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2012年 07月 24日 ( 2 )

他にリスクのない特発性心房細動でも洞調律例より心血管イベントが多い

Europace 7月10日オンライン版より

The occurrence of cardiovascular disease during 5-year follow-up in patients with idiopathic atrial fibrillation
doi: 10.1093/europace/eus203


いわゆる「特発性心房細動」における心血管イベントの追跡研究(症例対照研究)

Case:特発性心房細動(=高血圧、降圧薬、抗不整脈薬、心不全、冠動脈疾患、末梢血管疾患、脳卒中の既往、甲状腺疾患、肺疾患、腎疾患、エコーでの器質的心疾患、これらすべてを認めない)41例:平均56歳、女性66%

Control:洞調律の健常者45例

O:心血管イベント

結果:
1)ベースラインの両群間特徴に差なし

2)心血管疾患;心房細動群で有意に多い(49 vs. 20%, P= 0.006):追跡期間平均66ヶ月

3)初回心血管イベント時の年齢;心房細動群で有意に若い(59 ± 9 vs. 64 ± 5 years, P= 0.027)

4)イベントの重症度;心房細動群でより重症

5)心血管疾患の明らかな予測因子としては、年齢、心房細動の既往、エコーでの左室壁厚

結論:特発性心房細動例は、対照健常群より心血管疾患が多く、しかも若年で発症し重症である。このような患者では早い時期の心血管疾患の診断と治療が予後を改善する。現時点では心血管疾患の潜行を見極めるために、特発性心房細動患者の定期的チェックが懸命であると思われる。

### 高血圧を含め、いろいろな基礎疾患がない例で心房細動が起きた場合、心筋梗塞など心血管イベントを早めにチェックせよというメッセージかと思われます。心房細動自体が何らか心筋リモデリングの表現ということができ、何らかの動脈硬化の下地があるがために心房細動も起き、引いては心血管イベントも引き起こされると考えられるかと思います。

ケースコントロール研究ではありますが、50代くらいで何も他にリスクのない心房細動患者さんは確かにおられますので、(男性に多いように思います)今後その目で注意したいと思います。
by dobashinaika | 2012-07-24 22:50 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

外科的手技のための抗凝固薬を中断をどうしたらよいか?:Circulation誌のEditorial

Circulation 7月17日号 Editorials より

Anticoagulation, Novel Agents, and Procedures
Can We Pardon the Interruption?
Circulation.2012; 126: 255-257


「抗凝固療法、新薬、そして手術手技 我々は中断を許容出来るか?」
RE-LY試験の周術期における出血、塞栓イベントに関するサブ解析に関するEditorial

・侵襲的手技のために抗凝固薬を中断する際の臨床家の2つの問いあり
 1.術前どのくらいの期間中断すべきか?
 2.ブリッジ戦略には短期作動薬を使うべきか?
・ワーファリンは積年の経験にもとづき、以下の様に意思決定されるが、この決定に関するエビデンスは驚くほど少ない
ブリッジングに好ましい因子 ブリッジングに好ましくない因子
脳梗塞/全身性塞栓高リスク 脳梗塞/全身性塞栓低リスク
出血低リスク患者      出血高リスク患者
出血低リスク手技      出血高リスク手技
抗凝固薬長期オフ      高費用、複雑

・ ワーファリンは4〜5日という長期中断が必要
・ 少なくとも高リスク例ではブリッジングには未分画ヘパリンあるいは低分子ヘパリンを、低INR下で用いる。

・短期作動薬の使用は合理的と思われるが、エビデンスに乏しい。
・ 心房細動患者は、術後脳梗塞が非心房細動患者の2倍(大規模コホート研究)
・ しかしブリッジ無しで7日未満ワーファリンを中断しても、脳梗塞リスクは非常に低い(観察研究)
・ 周術期低分子ヘパリンを投与された224名対象のコホート研究では大出血率6.5%(95%CI:4.1~10.8)
・ 塞栓は減らしても出血が上回る場合があることの懸念が生じる
・ これへの答えを得るべくワーファリンブリッジングに関する2つのトライアル(BRIDGEとPeriop2)が走っている最中

・半減期の短い新規抗凝固薬はこうした疑問を解消する可能性はある
・ Healeyらの論文(RE-LTサブ解析)では、術前にダビガトランは平均2日、ワーファリンは5日間の休薬を行った。ワーファリン群ではブリッジは少数派でビタミンKや新鮮凍結血漿投与例はまれだった

・この論文からの知見
1)方法が非常にありふれたものーそれだけ臨床からの要請は多い
2)この試験では周術期塞栓リスクは極めて低い・4591例の中断のうち、術前7日、術後30日の間21例0.5%しか脳梗塞/全身性塞栓を起こしていない
3)ワーファリン群の28.5%、ダビガトラン群の16%未満にしかブリッジを受けていないが、出血はワーファリン、ダビガトランとも4〜5%と同等。つまり出血は塞栓症の8倍。
・1時間を超える手技では出血率が高かった
・ 驚いたことに、出血率はダビガトランを術前少なくとも72時間止めた例のほうが、短期中断例より高かった。医師がより出血の高リスク例ほど長期で止めたからかもしれない
・ これらのことは、出血に対する患者特異性と手技特異性が、抗凝固療法にかかわらず重要であることを示唆する
・ このことは出血高リスク者では、術後抗凝固薬の再開を早める必要もある

・ 緊急手術時の出血はワーファリン、ダビガトランで同等であった。このことはダビガトランで中和薬、モニター法がないことに対する懸念を和らげる

・この論文で答えの出ていない問い
1)塞栓症イベントがあまりに少ないため、ワーファリンーダビガトランの差を同定し得ない
2)ダビガトランの至適中断期間についての情報を提供していない

・ 結論
1)このサブ解析では、心房細動例での短期抗凝固薬中断で塞栓症は極めて稀なことであることが示された
2)ダビガトラン例では、ワーファリン例より中断期間が短かったにもかかわらず、出血率は同等だった。
3)これらのことから、新規抗凝固薬は待機的侵襲的手技における抗凝固療法の中断をより単純化するといえる


### 抗凝固薬中断の大変参考になります。ヘパリンブリッジ療法の総説として呼んでも良いですね。

この元論文はこちら
ブログはこちら
by dobashinaika | 2012-07-24 00:05 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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