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2013年 03月 15日 ( 3 )

第77回日本循環器学会学術集会1日目見聞記(2)J-RHYTHM RegistryとFUSHIMI AF Registry

Jリズムレジストリー、FUSHIMI AFレジストリーに関してのランチョンとFeatured Research sessionからの情報です。

・Jリズムレジストリーの中間解析ではINRの分布は年齢に関係なし
・梗塞、終結のイベントも年齢に関連なし。
・そもそもイベントが非常に少ない

・FUSHIMI AFレジストリーは登録施設76のうちプライマリケア医64施設でワーファリン投与50%強
・CHADS2スコア平均2.09点で3点症例がJリズムレジストリーより多い。
・抗血小板薬投与例の74.4%に、心血管疾患なし
・CHADS2スコア0点の17%に抗血小板薬処方あり
・抗凝固薬、抗血小板薬併用例でも明らかな血管疾患なしに抗血小板薬が使用されていることが多い

###Jリズムレジストリーは、専門施設の登録症例がほとんどでワーファリン投与率8割強です。かたや伏見の方はプライマリケア医が大半で投与率50%。より高リスク例も多い。前者は理想世界に近く、後者はリアルワールドのイメージかもしれません。

たしかに、プライマリケアセッティングでは、ずっと見ている高齢者が、脈をとってみたらいつの間にかAFになっていたっていうことがよくあります。80歳認知症のかたが突然抗凝固薬の適応となったらどうするか。とりあえずアスピリンというインセンティブはこれまでは自然な選択でした。これからNOAC時代になってどうするか。どちらのレジストリーも今後とも追跡データをぜひ出していただければ参考になると思います。

なおFUSHIMI AFレジストリーは発表されていましたが、大切な論文ゆえにこれまで紹介する時間が無くて取り上げていませんでした。後日じっくり読みたいと思います。
http://www.journal-of-cardiology.com/article/S0914-5087(13)00005-1/abstract
by dobashinaika | 2013-03-15 21:36 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

第77回日本循環器学会学術集会1日目見聞記(1)プラザキサ使用経験、J-RHYTHMレジストリーなど

第77回日本循環器学会学術集会の報告第1弾です。

午前中は「一般口述3:血栓塞栓症、抗血栓療法、血栓溶解」のセッションを聞きました。
明日から役に立つ情報の観点から、箇条書きでまとめます。
関連する午後のFeatured Research セッション(静岡赤十字病院)とプレナリ―セッション(心臓血管研究所)からの報告も合わせてまとめました。

なお以下の内容は、小田倉が受け取った情報を記すもので、文責はすべて小田倉にあります。内容の誤りはご指摘いただければ幸いです。

***PTINR2.0以上は70歳以下にも適しているか(OJ013:静岡市立静岡病院から)・480人の心房細動例の解析では、70歳以下の人で塞栓症3人(うち2人はINR1.6未満)、出血1人INR1.6~2.0) であり、イベント自体少ない。
・INR管理状況は70歳以上と以下で同じなので、年齢によらず2.0位を目指してもイベント発症率は同じ

***ダビガトラン服用下のaPTT上昇と患者背景の関係(OJ014:心臓血管研究所から)・404例中午前中aPTT測定の195例において、aPTT60秒(施設正常域の中央値の2倍)でみた場合、60秒以上になった例は20~30%。
・年齢56歳以上、体重68kg未満、Cr1.0/0.7(男/女)の3因子が多いほど、aPTT高値
・反対に因子数ゼロならaPTT低値

***Jリズムレジストリーで抗血小板薬併用群での心血管イベントリスク(OJ015;藤田保健衛生大学から)
・Jリズムレジストリーではワーファリン単独73%、抗血小板薬単独8%、併用16%
・ワーファリン単独群を1とすると、脳血栓/全身性塞栓は抗血小板群2.38、併用群0.94
・出血は抗血小板群0.78、併用群1.65
・併用群では出血の既往例、CHADS2スコア高値例で出血多い
・併用群は梗塞は同じで、出血だけ増えた

***日本の発作性心房細動患者で脳梗塞のリスク層別化は妥当か(OJ016岩手医科大から)・未治療332例対象でCHADS2スコア0点35%、1点23%
・心不全が年間発症率4.4%、脳卒中/TIAの既往が10%と高リスク

***出血リスクの新しいスコア;AKBスコア(OJ017:藤田保健衛生大学から)・抗血小板薬併用(A)、腎機能CCr30未満(K)、出血の既往(B)の3因子でのリスク層別化はC統計量0.71でATRIAスコアやHAS-BLEDスコアより良好

***CHADS2スコア低値例での左心耳血栓を生じるリスク因子(OJ018筑波大学から)・406例の心房細動中アブレーション前の経食道エコーで左心耳血栓は38例
・CHADS2スコア0,1点は246例60%で、そのうち12例で左心耳血栓あり
・左室EF55%未満、左房径45mm以上が左心耳血栓形成と関連あり

***ブルーレターはダビガトランの処方にどう影響を及ぼしたか(午後のプレナリ―セッション5:心臓血管研究所から)・上記同様404例のダビガトランの使用経験から
・ブルーレターの出血例は”too aggressive”、ブルーレターにより”guarded!が”more guarded!になった
・ブルーレター前(I期)、ブルーレター後から発売1年まで(II期)、発売1年からそ現在(III期)とすると、II期で高齢者、心不全例への投与が減ったがIII期で増加した
・塞栓症は1例(I期)、出血は1例(III期、直腸潰瘍、80歳)、頭蓋内出血なし

