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2019年 01月 06日 ( 1 )

心臓病学2018〜この1年〜心房細動,心房細動アブレーション編:EHJ誌より


EHJのThe year in cardiology 2018: arrhythmias and cardiac devicesを読みます。
2018年に出版された心房細動関連論文からトピックとなったもののまとめです。
今回は心房細動,心房細動アブレーション編。5つの重要試験が紹介されています。

P:心房細動3013例中クライテリアに当てはまる363例:心不全(LVEF35%以下、ICDまたはCRT装着)、発作性持続性問わず
E:カテーテルアブレーション
C:従来治療
O:一次エンドポイント:全死亡、心不全増悪
結果:
1)一次エンドポイント=アブレーション群で38%減少(HR0.62. 95%CI0.43-0.87;P=0.007)
2)アブ群で心不全増悪減少(HR 0.56, 95% CI 0.37–0.83; P = 0.004)
3)アブ群で全死亡減少(HR 0.53, 95% CI 0.32–0.86; P = 0.011)
4)アブ群でLVEFが7%改善(12ヶ月後)
5)心房細動発作のない時間はアブ群が2倍(5年)
6)アブ群の1.7%で心嚢液貯留

【CAVANA試験(学会発表)】:この年最も待ち望まれていた試験
P:65歳以上または64歳未満で1つ以上の危険因子を持つ心房細動患者
E:カテーテルアブレーション
C:薬物治療
O:一次エンドポイント:死亡、重篤な脳卒中、重篤な出血、心停止
結果:
1)平均67.5歳。発作性43%、持続性47%、長期持続性10%
2)一次エンドポイント:両群間に有意差なし(the pre-specified intention to treat analysi)(8% for ablation vs. 9.2% for drugs, P = NS)
3)全死亡:有意差なし(5.2 vs. 6.1% respectively, P = NS)
4)死亡または心血管系の入院:アブ群で低下 (51.7% vs. 58.1%, P = 0.001)
5)アブレーションは心房細動を47%減らし、アブ群の60%は心房細動なしとなった
6)副作用:アブ群9% VS. 薬物群4%

  • 結局のところこの試験はネガティヴに終わった。
  • ITT解析ではクロスオーバーが多かった(薬物群の27.5%はアブレーションを受け、アブ群の9.2%はアブレーションを受けず)。
  • 何れにしてもカテーテルアブレーションの価値を否定するものではない。
  • 2017年の専門家提言ではESC,ACCのガイドライン同様、カテーテルアブレーションはQOL改善のための第一選択であると明言されている。
  • CASTLE-AFもCAVANAもこれらのガイドランを支持するものである。
  • しかしアブレーションが全死亡や重篤な脳卒中、重篤な出血、心停止を抑制するというコンセプトは証明されていない。
  • ただ、EAST試験(最終的アウトカムを扱う)待ちではあっても、心房細動が心血管イベントの「厄介なバイスタンダー」というより,より重要な役割を担っていることを示すエビデンスが徐々に蓄積されつつある。
  • 結果としてカテーテルアブレーションが単なる症状緩和の手段という以上の可能性が提示されるかもしれない。

・2005年ー2014年。初回アブレーション例5420人
・1年間再発率:2005-2006年=45%、2013-2014年=31%
・再発予測因子:2年以上の持続、女性、高血圧、アブ前1年以内の除細動
・この結果は驚くに値しない、この論文は「リアルワールド」の知見と(アブのアウトカムの)改善傾向を示している。

・アブレーション後3ヶ月の抗不整脈薬を止めるべきか、継続すべきか
・継続群で再発が有意に少ない:2.7% vs. 16.9%
・心房細動の疫学病理学的意義は複雑で、アブレーション自体はそれらすべての機序をコントロールできないことを示している。

【RACE3試験】 ブログ記事はこちら
P:軽症/中等症心不全合併早期持続性心房細動。リズム治療は継続
E:背景への介入:ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、スタチン、ACE阻害薬、心臓リハ(身体活動、ダイエット、カウンセリング)
C:従来治療
O:1年後の7日間ホルター心電図で洞調律維持
結果:介入群75% vs. 従来群63%, P=0.042

  • この試験は心房細動患者におけるリスク因子介入の重要性を世界的に呼びかけた点で重要。

### いずれも今後の心房細動治療を方向付けるトライアルです。
アブレーションは重症心不全の予後改善に寄与し、未だ不明な点はあるが心房細動全体の予後にも好影響はありそう。背景因子への介入が基本的に大事
というのがトレンドのようです。

次回は抗凝固療法について読みます。

$$$ iPhoneで撮った部分日食。あまり綺麗に撮れず
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by dobashinaika | 2019-01-06 12:38 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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