人気ブログランキング |

2015年 11月 29日 ( 1 )

SPRINT試験に関するまとめ

よく利用する医学系サイトDynaMedのメールマガジンDynaMed EBM Focusが、話題のSPRINT試験についてコメントを出しています。
よくまとまっているので,覚書きしておきます。

Intensive blood pressure management in hypertensive patients at increased cardiovascular risk
by the DynaMed Editorial Team


SPRINT試験:
A Randomized Trial of Intensive versus Standard Blood-Pressure Control
The SPRINT Research Group
N Engl J Med 2015; 373:2103-2116


・いくつかのエビデンスにより血圧は低いほど心血管リスクが減少することが示唆されているものの,一般的には高血圧患者の目標血圧は140mmHg未満にすることが勧められている。
・この試験では,非糖尿病で心血管リスクの高い高血圧患者において目標収縮期血圧120未満が,140未満に比べて全死亡,心血管死,心不全リスクを減らすことが示された。
・また目標血圧120未満では,低血圧,失神,電解質異常,急性腎不全が増えた。


<これまでのエビデンス,推奨>
・各種ガイドライン(米国,英国,カナダ)では,140未満が一般に推奨されているが,年齢や心血管リスクが微妙に異なる
・従来のエビデンスでは強力な降圧薬使用により,血圧は低いほど心血管イベントは減ることが示唆されているが,その結果はそれぞれ異なっている

<SPRINT試験のPICO>
P:50歳以上のリスクを有する9361例(収縮期血圧130〜180)。除外基準;糖尿病,脳卒中の既往,多発性腎嚢胞,6ヶ月以内の著明な蛋白尿,6ヶ月以内の腎不全。左室駆出分画<35%
I:目標収縮期血圧<120
C:目標収縮期血圧<140
O:複合エンドポイント(心筋梗塞,急性冠症候群,脳卒中,急性非代償性心不全)

<結果>
1)ベースライン血圧140/78,平均降圧薬数1.8剤,平均3.26年追跡

2)最終平均血圧:厳格群121.5mmHg ,標準群134.6mmHg

3)使用降圧薬数:厳格群2.8 ,標準群1.8

4)年間イベント率(一次エンドポイント):厳格群1.65% ,標準群2.19%(p < 0.001, NNT 185/年)

5)ベースライン血圧別(≤ 132 mm Hg, 132-145 mm Hg, and ≥ 145 mm Hg)に見ても結果は同等

6)心血管イベント,心不全は厳格群で著明減少。他のアウトカムは不変

7)全死亡:厳格群1.03% ,標準群1.4%(1.03% vs. 1.4%, p = 0.003, NNT 270/年)

8)重篤な合併症は両群で同等

9)低血圧,失神,電解質異常,急性腎不全は厳格群で有意に多い

10)もともと慢性腎臓病のある患者では腎不全の発症率に違いなし

<SPRINT試験の解釈>
・この結果からは,現在140未満でよく管理されている例でも,より厳格に下げたほうが利益が多いことがうかがえる
・この試験では,標準群が既に135未満だった場合,治療を減らすようなプロトコールになっている
・たいていの臨床の場面では治療を減じることはなされない,それ故薬剤を減らされた群では,厳格群の利益がより増強されるようになっている
・今回の結果はACCORD BP試験 (N Engl J Med 2010 Apr 29;362(17):1575)とは対照的
・ACCORD BPとの違い
    1)ACCORD BPは2型糖尿病で高リスク例を含む(SPRINTは含まず)
    2)ACCORD BPでは標準群のイベント減少が予想以下だった。症例数不足の可能性あり
    3)SPRINTは早期打ち切りとなったため,長期間のフォローがない
・全体として120未満の厳格な血圧低下が,心血管イベントを減らし予後を改善
・有害事象が増える場合もあり,症例ごとにベストな管理を目指すべき

### SPRINT試験は,既にかなりのインパクトを持って発表されており今更感もありますが,自己学習のためにまとめました。
実際は心不全の減少が複合エンドポイントの中でも大きな割合のようです。

またこういう試験の特性上高齢者でもADLが良好な方が組み入れられていると思われますが,従来の日本の高齢者者対象試験とは違う結果であり,高齢者のサブグループ解析の結果(到達血圧など)が,詳細にされていないのももっと知りたいポイントです。


