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治りにくい発作性心房細動の症状改善には、抗不整脈薬よりカテーテルアブレーションが優れている。

発作性心房細動は、実は薬で起きないようにすることが大変難しい薬です。心房細動を抑える薬(抗不整脈薬)が1年間発作をゼロにする確率はせいぜい50%くらいといわれています。一方、カテーテルアブレーション(焼灼術)はこうした薬よりも再発率の点で格段に良いことが示されています。このことをさらに実証する研究がアメリカ医師会雑誌JAMA2010年1月27日号に掲載されました。

P) 6か月以内に3回以上の発作性心房細動を起こし、1種類以上の抗不整脈薬が効かなかった患者。30日以上発作が続く人、18歳以下の人、心不全患者(左室駆出分画40%未満)、以前にカテーテルアブレーションを受けた人などは除いた。

E) カテーテルアブレーションを受ける

C) 今まで飲んだことのない抗不整脈薬を飲む

O) 9か月以内の症状のある心房細動の再発を調査した。約3カ月ごとの診察や症状が出た場合心電図を電話伝送して確認するなどの方法をとった。またカテーテルを受けた人では、もう1度カテーテルをしたかどうか、再発予防の薬を変更したかどうかも調査した。薬を飲む人では、薬を変更したかどうかを調査した。それぞれのグループで上記のことが起こるまでの時間を比較した。

T) ランダム化比較試験(カテーテルになるか薬を飲むかは無作為に割りつけられた)

結果)カテーテルアブレーション群では66%の人で、上記の出来事が9か月以内に起こらなかったのに対し、薬群では16%の人しか再発や薬変更がなかった(ハザード比0.30; 95% 信頼区間, 0.19-0.47; P < .001)。症状が消失する人の割合や、心房細動が再発しない人の割合も同様の結果であった。
なお、患者さんの平均年齢は55,7歳、心房細動にかかっている期間は平均5.7年、それまで飲んでいた薬は平均1.3剤であった。

また副作用として、カテーテルアブレーションでは5例に合併症(4.9%、心のう液、肺水腫、肺炎、血管の合併症、心不全)がおきた。薬群では2例に重大な別の不整脈、3例に薬剤を中止すべき副作用が出た。

###カテーテルアブレーションのほうが、薬をずっと飲むよりも、発作性心房細動の症状や再発を抑えることは、これまで  いくつかの研究で報告されています。今回の研究は、心房細動の再発を電話伝送で確認するなど、これまでより厳密な方法を用いて、これらの研究をより確かにするものです。

論文を読むとき、大切なポイントの一つに、どんな人に適応できるということがあります。心房細動と一口に言っても、高齢者の方、発作の少ない方、薬を飲んだことのない方などその特徴は人それぞれでしょう。この論文は、55歳前後で、5年間心房細動を自覚しており(半年に3回くらい発作あり)、薬を1.3剤くらい飲んでも効かない、心不全はない、というような患者さんを想定しての結果だということをまず押さえてください。

この論文の問題点としては、9ヶ月くらいしかフォローしていない、症例数が少ない、カテーテルアブレーションの方法が一定でない、などがありますが、それを考慮したうえで、これまでの研究を合わせて検討しますと、やはり症状の改善には、カテーテルアブレーションのほうが有効であると言えるかもしれません。

しかしながら、もう一度繰り返しますが、こうした効果はあくまで病脳期間が5年くらいで発作が時々起り、50代くらいの人に当てはまるものであり、これよりも長い期間症状のある人や、高齢の人では必ずしも当てはまらないと思われます。

薬か手術か、という選択は医療現場で常に悩ましい問題です。いつの場合でも医療行為は、
(それをすることで得られる利益)>(それをすることでおこるリスク)
の場合に選択されます。カテーテル手術は、大変少ない頻度とはいえ重大な合併症がおこるリスクがあり、それに加え体に管が入ることの抵抗感、が加味され、上の式の右項が大きく感じられるため、なかなか簡単には意思決定できない問題をはらんでいます。

論文(英文)はこちら
by dobashinaika | 2010-02-04 00:04 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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