人気ブログランキング |

2012年 01月 18日 ( 2 )

“リアルワールド”における心房細動アブレーションの合併症、再入院、再施行の頻度と予測因子:JACCより

J Am Coll Cardiol 1月10日号より

Procedural Complications, Rehospitalizations, and Repeat Procedures After Catheter Ablation for Atrial Fibrillation
J Am Coll Cardiol, 2012; 59:143-149


大規模データベースを用いた心房細動のカテーテルアブレーションにおける合併症、再入院、再施行の頻度、予測因子に関する検討

・カリフォルニア州の入院患者データベースから、2005年から2008年までに初回心房細動アブレーションを受けた4156例を抽出し対象とした
・多変量解析により、合併症、30日以内の再入院についての予測因子を検討

結果:
1)合併症:5%、血管に関するものが最多

2)30日以内再入院:9%、高齢、女性、以前の心房細動のための入院、(その医療施設の)心房細動アブレーションの経験の少なさと関係

3)アブレーション1年以内の再入院は38.5%

4)心房細動、粗動の再発による再入院は1年目で21.7%、2年までで29.6%

結論;心房細動アブレーションでは20人に1人の確率で周術期合併症が起こる。再入院はありふれたこと。高齢、女性、以前の入院、その病院の経験の少なさと合併症や再入院とは関係あり。

###合併症の内訳は、血管関係52%、出血/血腫44%、心穿孔/タンポナーデ49.3%、脳卒中4.7%、気胸1.9%、TIA1.4%、死亡0.5%(1人)でした。
合併症の予測因子としては、高齢、女性、心不全、高血圧、CKD、肺疾患が挙げられていますが年齢補正後は女性と以前の入院のみが残っています。

11月のハーバード大学のグループの報告では合併症5%で,腎臓病は予測因子でで下が、年齢は関係ないとされています。

再発率の21.7%はボルドー、ハンブルグなどからの報告とほぼ同様です。

この論文の見所は、とかくバイアスの入りがちな自施設でのデータ公開ではなく、患者データベースを用いた大規模コホートが対象だと言うことです。1施設の成績や多施設の登録研究よりは、より”リアルワールド”でのアブレーションの負の面を明らかにしたものと言えるでしょう。

Editorialではこの論文に親和性を感じる点として1)一施設からの報告に比べ成功率が低い、2)合併症率および再入院率が高い、ことをあげています。また著者らはその背景には十分な経験のない医師が施行することが多いからとしています。これに対しEditorialからは「アブレーションで病院が利益を得ているので、自分が熟練していると断言している医師に安易に特権を与えてしまっている」と警告しています。アメリカでもこういう現状があるのです。

この論文を読むと、カテーテルアブレーションというのは、ある疾患の治療法としてトータルで見た場合、予後改善効果は不明であり、症状軽減効果としても短期間の保証しかすぎず、5%程度の合併症と20〜30%の再発率を有する、ことなどなど、、、概観すればでそれほど完成された治療法とはいえないと言う気がしてきます。もちろん「治療法」としての一般的な評価であって、個々の患者さんでは是非とも必要な人が大勢おられることとは別問題ですが。

アブレーション慎重派が投げかけた一石と見ることもできますが、翻って日本の状況を考えるとき、上記のようなデータベース構築もない現状で、やはり患者さん、そしてプライマリーケア医はマスコミや一般向け病院ランキングなどの評判で医療機関を選ぶしかない現状かと思います。こうしたマスコミデータや世評には多くのバイアスが入っており、たとえ合併症データが示される場合があったとしても、自己申告データにならざるを得ません。

カテーテルアブレーションのような侵襲的手技ほど、医療施設の「一般意志」を可視化する意味でのデータベース構築が望まれます
by dobashinaika | 2012-01-18 23:25 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

「大切な人の死」と急性心筋梗塞リスクの関係:MOIS研究より

Circulation 1月9日オンライン版より

Risk of Acute Myocardial Infarction after Death of a Significant Person in One's Life: The Determinants of MI Onset Study

大切な人の死と急性心筋梗塞の関連を検討した症例対照研究 (MOIS研究)

方法:
・対象:米国ボストン周辺の多医療施設に1989年から1994年まで、急性心筋梗塞で入院した1985例(男1318例、平均61.6歳)のうち、心筋梗塞発症前6ヶ月間に「大切な人」をなくしたことのある人

・その人のベースライン情報に基づく推定心筋梗塞リスクに比べての、大切な人の死後の発症リスクの比をMantel-Haenszel estimatorを用いて算出

・データは、入院中に訓練されたインタビュアーによるインタビューで収集された。「過去1年であなたの人生にとって大切な友達、親類または誰かの死を聞いたことはありますか?」の質問を行い、肯定的だった場合、「大切の度合い」を「少し、中くらい、かなり)の3段階で答えてもらった。

