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2012年 06月 06日 ( 3 )

4段階層別化で考える「プラザキサが適する患者像」

本日「抗凝固療法の適切な普及のために」と題するディスカッションにパネリストとして参加いたしました。

私は「プラザキサが適する患者像とは」について主に述べさせていただきました。
時間等で割愛した点も含めて、現時点での抗凝固薬選択について、私の言いたかったことをまとめました。

1)抗凝固療法は「リスク」「ベネフット」「コスト(または患者の負担burden)」の3つの側面から考えるべき。現時点ではその中でも、「リスク」を最も重視すべき。プラザキサのリスクにおいて一番考えなければならないことは「腎機能=クレアチニンクリアランス」である。クレアチニンクリアランス低値(当院では40未満)ならプラザキサは投与しないというのを、まず最低基本ラインとして抑えるべき

2)その上で「プラザキサを投与すべき例」「どちらかと言えばプラザキサが良い例」「どちらかと言えばワーファリンが良い例」「ワーファリンを投与すべき例」の4段階くらいに分けて考えている。この4段階は各症例の「リスク」「ベネフィット」「コスト」を考えあわせて決める

3)現時点の当院のおおまかな方針
プラザキサを投与すべき例=ワーファリンのコントロール不良(不適患者)、納豆をどうしても食べたい方

どちらかと言えばプラザキサが良い例=新患の方。75歳未満、CHADS2スコア1点以下、コストを気にしない方、夕方の飲み忘れのない方。アブレーション前後、侵襲的手技前後の方

どちらかと言えばワーファリンが良い例=75歳以上、CHADS2スコア2点以上、コストが気になる方、夕方飲み忘れる方。抗血小板薬2剤の方

ワーファリンを投与すべき例=CCr低下例。ワーファリンでINRが大変安定している方

もちろん実際は、いろいろ患者さんとの間には数々の機微があって、一律には決められませんが、だいたいこんな感じです。
現在リスク重視の立場ですが、経験値が蓄積されてくれば、リスクの閾値はより低くなり、上記4段階の区別も変わってくると思われます。

それとイグザレルトが普及してくれば、また別の象限を考える必要があります。

基本的に高齢者ほどワーファリン、というが私の考えなのですが、ワーファリンに慣れ親しんできたものの意見であり、これから抗凝固療法を始めようとする循環器非専門医の先生にとっては参考にならないかもしれません。
現実的には75歳以上であっても、腎機能がしっかり安定している場合は、プラザキサで良いと思われます。ただしやはり腎機能、APTTをしっかりモニターすることが大切と思います。そしてやはり80歳以上では出来るだけワーファリンを、と思います。

なお、既に学会発表はされていますが、リバーロキサバンの日本人対象、J-ROCKET AF試験がCirculation Journalに論文化されました。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/advpub/0/advpub_CJ-12-0454/_article

早くここにアップしたいのですが、これは大切な論文ですのできちんと読み込んでからにします。しばらくお待ち下さい。
by dobashinaika | 2012-06-06 23:43 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

第34回日本血栓止血学会は循環器医にもためになる演題多数

明日から、東京で第34回日本血栓止血学会学術集会が開催されます。

プログラムを見ますと、心房細動患者さんを多く治療させていただいている身としては大変興味深い内容が、もりだくさんです。

http://www.c-linkage.co.jp/jsth2012/index.html

日本循環器学会とのコラボもあります。

行きたいですねー

ただ開業医としては、今や血栓止血学会にまで出るとなると、かなりの負担になります。

いつも言っているように、有料のYoutube化した学会統合お勉強サイトを作って、シンポや教育講演だけでもいつでもアクセス可能のようにしてほしいものです。DVDを配布している学会もありますが、学会が終わってから、DVDを見る気はしないので。。誠に勝手ですが。。

この学習モデル、やり方次第ではかなり流行ると思うのですが。。。学会に人来なくなるからダメか。。
by dobashinaika | 2012-06-06 23:25 | 抗凝固療法:凝固系基礎知識 | Comments(0)

2万人以上の大規模コホートでは心房細動のリズムコントロールがレートコントロールより予後が良い

Archives of Internal Medicine 6月オンライン版より

Comparative Effectiveness of Rhythm Control vs Rate Control Drug Treatment Effect on Mortality in Patients With Atrial FibrillationRhythm vs Rate Control Drug Treatment
doi:10.1001/archinternmed.2012.2266


リズムコントロールvs.レートコントロールについての大規模住民コホートを対象にした長期追跡試験

P:カナダ、ケベック州の一般住民入院データベース中、1999年~2007年に心房細動の診断で入院下66歳以上の人。入院前の心房細動関連薬の服用はなし。退院7日以内の投与はあり。

E:リズムコントロール

C:レートコントロール

O:死亡率

結果:
1)対象者:26,130人。3.1±2.3年追跡。13,237人(49.5%)死亡

2)治療開始後6カ月の死亡率:リズムコントロール群のハザード比1.07(1.01-1.14)

3)死亡率4年後まで両群で差なし。5年後からリズムコントロール群の死亡率が安定して低下

4)5年後死亡率:リズムコントロール群で低下:ハザード比0.89(0.81-0.96)

5)8年後死亡率:リズムコントロール群で低下:ハザード比0.77(0.62-0.95)
a0119856_0215241.png


結論:この住民ベースのサンプルでは追跡4年までは両群間に差はないが、より長期の追跡ではリズムコントロールの方が優れていた。

### ツイッター上で@Office_jさんに教えていただき、すぐ読んでみました。

非常に興味深い研究です。AFFIRM研究のリズムコントロールもレートコントロールも予後同じだよ、というその後の不整脈治療パラダイムを決定づけたキーメーッセージを有る意味覆す結果となっています。

リズムコントロールかレートコントロールかは、退院後7日以内の現場での判断によっているようです。

ですので後ろ向きコホート研究として避けられない選択バイアス、例えばリズムコントロール群の方が若いのでは、とか発作回数は少ないのではといった懸念は大有りに思えますが、両群の背景はそれほど差がないように工夫されているようです。

AFFIRMとの違いはいろいろあり、患者背景の違いでは平均年齢が10歳くらい高い、入院患者対象、心不全が多いなどがあります。

治療法の違いでは、アミオダロン使用例が多い、リズムからレートにスイッチした例が多い、初期ワーファリン使用率はAFFIRMより少ないが、本研究内ではリズムコントロール群の方がワーファリン使用率が高い。AFFIRMのように洞調率維持を確認したらワーファリンを止めるというようなことは行われていない(はず)。などがあります。

この差の解釈は大変面白いですが、もっと深く読み込む必要があると感じますので、じっくり読みましたらまたアップすることにします。

とりあえずこのEditorialが参考になります。
Rate vs Rhythm Control in Atrial FibrillationCan Observational Data Trump Randomized Trial
Results?

全くの余談ですが、私、もともとが不整脈屋なので抗不整脈薬には一番のこだわりがあり、「ちゃんとやればリズムコントロールだって捨てたもんじゃない」との思いを長年心の奥にしまいこんでいたので、この論文を読んでやや晴れやかな気分になりました。
by dobashinaika | 2012-06-06 00:26 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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