***aPTT低値はダビガトラン内服例での虚血性脳卒中と関係あり(FRS-028静岡赤十字病院)・129例で投与2週間後、内服150±7分で測定
・虚血性脳卒中の4例ともaPTT35秒以下
・出血の6例はaPTTに関連なし

###いろいろと知りたいことが分かったセッションでした。全体として感じたのがは、リスクをいかにとらえるかです。とくにCHADS2スコアについては、さんざん言われているように、簡便さ優先の指標がゆえに、粗雑さも併せ持っている。同じスコアでもたとえば心不全と高血圧ではその重みが違う、ということを改めて感じます。

心臓血管研究所の膨大なaPTTデータは参考になります。とくにCCr30~50の例でも最近は処方されているのが、目を引きました。aPTT低値については、測定ポイントが少なく,
交絡因子もあるため何とも言えない感じもありますが、このようなデータの積み重ねは大切と思いました。

しかし、この午前中のセッションの裏でリバーロキサバンの市販後調査の中間解析が発表されていて、ホットな議論が交わされたようですが、今回は学習優先で一般演題を聞きましたので、聞けませんでした。昨年より心房細動のセッションが多くなっているため仕方ありません。Ustとかであとで見ることができたらいいのにと思いますが、学会参加者減少につながることは絶対やられないでしょうし。

第77回日本循環器学会学術集会1日目見聞記(1)プラザキサ使用経験、J-RHYTHMレジストリーなど_a0119856_2121165.jpg

展示会場へと向かう集団。スーツネクタイ率99%。プライマリーケア系学会とは対極をなす光景ですね。黒系スーツが圧倒的に多くカラスの大群を連想してしまいました(失礼)。
by dobashinaika | 2013-03-15 21:34 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

米国でのダビガトラン市販後の出血に関するNEJM誌のperspective

明日(もう今日になりましたが)からの第77回日本循環器学会「観戦」のために、横浜に来ています。
あすからのフル稼働のために英気を養おうと思いましたが、気になるステートメントがNEJMから出ていたので、読んでから寝ることにします。
簡単に箇条書きでのまとめです。

Dabigatran and Postmarketing Reports of Bleeding
DOI: 10.1056/NEJMp1302834


・2010年10月のダビガトラン承認後、FDAはFDA Adverse Event Reporting System (FAERS)を通じて、重大で致死的な出血事象の報告を受けていた。その出現率は、ワルファリンの出血率よりも多い。

・RE-LYでは以下のことが確認されている
脳卒中/全身性塞栓予防効果:ダビ150>ワルファリン(1.1vs.1.7/100人年)
死亡率:ダビ<ワルファリン(1.1vs. 1.7;傾向)
大出血」ダビ150=ワルファリン(3.3vs.3.6)
消化管出血:ダビ>ワーファリン(1.6vs.1.1)
頭蓋内出血:ダビ<ワーファリン(0.3vs. 0.8)

・RE-LYの結果から予想されてはいたが、市販後調査での出血イベントがあまりにも多かったので、FDAはFAERSによるレビューを急いだ。

・市販後調査では、RELYのような腎機能などが適正化された集団とは対象が違う。

・今回のレポートでは、出血症例の背景は不明。少人数ながら腎機能低下者でも減量がなされていなかったとのこと。

・われわれは疫学上の現象である、Weber effect(Weber JCP. Epidemiology of adverse reactions to nonsteroidal anti-inflammatory drugs. Adv Inflamm Res 1984;6:1-7、すなわち新薬登場時、急激に副作用報告が増加し、その後急減する現象の可能性も考慮している。ワルファリンは発売後約60年たつが、新規抗凝固薬より副作用報告が極端に少ないのはこの理由による。しかしながら、FDAの標準プラクティスに従い、2011年12月に薬剤安全性情報が出された。

・ダビガトランの場合、市販後調査の出血イベントの多さが、真の出血リスク増大を反省しているのか見極めたいと考えた。保険クレームやFDA Mini-Sentinel databaseからの2010年8月~2011年12月までのデータでは、ダビガトランによる出血はワルファリン関連出血より多いというわけではない。

・この解析は、交絡因子や詳細なカルテデータが欠如している点が欠点。これを克服すための2つのプロトコールに基づく評価を立案中。

### 市販後調査で多数の出血事象が報告されたが、それはいわゆるWeber効果(新薬ということだけで報告が触発されたため)であり、別なデータではそれほど顕著な増加はなかった。という趣旨です。Mini-Sentinel Distributed Databaseの内容をみますと頭蓋内出血はダビが1.6人/10万人に対しワルファリンは3.1~3.5人とのことです。まあワルファリンの母数はかなり多いわけではあります。

日本で2011年8月に出ました市販後調査は、腎機能低下例や超高齢者が多数含まれており
単なるWeber効果だけのものではないと思われますが、ただし、対母集団の比率でみた場合、果たしてワルファリンに比べて明らかに出血率が多かったとはいえないだろうとも思われます。ワルファリンの大出血例は市販後50年のこの時期には厚生省に上がっているのは一部かもしれません。

間違ったケースに絶対使わないこと。はじめて使う場合はリスクの少ないケースから。とりあえず、よく言われる原則論を言って寝ます。

明日からは日循ネタをブログ、ツイッター、フェイスブックを通じて発信しまくりたいと思いますので。
by dobashinaika | 2013-03-15 00:07 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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