結果:
1)大切な人を亡くしたことのある人は270例13.6%で発症1日以内の19人を含む

2)大切な人の死後24時間以内の心筋梗塞発症率は(その他の時間帯の)21.1倍(13.1−34.1)でその後時間経過とともに減少

3)大切な人の死後1週間以内の心筋梗塞発症の絶対リスクは、10年後心筋梗塞リスクが5%の低リスク例で1394人に1人であったのに対し高リスク例(10年発症リスク20%)では320人に1人

結論:大切な人の死を悲しむ気持ちは、その後の心筋梗塞発症リスクの急増と関係あり。高心血管リスク例でそのインパクトは最も高かった。

###大変興味深いデータです。PDFで全文が読めますが、男性の方が発症率比が高く、65歳未満の方が以上より高いという結果も出ています。
http://circ.ahajournals.org/content/early/2012/01/09/CIRCULATIONAHA.111.061770.full.pdf

また、死亡の知らせを聞いた直後ほど発症率が高いため、悪い知らせを聞いたことにより服薬管理がおろそかになったことが原因ではなさそうです。

このデータを元に、では「大切な人の死」の直後、その人にどう介入すれば良いのか、どう手を差し伸べれば良いのか、答えるすべはありませんが、まずは「見守ること」だろうかと思います。
by dobashinaika | 2012-01-18 00:12 | 虚血性心疾患 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

プロフィールを見る
画像一覧
更新通知を受け取る

カテゴリ

全体
インフォメーション
医者が患者になった時
患者さん向けパンフレット
心房細動診療:根本原理
心房細動:重要論文リンク集
心房細動:疫学・リスク因子
心房細動:診断
抗凝固療法:全般
抗凝固療法:リアルワールドデータ
抗凝固療法:凝固系基礎知識
抗凝固療法:ガイドライン
抗凝固療法:各スコア一覧
抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術
抗凝固療法:適応、スコア評価
抗凝固療法:比較、使い分け
抗凝固療法:中和方法
抗凝固療法:抗血小板薬併用
脳卒中後
抗凝固療法:患者さん用パンフ
抗凝固療法:ワーファリン
抗凝固療法:ダビガトラン
抗凝固療法:リバーロキサバン
抗凝固療法:アピキサバン
抗凝固療法:エドキサバン
心房細動:アブレーション
心房細動:左心耳デバイス
心房細動:ダウンストリーム治療
心房細動:アップストリーム治療
心室性不整脈
Brugada症候群
心臓突然死
不整脈全般
リスク/意思決定
医療の問題
EBM
開業医生活
心理社会学的アプローチ
土橋内科医院
土橋通り界隈
開業医の勉強
感染症
音楽、美術など
虚血性心疾患
内分泌・甲状腺
循環器疾患その他
土橋EBM教室
寺子屋勉強会
ペースメーカー友の会
新型インフルエンザ
3.11
未分類

タグ

(40)
(35)
(35)
(27)
(27)
(26)
(25)
(24)
(21)
(20)
(20)
(19)
(18)
(16)
(14)
(13)
(13)
(13)
(13)
(13)

ブログパーツ

ライフログ

著作

もう怖くない 心房細動の抗凝固療法


プライマリ・ケア医のための心房細動入門

編集

治療 2015年 04 月号 [雑誌]

最近読んだ本

ケアの本質―生きることの意味


ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から


中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)


健康格差社会への処方箋


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書)

最新の記事

【Apple Heart S..
at 2019-11-26 07:35
心房細動合併透析患者において..
at 2019-11-21 06:49
日本の心房細動患者の死因の半..
at 2019-11-11 07:22
CHA2DS2-VAScスコ..
at 2019-10-30 17:36
中高年開業医におけるヤブ化防..
at 2019-10-18 07:27
日経メディカルオンライン:第..
at 2019-10-15 06:26
新規発症心房細動では服薬アド..
at 2019-10-06 10:47
心房細動診断においてスマホに..
at 2019-09-19 06:30
第17回どばし健康カフェ「心..
at 2019-09-05 08:51
強い症状のない血行動態の安定..
at 2019-09-04 06:36

検索

記事ランキング

最新のコメント

いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
取り上げていただきありが..
by 大塚俊哉 at 09:53
> 11さん ありがと..
by dobashinaika at 03:12
「とつぜんし」が・・・・..
by 11 at 07:29
> 山川玲子さん 山川..
by dobashinaika at 23:14
運慶展を観た方にWEB小..
by omachi at 19:45
> terryさん ご..
by dobashinaika at 08:38
簡潔なまとめ、有り難うご..
by 櫻井啓一郎 at 23:16
いつも大変勉強になります..
by n kagiyama at 14:39

以前の記事

2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 03月
2007年 03月
2006年 03月
2005年 08月
2005年 02月
2005年 01月

ブログジャンル

健康・医療
病気・闘病

画像一覧

ファン