2018年 08月 27日 ( 1 )

心房細動に対する心電図スクリーニングに,利益が害を上回るという十分なエビデンスはない:USPSTFの推奨


1.結論: USPSTFは、65歳上でこれまで心房細動が診断されていない無症候の人における心電図スクリーニングについて、利益が害を上回るかどうかの十分なエビデンスはないと結論する。

2.この結論は、心房細動の心電図スクリーニングをしないようにとの推奨ではない。”I ステートメント”である。

3. 同時期に発表されたJoansらの17研究を含むレポートでは、スクリーニングにより新たな心房細動がより発見されるけれども、系統的なスクリーニングはたまたまスクリーニングする(脈拍を取る)のに比べ優位性は認めなかった。

4.問題の範囲:心房細動は世界的に最もコモンな不整脈で増加の一途にあり、心原性脳卒中の20%は事前診断のない例である。心房細動の症状や軽微だったり気づかれなかったりする。震える左房での血液のうっ滞と左心耳が主な血栓形成のメカニズムである。しかしTRENDS試験やASSERT試験からの植え込みデバイスのデータでは、脳卒中と心房細動の時期とに関連はなかった。これは従来考えられているより、脳卒中と心房細動の役割の関係がより複雑であることを示唆している。

5.ECGスクリーニングの潜在的有効性:抗凝固薬が診断された心房細動患者の脳卒中減少に寄与するのは明白なので、早期の心房細動の同定は抗凝固薬による脳卒中の早期予防につながるかもしれない。

6.ECGスクリーニングの潜在的害:抗凝固薬は大出血を増加させる。偽陽性の心電図が不必要な検査、治療につながり、誤診が不安を惹起する。

7.ECGテクニック:12誘導心電図、ホルター心電図、1誘導のテレメトリー心電図がある。現在、スマートフォンECG、脈拍検出テクノロジー、ウエアラブルデバイスが急速に発展してきている。これらの新しいデバイスは簡便ですぐに利用できる。血圧測定装置、パルスオキシメーターも不整脈の同定を可能にするかもしれない。REHEASE-AF試験はスマートフォンのスクリーニングの有用性を示していた。

8.将来の課題:無症候性患者のRCTが必要。幾つかの試験が進行中(STROKESTOP, SCREEN-AF, IDEAL-MD, and D2AF)。

9.現時点での臨床的考え方:SAFE試験で示された,機会あるごとのスクリーニング(脈拍に基づいた)は追加心電図をとることにより合理的な方法であり,特にCHA2DS2-VAScスコアの高リスク者で有用である。AHAとESCの最近の推奨では聞かあるごとのスクリーニングを支持している。2018年のオーストラリアとニュージーランドのガイドラインでも支持されている。

### USPSTFの心房細動に対する心電図スクリーニングに関する推奨です。ACCのまとめサイトの訳です。

従来から「65歳以上の人は必ず脈を取れ」との教訓は,ESCやAHAのガイドラインでさんざnに割れていましたし私も行ってきました。これはおもにSAFE研究によるところが大きいのですが,最新のシステマティックレビューでは,系統的に(ということはかたっぱしから)心電図を取ることよりのほうが,脈をとることを上回らないとのことです。

このレビューをよく読むと,心電図スクリーニングをした群としない群での比較試験がない,スクリーニングすることの害に関する研究が見当たらないことが記されています。

しかし心電図で,偽陽性が出てそれに対し抗凝固薬が投与されてしまうケースはそうそうないように思われますが,あるとしたら,心房期外収縮の多発を心房細動と診断してしまうか,短時間の心房期外収縮のショートランに対し抗凝固薬を投与する場合でしょうか。

抗凝固薬の適応は慎重に考る姿勢を維持していれば,心房細動スクリーニングとして「まず脈をとりその後心電図」が十分推奨されると思います。

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きょうのにゃんこ。暑くてだめ。。



by dobashinaika | 2018-08-27 21:41 | 心房細動:診断 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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