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2012年 10月 10日 ( 2 )

新規抗凝固薬における冠動脈イベントリスクのメタ解析

BMJ open  10月6日発表分より

Coronary and mortality risk of novel oral antithrombotic agents: a meta-analysis of large randomised trials
BMJ Open 2012;2:e001592 doi:10.1136/bmjopen-2012-001592

新規抗凝固薬の冠動脈疾患及び死亡リスクに関するメタ解析

P:キシメガラトラン、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバンの拡大規模試験参加者:28RCT、138948人

E/C:新規抗凝固薬

O:心筋梗塞、急性冠症候群、大出血、全死亡

結果:
1)心筋梗塞/急性冠症候群:ダビガトランはリスク高い(OR 1.30; 95% CI 1.04 to 1.63; p=0.021)。リバーロキサバンは比較的低い(OR 0.78; 95% CI 0.69 to 0.89; p<0.001)。キシメガラトランは高リスクだが統計的には明らかでなかった。アピキサバンは低めだが有意差なし。
a0119856_23132413.jpg


2)大出血率は薬ごとにバリエーションあり

3)どの薬剤も死亡率低下に関与していた(研究間の異質性なしに)

結論:冠動脈イベントリスクはダビガトランで明らかに高かったが、キシメガラトランでは高くなかった。それに対しXa阻害薬はリスクが低かった。すべてのケースで新規抗凝固薬は死亡リスクが低かった。この情報は特定の患者の薬剤選択に有用。

### RE-LYのサブ解析ではダビガトランの虚血性心疾患リスクは一応否定されて入るものの、AIMのメタ解析ではやはり懸念されているところです。(その辺の経緯は以下参照)
http://dobashin.exblog.jp/14373537/
http://dobashin.exblog.jp/14394447/
http://dobashin.exblog.jp/14384703/

筆者によると、直接トロンビン阻害薬に関しては、in vitroでXa阻害薬に比べて逆説的凝固の存在が指摘されています。これはトロンビンによるプロテインC(凝固制御タンパク)活性化を抑えるためと解釈されています。トロンビンートロンボモジュリン複合体はプロテインCを活性化して血液凝固を阻止するいわば天然のダビガトランですから、そこをブロックすると凝固作用が更新するというメカニズムです。

もう一つのメカニズムとして、直接トロンビン阻害薬の長期使用による炎症マーカー(11-dehydrothromboxane β2)の増加が指摘されています。

Xa阻害薬にはこのようなデメリットが今のところ見当たりません。

しかしながらこのメタ解析はやや拙速に過ぎる感もあります。本ブログでも何度も指摘しているように、新規抗凝固薬のメタ解析をするには大規模試験がそれぞれの薬1つずつしかなく、それぞれにかなりプロトコールや対象患者が違います。また冠動脈イベントの評価法もさまざまで無症候性の心筋梗塞を心電図上から判断してアウトカムとするかどうかについても試験間に差があります。

ある程度の参考にはなりますが、意思決定に影響を及ぼすにはまだ早計という気がします。
by dobashinaika | 2012-10-10 23:17 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

心房細動制圧=脳塞栓制圧の図式完成にはiPS細胞の実用化を待たねばならないか?

昨日(9日)、仙台市医師会薬剤師会学術研修会に講師として参加し「心房細動における抗凝固薬と抗不整脈の実践的使い方」と題して講演させていただきました。

時間を間違えてしまいスライドを90枚くらい作ってしまいました。ちょっと細かいことを言い過ぎたかもしれないと反省しています。

講演で伝えたかったことのひとつは、「心房細動治療には2つのミッションがある」ということです(実際には時間がなくて強調できずでしたが)。
2つのミッションとは
A)ドキドキさせない
B)脳卒中にさせない

の2つです。そしてA→Bにはならないということです。

ドキドキしなくなる、つまり心房細動を抗不整脈薬で抑えようとしても心房細動はなくならないし、ましてや脳卒中は抑えられない。だからBに直接効く薬「抗凝固薬」が"暫定的に”必要である、ということです。

本当は心房細動そのものが全くなくなれば全てうまく行くのです。しかし現時点で抗不整脈薬にそれを課すことは無理。アブレーションの力はまだ不明です。そこで心房細動という現象はそのままにして、血液の方の凝固活性のみを”とりあえず”抑えておくことにしたら、今のところまあまあうまくいっている、というに過ぎません。

抗不整脈=抗凝固という風にストレートに行く治療法こそ画期的かつ王道と言えます。
それには心房細動を完全に制圧させる治療法がなければなりません。しかもリモデリングが有る程度起きる前にです。リモデリングが有る程度できてしまっては間に合いません。でもそんな治療法は今のところありません。
あ、間に合う方法がひとつ浮かびました。やっぱりiPS細胞かな〜(笑)。
by dobashinaika | 2012-10-10 00:57 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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