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BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)は心房細動発症予測の助けとなる

 本ブログの題名にある、心房細動は、私が以前から最も慣れ親しんできた不整脈です。病気に”慣れ親しむ”というのも変ですが、勤務医時代からいろいろなパターンの心房細動の患者さんに接してきて、まさに1例たりとも同じ心房細動はないことを痛感しています。医者としての経験を積めば積むほど、患者さんの持つ多様性、一回性を認識させられます。
 一方、世界には数多くの医学雑誌があり、毎日たくさんの医学論文が発表されます。昨今高齢化社会の進行とともに、心房細動に関する論文もかなり増えてきています。医学論文(というより科学論文全般)はたくさんの同じような患者さんを集め、それらに共通のある特徴を見出すことを目的としています。論文を読めば読むほど、同様疾患を持つ患者の類似性、共通性を認識させられます。
 患者さんに接する方向と、論文を読む方向は一見全く正反対です。しかしだからといって、論文を読むことが無意味であるわけではありません。たくさんの患者さんに共通する同一性を認識することこそ、逆に個々の患者さんの相違が浮かび上がってきます。論文を読むと、一人一人の患者さんの持つ特異な点、注意すべき点がより明確となります。

 と、前置きが長くなりましたが、このブログの題名の手前もありますので、今後多少なりとも、心房細動に関する最新の医学研究について、世界の代表的な医学雑誌を拾い読みし、できるだけ専門家でない人にもわかりやすい形で紹介していきたいと思います。
 なにぶん、診療の合間にアップしますので多少の遅れや、翻訳の若干の誤りはご容赦のほどを...

ではまず、心臓病のトップジャーナル”Circulation"誌電子版の情報から

3120人の一般住民(平均年齢58.4歳)を約9.7年間フォローアップし、10種類の血液検査の数値と、心房細動の発症との関係を調べた。

主な検査項目は次の通り
BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド;心臓の働きの指標))
CRP(C反応性タンパク;炎症の指標)
D-ダイマー(血液の固まりやすさの指標)
PAI-1(血管内皮の働きの指標)
レニン、アンギオテンシン(血圧上昇に関係するホルモン)
尿アルブミン(尿中の微量のたんぱく)

このうちBNPとCRPが心房細動の発症を予測する因子であった。すなわちBNPあるいは、CRPが高い人ほど心房細動が新たに発症した。BNPが高い人は低い人に比べて1.62倍、CRPが高い人は低い人に比べて1.25倍心房細動が発症しやすかった。BNPを検査に追加することで心房細動を予測力を示すC-統計量は確実に増加した(0.78→0.81).

BNPは心房細動発症の予測因子であり、これまでの検査に追加することで、心房細動のリスク評価をより確かにする。

###どんな人が心房細動になりやすいのか、発病する前にそれがわかれば、予防戦略が立てやすくなります。比較的若いうちから心房細動を発症する方も、当院に通院されておりますが、そのような方を、発症する前にある程度予測できれば大変役に立つでしょう。
これまでこの研究と同様にアメリカのフラミンガム地区住民を対象とした追跡調査で、心房細動の予測因子として、年齢、血圧、左室肥大、糖尿病、心不全などかわかっています。今回の研究はこれらに加えて、血液検査で簡単にわかるBNPも心房細動発症を予測する助けになることを示しています。BNPは心臓の働きが低下している人ほど高くなる、心臓から分泌されるホルモンで、一般の診療所でも簡単に測ることができます。ただし、論文執筆者も述べているように、まだサンプル数が少なく本当に利用できるかどうかはより多くのデータ蓄積が必要です。
また、当論文はまだインターネット上の発表のみであり、BNPがどのくらいであれば心房細動が発症しやすいのかの詳しい数値は、今後明らかになると思われます。

論文のまとめ(英文)
  
by dobashinaika | 2010-01-14 23:28 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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