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2014年 10月 10日 ( 2 )

魚油に心房細動抑制効果なし(JACC):ひとはなぜそれでもサプリを好むのか

Fish Oil for the Reduction of Atrial Fibrillation Recurrence, Inflammation, and Oxidative Stress
Nigam A, Talajic M, Roy D, et al
J Am Coll Cardiol 2014;64:1441-1448
.

疑問:高用量魚油は炎症、酸化ストレス、心房細動再発を抑えるのか

方法:
・オメガ3脂肪酸(N-3)評価のための多施設試験(AFFODRD試験)。
・二重盲検、無作為化、プラセボ対照
・6ヶ月以内の発作性または持続性、症候性心房細動
・魚油4g/日 vs. プラセボ
・平均271日追跡
・一次アウトカム:30秒以上の心房細動再発
・二次アウトカム;炎症、酸化ストレスマーカー(高感度CRPとミエロペルオキシダーゼ)

結果;
1)337人登録、297人88%完了。脱落率に差なし

2)ベースライン特性に差なし

3)一次アウトカム:魚油群64.1% vs. プラセボ群63.2%:ハザード比1.10(0.84−1.45;p=0.48)

4)高感度CRPとミエロペルオキシダーゼ:6ヶ月後の減少度は両群差なし

結論:高用量魚油は、従来からの心房細動治療を受けていない心房細動患者の再発を抑制しない。その上炎症や酸化ストレスマーカーも減らさない。これが効果の欠如の説明になる。

見通し;このデータはオメガ3脂肪酸が心房細動負担の減少にあまり寄与しないことを示す。別の治療が期待される

### 確認ですが、ベースラインでは両群とも年齢60歳程度、発作性が持続性の2倍位、心機能低下や抗不整脈薬を必要とする例は省かれています。
魚油の中身は1g中にEPA400mgとDHA200mg含有したのが1日4gです。

日本で高脂血症に効果効能が通っている武田薬品のロトリガは2g中にEPA930mg、DHA750mgで1日2g標準、中性脂肪高値の場合は1日4gまでOKです。
いずれにしてもこれまでの用量よりはやや多い試験です。

過去のブログでさんざん見たように、オメガ3脂肪酸は心房細動抑制には効果が無いことはもう既知のものかと思っていました。
http://dobashin.exblog.jp/16784119/

しかし人々のサプリ信仰は、根強いのでしょうか。まだこのように論文が出るようです。
注意すべきなのは、アウトカムの評価、つまり心房細動の再発の評価法が、定期的な電話伝送(無症候性対策)および症候時の際の電話伝送によっているということです。

サプリを飲んでいると、それだけで効いていると思い込む、すると症状が感じにくくなる、いわゆるホーソン効果もあると思われます。本来は合併症や死亡をアウトカムにすべきですが、おそらくやる前から勝算がないと思われたのかもしれません。

その辺のアウトカムの取り方については、同じく心房細動とサプリメントに関しての青島周一先生の秀逸な論考をご覧ください。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/ebm/201409/538376_3.html
(要無料登録)

サプリを良しとする人間心理は興味深くて、大きいのはやはり医師の出す「医薬品」への(特に副作用の)恐怖や不信感があると考えられます。お医者さんが出す薬はなんとなく強くて怖いけれど、コンビニで売っているサプリなら副作用も少なくて安心である、という思い込みです。

更に上記のホーソン効果のごとく、そうして自分で選んだものというのは、「効く」という感覚を懐きやすいことも要因の一つと思われます。その上、サプリを進める人が同僚とか親戚とか、気のあった友人であることが多いのもサプリへの誘惑を強めます。

「信頼しているあの人がいいって言っていたサプリだし、自分で選んで買ったのだから、効いてほしい、いや効くに違いない」というバイアスが、西洋医薬品への恐れ不信感が相俟って、サプリやその他様々な診察室の外での医療行為(擬似医療?)へと誘う。。。

医療者としてこうしたバイアスとどう向き合うか、深く考えたいです。

ということで今日の散歩は、ちょっと早く起きてしまったので大崎八幡まで足を伸ばしました。
秋晴れ早朝の人もまばらな国宝神社。。なんとも清々しい気分になります。
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by dobashinaika | 2014-10-10 20:58 | 心房細動:アップストリーム治療 | Comments(0)

散歩哲学(1)〜医者が病気になった時〜

8月に入院したのですが(詳しくはこちら参照ください)、退院後約4週間、自宅療養を行いました。最初の2週間は頭痛やめまいとの闘いで、外にでることもままならなかったのですが、後半の2週間からは、なんとか散歩まで、ゆっくりではありますが、できるようになりました。

じつはこの病気になるまで、スケジュールを決めたしっかしした運動はしていなかったのです。患者さんには日頃から運動しなさいなどと言っておいて、お恥ずかしい話ですが。。。

あまり首に力がかけられないので、やはり有酸素運動としての散歩が一番と考え、ここ3週間以上になりますが、毎日、雨の日以外は20〜30分、家の近くを歩き回ようになりました。

いまさらながらですが散歩は素晴らしいです。
毎日だいたい同じルートを歩きますが、時にはちょっと寄り道をしたり、気になる曲がり度を曲がってみたりします。

今の季節は、金木犀が盛りで、毎朝、その心地よくて何となく緊張感のある香りに包まれながら逍遥しています。

空の青さ、鳥のさえずり、逃げるように走り去る野良猫、風音。。。

なにげない風景が、草木が、新鮮な顔を見せてくれます。
あるいは、ここにこんなお店があったのかという、小さな発見があります。

毎日同じようなルート、同じような家々、同じような景色なのですが、実は、毎日微妙に違うのです。
ここ数日、金木犀の香りの勢いがだんだん強くなってきています。また少しずつ肌寒くなり、ちょっと長袖が欲しくなります。

そうした季節のうつりかわりもそうですが、歩くこちら側も、毎日微妙に変わります。
今日は少し右の足首が痛いとか、心拍数が落ち着いているとか、頭がちょっと重いとか。。
あるいは、ブログに書くことが浮かんだりとか

毎日同じように思えていた外の風景も、中の自分も、必ず昨日とは違う何らかのうつろいがあります。

ドゥールーズの「差異と反復」にある、
「習慣とは日々のくり返しから"違い"を無視したもの」
とう言うのはなるほどその通りで、 私達の日常は習慣と発見、習慣と差異とからできているようにも思います。

今回、医者でありながら不覚にも病を患いましたが、その体験を通じて見えてきたこと(あるいは見えなくなったこと)が少なからずあります。

これから少しずつ、そうしたことをほぐしていきたいと思います。
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by dobashinaika | 2014-10-10 00:12 | 医者が患者になった時 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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