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2014年 11月 26日 ( 1 )

心房細動初発から治療までの患者経験〜心房細動とはなにか、病気とはなにか:JCN誌

Patients' experiences from symptom onset to initial treatment for atrial fibrillation.
McCabe PJ, et al
J Clin Nurs. 2014 Nov 25


疑問;心房細動の症状を感じてから治療に至るまでに患者は何を経験するのか?

方法:
・質的アプローチ
・対象:女20人、男21人。1つの医療センターでの心房細動患者
・オープンエンドクエスチョンを用いて、症状初発時から治療に至るまでの患者の経験を探る

結果:
1)平均64.3歳

2)以下の4つのテーマに分類可能
1)症状に対する誤解
(2)心房細動の意味の発見
(3)恐れに直面、その後受容
(4)納得し、再承認する


3)登録者は心房細動の知識が欠如していて、症状や診断を評価していくときの医療者の反応からきっかけを掴む

4)おそれと不確かさは、医療者がはじめに迅速な治療を行い、心房細動への説明をすることで軽減される

5)患者は明確な情報の入手を歓迎し、学ぶことに専念し、ケアに参加しようとするようになる

結論:医療者は、患者が心房細動を正確に理解し、新たな診断に対処し、自己管理へのモチベーションを高めるための援助において重要な役割を演じる

実臨床との関連:心房細動の症状初発から治療までの患者の経験への視線は、心房細動自己管理の効果があることを広く知らせることになるだろう

### 素晴らしくも興味深い知見ですね。

私、8月に椎骨動脈解離を経験して以来、病気をするとはどういうことなのか、よく考えます。医療者にとって病気とは、患者さんに起こった現象を科学的に意味づけして、その意味付けを治療に生かしていく、そういったいわば客観的な対象としてとりあえずは目の前にあります。

一方、病気になった患者自身にとって、まず、病気は当然ながら客観的な対象ではありえなくて、たとえば私の場合、目を開けて左を向いた時、風景が高速ランダム運動する現象と、常時後頭部から背中を回りおへその周りに至るまでのなんと表現してよいかわからないもっさりした感じを発症当初から感じたわけですが、これらは目に見える実在の”もの”でも、ましてや”現象”と呼べるものですらなくて、まさに自分と一体となった感触というか、そうした感触まで含めての「自分そのもの」としかいえないものなのです。あとで言葉にしたから分けられるように思われますが、実際は。この感じはたとえば「めまい」です、この感じは「頭痛」ですと切り分けられるものではありません。

こうした、病気発症時の得も言われぬ感触は、この論文の質的アプローチが明らかにした(1)の症状への誤解と呼ばれるものかと思います。「誤解=misinterpreting」という呼称よりは、混乱とか混沌がいいように思いますが。ただ私としては、そうした混沌はまさしく自分そのものなので、「混沌とした自己」といったほうがいいように思います。

こうした混沌に一定の秩序を与えるのが、言葉であり、特に医療者の言葉かもしれません。主治医の説明で私も初めて、この混沌は実は、右の椎骨動脈の壁に亀裂が入って、そこにできた血栓が小脳に飛んだためだということを理解し、上記(2)の意味の発見ができたわけです。心房細動患者さんも、この感じは、脈が不規則に出てくることによって感じられるもので、これを心房細動と呼びます、と言われて初めて、自分の”感じ”が、心房細動という言葉と対応し、症状と身体的現象が因果関係としての意味付けされ、いちおう安心というか理解ができるわけです。

私の場合、医師としての知識があったので、意味付けの作業は割とスムーズでしたが、この作業こそ個人差のある、人によって進行度は様々な、それこそpersonalなものかと思います。
その後の、「おそれ」「受容」「納得」「再承認」の過程は私自身非常によく理解できます。このプロセスは多くの病者が経験するプロセスだろうと思います。

プロセス。
そうですね。病気になるということは、それまでの「自己」を構成しているネットワークが、病気をきっかけに急激に変容する。そのネットワークの変容の有り様そのももであり、変化していく全工程のことだと思うのです。決して、「動脈の解離」とか「心房内のスパイラリエントリー」といった物理的現象へと単純に還元できるものではありません。医療者は、そのネットワークの変容のバランスを、科学的方法を武器に少しでも整えようとするパートナーのような存在でしょう。

この論文ではそのような医療者の患者内部のネットワークの「コーディネーター」的側面を、質的アプローチで明らかにした点で、優れたものと思います。

この「混沌」と「言葉」と、体の中で起こる「物理的現象」のおりなす様々な諸相については、大病を経験してみて見えてきたものがたくさんあります。今述べた意味付けコーディネーターとしての医者、というのも実はもう少し違った側面があるとも思っています。またその意味付けには、かなりの限界があるということも感じています。
そのへん、また共病記で書き留めることにします。

$$$ 小雨けぶる晩秋の神社。晩秋というのはいいですね。思うのですが、この「晩秋」を何千年か経験することで、日本人の滅び行くものへの共感のようなものが相当養われて来たのだと思うのですね。おおげさですけど。
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by dobashinaika | 2014-11-26 22:56 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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