J-CLEAR・桑島巌先生コメントはこちら
http://j-clear.jp/teigen5.html

日本高血圧学会のコメント
http://www.jpnsh.jp/topics/475.html

JAMA Forumの論説
http://newsatjama.jama.com/2015/11/18/jama-forum-when-publicity-preempts-peer-review/

ESHの会長からのコメント
http://www.eshonline.org/spotlights/from-the-esh-president/

American Journal ofHypertensionの論説
http://ajh.oxfordjournals.org/content/early/2015/11/23/ajh.hpv190.extract?papetoc

$$$第4日曜恒例の勉強会で東京。羽生くんのポスターが目につきました。
a0119856_2319545.jpg

by dobashinaika | 2015-11-29 23:23 | 循環器疾患その他 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

プロフィールを見る
画像一覧
更新通知を受け取る

カテゴリ

全体
インフォメーション
医者が患者になった時
患者さん向けパンフレット
心房細動診療:根本原理
心房細動:重要論文リンク集
心房細動:疫学・リスク因子
心房細動:診断
抗凝固療法:全般
抗凝固療法:リアルワールドデータ
抗凝固療法:凝固系基礎知識
抗凝固療法:ガイドライン
抗凝固療法:各スコア一覧
抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術
抗凝固療法:適応、スコア評価
抗凝固療法:比較、使い分け
抗凝固療法:中和方法
抗凝固療法:抗血小板薬併用
脳卒中後
抗凝固療法:患者さん用パンフ
抗凝固療法:ワーファリン
抗凝固療法:ダビガトラン
抗凝固療法:リバーロキサバン
抗凝固療法:アピキサバン
抗凝固療法:エドキサバン
心房細動:アブレーション
心房細動:左心耳デバイス
心房細動:ダウンストリーム治療
心房細動:アップストリーム治療
心室性不整脈
Brugada症候群
心臓突然死
不整脈全般
リスク/意思決定
医療の問題
EBM
開業医生活
心理社会学的アプローチ
土橋内科医院
土橋通り界隈
開業医の勉強
感染症
音楽、美術など
虚血性心疾患
内分泌・甲状腺
循環器疾患その他
土橋EBM教室
寺子屋勉強会
ペースメーカー友の会
新型インフルエンザ
3.11
未分類

タグ

(40)
(35)
(35)
(27)
(27)
(26)
(25)
(24)
(21)
(20)
(20)
(19)
(18)
(16)
(14)
(13)
(13)
(13)
(13)
(13)

ブログパーツ

ライフログ

著作

もう怖くない 心房細動の抗凝固療法


プライマリ・ケア医のための心房細動入門

編集

治療 2015年 04 月号 [雑誌]

最近読んだ本

ケアの本質―生きることの意味


ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から


中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)


健康格差社会への処方箋


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書)

最新の記事

【Apple Heart S..
at 2019-11-26 07:35
心房細動合併透析患者において..
at 2019-11-21 06:49
日本の心房細動患者の死因の半..
at 2019-11-11 07:22
CHA2DS2-VAScスコ..
at 2019-10-30 17:36
中高年開業医におけるヤブ化防..
at 2019-10-18 07:27
日経メディカルオンライン:第..
at 2019-10-15 06:26
新規発症心房細動では服薬アド..
at 2019-10-06 10:47
心房細動診断においてスマホに..
at 2019-09-19 06:30
第17回どばし健康カフェ「心..
at 2019-09-05 08:51
強い症状のない血行動態の安定..
at 2019-09-04 06:36

検索

記事ランキング

最新のコメント

いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
取り上げていただきありが..
by 大塚俊哉 at 09:53
> 11さん ありがと..
by dobashinaika at 03:12
「とつぜんし」が・・・・..
by 11 at 07:29
> 山川玲子さん 山川..
by dobashinaika at 23:14
運慶展を観た方にWEB小..
by omachi at 19:45
> terryさん ご..
by dobashinaika at 08:38
簡潔なまとめ、有り難うご..
by 櫻井啓一郎 at 23:16
いつも大変勉強になります..
by n kagiyama at 14:39

以前の記事

2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 03月
2007年 03月
2006年 03月
2005年 08月
2005年 02月
2005年 01月

ブログジャンル

健康・医療
病気・闘病

画像一覧

ファン