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2013年 10月 06日 ( 1 )

抗凝固薬をいつやめるべきか?:宮城プライマリ・ケア研究会第1回学習企画で講演しました

昨日(5日)は宮城プライマリ・ケア研究会第1回学習企画の学習講演をさせていただきました。
この研究会は宮城県のプライマリ・ケアの発展を目指して,県内各地で活躍する医療機関が協働して設立されたものですが、震災以後、プライマリ・ケア医、家庭医に対するニーズが高まる中、宮城県内の家庭医療マインドを持つ医療者が集まって、情報共有、情報発信をしていこうという趣旨のもとに同志が集まった形がこの会であると理解しております。
http://miyagi-min.com/general/info/archives/434?utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter


本日の河北新報にも取り上げられていました
http://www.kahoku.co.jp/news/2013/10/20131006t15029.htm

今回非常に光栄なことですが、第1回の学習企画に講演者と参加させていただきました。

演題名は「プライマリ・ケア医のための心房細動入門」で、内容は日経メディカルオンラインに連載しているものプラスアルファです。

心房細動関係で最近ときどき講演させていただいていますが、内容の骨子としては

・心房細動という病は患者と医療者双方にとっての「旅モデル(飯島克己先生より)」にも例えられる長い道のりである
・診療においてはリスクマネジメントの視点を持つことが大切である。
・心房細動のリスクマネジメントは「評価]「コミュニケーション」「意思決定」「リスクヘッジ」の4工程からなる
・意思決定においてはエビデンスのみならず、患者プリファランス、医療者エクスパタイズの3要素を常に考える
・最終目的はにはモイラスチュアート先生のPCCM(=患者中心の医療)にあるように、患者ー医療者間での共通基盤の確立である。

というようなものです。病態生理やエビデンスより患者=医療者の関係性を重視した内容と思われ、循環器クラスターの先生がたの講演とはだいぶ様相が違うと思います。
そのためときどき、循環器専門医の先生を対象にした講演会では「?」って感じになることもあります。

しかしながら、今回の聴衆は上記のようなPCCMの真髄を知り尽くした医師医療者ばかりでしたので、説明がしやすい反面、釈迦に説法もいいところで、非常に恐縮しながらの講演でした。

講演後多くの質問をいただきましたが、案の定その内容はどれも非常に日々の診療に根ざしたもので、答えがいのあるものばかりでした。

・初発心房細動に対しては、レートコントロールだけで1日診るとしても患者さんは大変不安であると思うがどうしたら良いか?
・マクロライド系抗菌薬との併用の場合のモニタリングはどうしたら良いか?
・どうしても抗凝固薬を飲みたくない患者さんに対してはどのようなアプローチを取るのか?
・高齢になって抗凝固薬をやめることはあるのか?あるとしたらどんなときか?

などで、患者さんとしっかり向き合っている医療者にしかできない質問ばかりだったと思います。

特に最後の抗凝固薬をやめるとき、という視点は循環器専門医にはないものです。循環器専門医は原則、一回処方し始めた抗凝固薬はやめません。たとえ認知症が進行しても、一人暮らしになったとしても、転倒して臀部に大きな内出血を作ったとしても、かまわずずっと続けると思います。

でもプライマリ・ケア医の場では、90歳、95歳になっても娘さんに連れられて降圧薬とワルファリンをもらいに、毎月杖をつきながら受診される、そういった方が非常に多いのです。また今まで何とか元気だったものの、脳梗塞ではなくいわゆる生活不活発病で移動困難となり、短期の老健施設入所や特養への入所を余儀なくされる方も少なくありません。そうした方は、そろそろワルファリンは危ないのでは?もう必要ないのでは?という思いをだれしも一度は抱くのではないでしょうか?

私の答えとしては、「超高齢者のエビデンスは乏しいが、EPICA研究などではやはりワルファリンを良好にコントロールすれば、出血は意外と少ないので、原則投与し続けるべきだが、アドヒアランスに問題が生じたり、INRや血圧管理が不良となったり、脱水や転倒といったトラブルが有る場合はやめるという選択も十分”あり”である。その場合家族との間に脳塞栓症になった場合の症状や転帰について十分な情報共有を行っておく必要が有る」といったところでしょうか。

でもこの問題、こんな形でいろいろ考えて回答しても、どうしても教科書的、最大公約数的な感が拭えないものになってしまう、というか、どんな答えをしても最大公約数的になる事こそ、この問題の本質でありそもそも答えのでない問題だということだろうと思われます。

こと心房細動診療においてでも、こうした問題意識をもつ医療者とつながりが持てるだけで、この会の意義は多大だと思います。今後とも本会が発展していくことを切に願います。
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by dobashinaika | 2013-10-06 19:25 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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