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2012年 08月 25日 ( 1 )

昨日発表されたヨーロッパの心房細動ガイドラインの一部アップデートは見るべきものが多い

現在ミュンヘンで開催されていますヨーロッパ心臓病学会2012で、心房細動ガイドラインの一部改定が発表されています。

抗凝固療法、左房閉鎖術、除細動のための抗不整脈、レートコントロール、左房アブレーションの5つに焦点を当てたアップグレードです。

2012 focused update of the ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation
An update of the 2010 ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation
Developed with the special contribution of the European Heart Rhythm Association
Eur Heart J (2012) doi: 10.1093/eurheartj/ehs253

イントロダクションと抗凝固療法のエッセンスだけかいつまんでご紹介します。

【Intorducrion】
◎ 心房細動のスクリーニング
Key Point

・65歳以上の患者における時々の脈拍触診と、脈不整の場合それに続く心電図記録は、初回脳卒中に先立って心房細動を同定するので重要(推奨度I,エビデンスレベルB)

【脳卒中と出血の評価】【新規抗凝固薬】
Key Points

・ アスピリンの脳卒中予防効果は弱く、害の可能性もある。大出血(頭蓋内出血)のリスクはアスピリンと経口抗凝固薬(OAC)とで、特に高齢者の場合あまり変わりはない
・ 抗血小板薬(アスピリン−クロピドグレル併用、または併用に忍容性がない場合のアスピリン単独)の心房細動脳卒中予防のための使用は、OACを拒否する数少ない患者に限定される
・ CHA2DS2-VAScスコアは「真の低リスク」を同定するのにCHADS2スコアと同等であり、脳卒中や塞栓血栓症の発症同定においてはCHADS2スコアに優る
・ 新規抗凝固薬は効果、安全性、便宜性でビタミンK拮抗薬に優る。ゆえに、新規抗凝固薬は、すべての患者において容量調節の行われた(INR2-3)ビタミンK拮抗薬の代替薬として考えられるべきである
・ ある新規抗凝固薬がほかより勧められるという根拠は不十分。患者特定、コンプライアンス、忍容性、コストを考えることが重要

図1.抗凝固薬の選択
a0119856_23445634.gif


図2.新規抗凝固薬服用患者における出血の管理
a0119856_234582.gif


### 学会の開催に合わせるようにESCの5つもガイドラインがアップデートされています。そしてなんと心房細動のガイドラインは、発表2年後にもかかわらず、そのキモの部分がより洗練された形で登場しています。

感心した点を列挙
1)65歳以上の人は、みんな時々脈をとってねというメッセージを明確にしたこと:これ実はすごく大事で、基本のキだと思っていたのですが、ガイドラインに明記するところのESCの偉大さを感じさせます。なんてプライマリケア志向なんだろう。というか、こういう現場重視の姿勢がガイドラインの当たり前の姿であるということを改めて痛感させられます。

2)アスピリンの扱いが非常に限定的となった:これまでシェーマに”aspirin”の記載が少しはありましたが、今回で皆無となりました。あくまで抗凝固薬を拒否する人にのみ使われるとの記載になっています。この点では日本のガイドラインに近づいたかのようです。

3)CHA2DS2-VAScスコアが相変わらず重用され、CHADS2スコアはシェーマから消えた:本文記載ではケチョンケチョンとまで行かないまでもCHADS2スコアはもう終わったかのようなニュアンスでその欠点を指摘し、CHA2DS—VAScのほうがいいよと謳われています。ここまではっきりCHA2DS2-VASc押しをされると、つぎに控えるアメリカや日本がこれをどう扱うか、非常に興味がもたれるところとなります。

4)CHA2DS2-VASc0点(65歳未満でリスク無し、女性も含む)は、抗凝固療法しなくて良いということが明記されている:わかりやすいです

5)CHA2DS2-VASc1点から抗凝固薬の使用が明記されている:「女性」に関しては65歳未満でリスク無しの例においては1点と数えないが、そうでない場合に1点するという記載のようです。とにかく、「65歳以上」だけの場合、「血管疾患だけ」のばあいも抗凝固療法というメッセージです

6)新規抗凝固薬をイチ押し、ワーファリンは点線:この図1をみると新規抗凝固薬は実践(best option)、VKAは点線(alternative option)になっています。きわめてドライというか明快ですが。。

さすがESCというポイントがあちこち散見されます。とにかくフットワークが良い、前回から2年後でこれだけ斬新に刷新されていて、ある意味爽快な気分にさせられます。日本のガイドラインの改定もまたれるところです。
by dobashinaika | 2012-08-25 23:51 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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