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2013年 03月 08日 ( 1 )

抗血栓薬の内視鏡ガイドラインに関する内視鏡専門医と循環器内科の討論で浮かび上がったこと(1)

本日は、「内視鏡時における対応について〜診療科間のディスカッションも含めて〜」と題して、仙台市内の内視鏡専門医とプライマリケア、循環器内科にそれぞれの立場から新しい消化器内視鏡学会の立場からディスカッションをいたしました。

内視鏡専門医は、東北大学消化器内科講師の飯島克則先生です。(飯島先生は高校の後輩だったことが判明しました)。プライマリケア,循環器内科代表は私です。座長は長野内科胃腸科の長野正裕先生です。

飯島先生から従来のガイドラインの問題点とガイドライン改訂のポイント,および現在の東北大学の内視鏡生検の現況について解説がありました。以下ポイントを箇条書きいたします。

【従来のガイドライン】
➢ワルファリンを3〜5日休薬するという根拠は健常人の皮膚を切開し(生検と同じような状況と考えて)、出血時間がワルファリン非投与時と同じレベルになるのが3〜5日だったことに基づく。すなわち健常人体症の擬似的な実験結果によるのみである。(Komatsu et al. J Gasteroenterol 2005)
➢心血管疾患患者にアスピリン服用群と8週間中止群とで内視鏡検査をした場合、出血率はアスピリンが高かったが、死亡率は中止群で高かったとのデータ有り。(これ倫理的に問題だなあ:Sung et al. Ann Intern Med 2010; 152: 1-9)
➢旧ガイドライン遵守状況を調べた結果では、大変ばらつき多い。アスピリン止めない、7日間止める。翌日から再開。3日後から再開など様々。(OnoS et al. J Gastroenterol Hepatol 2011)

【東北大学の生検時の対応】
➢生検時は処方医にコンサルト
➢単剤ならそのまま生検可能。PTINRと後出血を十分確認
➢2剤以上ならアスピリン+ワルファリンならそのまま非休薬またはヘパリン置換

【アウトカム】
➢ガイドライン前は休薬なし13%、休薬有り76%。ガイドライン後は休薬なし73%、休薬有り26%
➢ガイドライン前:入院が必要な出血0%、ガイドライン後0.6%(ただし4例中3例は抗血栓薬なし)
➢出血はU領域(胃体上部)が多い

【東北大学消化器内科の基本方針】
➢必ず当日コアグチェックでINR確認
➢PPIを数日間投与;PH低いほど血小板凝集能は落ちるので
➢小鉗子を使う

次に循環器医の立場を代表して私から以下のことをダベリました。

【リスク概論】
・ 抗血栓療法とは何か?抗血栓療法は“リスクマネジメントである!“
・ 抗血栓薬下の内視鏡におけるリスクマネジメントとは塞栓症リスクと出血リスクの“リスクバランスをいかに考えるか”である
・ リスク=インパクトx確率である
・ 内視鏡医は塞栓症のリスクをインパクトを、循環器医は出血のリスクとインパクトを知る必要がある
・ 塞栓症のインパクトは「ノックアウト型脳梗塞」。1年生存率50%と悲惨
・ またステント血栓症の予後も悲惨
・ 塞栓症の確率は、ワルファリン1週間休薬で1%
・ ステント血栓症の確率は2剤休薬で1〜2%(1年半までは増加)
・ 生検による出血が増加したというエビデンスは無い
・ 生検による出血のインパクトとして、生命予後に影響を及ぼすことは考えにくい
・ どう考えても(塞栓症リスク)>(出血リスク)である

【これまでガイドラインの問題点】
➢入院ペバリンブリッジは煩雑
➢ヘパリンブリッジ無く休薬することがよく行われたと思われるが、これは不合理なnon protect period、つまり無用な塞栓症を増やすことになる

【新しいガイドラインへの疑問】
➢ワーファリン+アスピリン服用者の場合、ヘパリンブリッジは必要か?
➢DESで2剤併用している場合、ESD,EMRなどを1年くらい延期できるのか
➢全例一律に生検は内服継続(単剤)して本当にいいの?
➢全施設でガイドライン通りにしているのか?
➢非内視鏡専門医ながら内視鏡は行っている開業医などはどうしているのか
➢INR測定はどのようにしているのか

### 非常に実りのある会でした。内視鏡医と循環器医がお互いどのような「つもり」で診療を行っているのかがよくわかしました。

・ コアグチェックが重宝
・ PPIを使う
・ 小鉗子を使う


などなど、消化器内科医の日々の工夫がわかり大変有意義でした。
その後のディスカッションが、また大変有意義だったので、その点を2回に分けて書きます。
by dobashinaika | 2013-03-08 23:57 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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