正反対で現場主義的,非構造的です。

【ポリフォニー】
こうした対話主義のもととなるのが「様々なものの見方を尊重し,多様な視点を引き出す」こと,いわゆるポリフォニーの姿勢です。ODではリフレクティングがその手法ですが,当事者,家族をスタッフとの対話のあと,当事者の目の前でスタッフ同士の意見交換をし,それに対して当事者が意見を述べる。そこではときに当事者には耳の痛い言葉や,やや意見がコンフリクトする場面もあります。しかしそこに意見の押しつけや中途半端な意思決定はありません。複数の視点から語られる視点の交錯は,「当事者の意志決定」という近年大事にされてきた概念とは無縁です。さまざまな視点が示されることにより当事者に「こうしたい」という欲望が生じます。これは中動態の世界に通じますね。

ここにきて,これまでずっと抱いてきた「診察」への違和感がおぼろげながら顕になってきたように思います。当事者と医師とが1対1で面接する,そこに発生するどうしてもぬきがたい上下関係ーヒエラルヒーと言ったらいいのか,自分がずっと抱いてきた違和感はそうした「勾配」のようなものなのです。これまでなんとかそうした勾配を平にしようと思い,面接技法の本を読んだりセミナーに行ったりもしました。しかし違和感が払拭されなかったのは,どうも1対1で対峙する外来診療の構造そのものに由来するからのように思います。またそれに加えてどうしても拭い難い「説明」「説得」の体質でしょう。

【取り組みたいこと】
実は当院では,1年半以上前から,多職種が関わっている患者さんとご家族,ケアマネジャー,訪問看護師,ヘルパー,当院スタッフが会するケアカンファランスを行ってきました。そこで気づくことは,多くの人の前で例えば認知症を持つ人が,自らの生活や,記憶の片隅について生き生きとお話されるということです。医療スタッフはもちろん,ときにはご家族も驚くようなことを明るい表情で語られるのです。これはまあ,レベルは違うにせよ一種のODなのかもしれないと考えています。

またときに市民との対話の場としてやっているどばし健康カフェも,対話を楽しむ場なのかもしれません。こうしてみると,診察室の外では意外と対話を大事にしていたのか,という気もします。

これからは診察室診療にODの要素を取り入れることに腐心していきたいと考えています。たしかに身体疾患では意志決定はどうしても医師主導なりがちで,特に内科を標榜している医院でできるのかという問いはあります。が,手始めに認知症の人やうつの人に対話を重視した診療を導入できるものと思います。

試みに当院では4月から診療看護師(NP)が勤務し,必ず一人の患者さんにNPあるいは看護師と医師が複数で診療を行う仕方を開始しました。対話主義,ポリフォニーがどこまで診療所診療に導入できるのか,今後とも実践しながら考えていきたいと思います。

### 今日のにゃんこは難しい
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by dobashinaika | 2019-08-13 07:00 | 心理社会学的アプローチ | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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