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2015年 09月 30日 ( 1 )

心房細動がどのくらい続いたら抗凝固薬を服用すべきか;カナダの心房細動ガイドラインより

2014年10月に出たカナダの心房細動ガイドラインですが,各種の疑問に応える形の「手引書」が発表されています。
The 2014 Atrial Fibrillation Guidelines Companion: A Practical Approach to the Use of the Canadian Cardiovascular Society Guidelines
CJC 2015 : 31: 1207–1218


Lip先生が,リスク評価について注文をつけていたので,そのへんどうなっているのか興味深いところです。
http://dobashin.exblog.jp/20306554/

本日は疑問1の「心房細動の持続時間はどのくらいで臨床的に意義あり?とするか?」についてまとめてみます。
実はこの問題,わかっていたようでわかっていない問題で,どこのガイドラインでも明記はされていなかったように思います。日本はじめ多くのガイドラインで除細動施行時には,「48時間以上持続していたら抗凝固療法を行ったうえで除細動」とはあります。これは48時間以上心房細動が続くと左心耳に血栓ができるという臨床データに基づくものです。

しかし実際臨床で,1回の心房細動発作だけ,その朝心房細動になって午前中クリニックを受診し,ワソランなどの静注で半日で止まったというようなケースはよく遭遇しますが,このように48時間など続かなくても心電図で1回でも記録できれば,CHADS2スコア2点以上であれば抗凝固薬が出されていると思うのです。実際発作性で2日以上続くことはあまり無いように思われます。

その辺の心房細動はどのくらい持続したら抗凝固薬を投与したら良いのかという根本的な疑問について,以下が今回のコメントです。

・最低限どの位心房細動が続けば予防的抗凝固療法を開始してよいかについては明らかではない
・カナダのガイドラインでは,心房細動が24時間以上続き,リスクが1つ以上の場合に経口抗凝固薬が推奨されている
・しかし,臨床研究ではより短時間のエピソードで脳卒中リスクが増すことが知られている
ASSERT研究ではペースメーカーの3ヶ月間サーベイランスで6分以上の心房細動は,それより短いエピソードに比べてのハザード比が2.49だったが絶対リスク減少は,実臨床で認められる脳卒中リスクよりも低かった。特に3.64時間以上続く場合は顕著に脳卒中が多かった
TRENDS研究では5.5時間以上持続すれば,CHADS2スコア2,2点平均の群で年間2.4%の脳卒中リスク増加が認められている
・これらの研究は,数時間以上の心房細動持続で脳卒中が増えることが示唆している
・脳卒中リスクは,心房細動持続時間の他にCHADS2スコアにも影響され,スコアが高ければ短い持続時間でも脳卒中リスクはある
・絶対的なRCTがない以上,心房細動持続時間のカットオフ値に関するエビデンスはない
・CHADS2スコアと時速時間をの配分を加味したより詳しいエビデンスが求められる

###これだけでもなかなか曖昧です。一応数時間持続すれば左心耳血栓ができる可能性があり,CHADS2スコアが高いほど短い時間でで出来やすいと考えたいと思います。

実際,1回の心房細動発作でもCHADS2スコア2点以上であれば,最近は積極的に抗凝固薬を出していることが多いと思います。診療所レベルの場合,先月受診時には脈不整はなかったけれど今月受診の時は脈がおかしい,あるいは健診で今回はじめて指摘されたというような数日から数ヶ月続いている場合と,今朝あるいは昨晩から動悸がしていると言って午前中受診するような場合の2通りがあります。

後者だとやはり2〜3時間から半日経過していますので,それ1回でもCHADS2スコア1〜2点なら抗凝固薬を考慮でよいかもしれません。問診上1〜2時間で止まってしまうと患者さんが言われたとしてももっと続いている可能性が高く,また短いエピソードでもそれを繰り返せばやはり左心耳血栓が形成されるように思います。

この問題実は,あまり語られたことがなかったので,読んでよかったです。CHADS2低リスクをどう考えるか,Lip先生の批判にどう答えているか興味深いですが,それは明日以降のお楽しみで。

$$$ 今日のにゃんこ
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by dobashinaika | 2015-09-30 21:09 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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