”夏の夜長”の読書
7月、8月も睡眠薬代わりに寝床本(と勝手に呼んでいる)をつまみ読みした。以下はその感想など(読書日記代わりにブログを使ってます。すみません)。
まず最近マイブームのリスク・確率本から、ダン・ガードナー「リスクにあなたは騙される」(早川書房)。基本的には理性と感情の対立概念を軸に、リスクを心理学、行動経済学から読み解くのであるが、次々に示される数多くのエピソード、データ、雑学などが他の書物より格段に説得力のあるものにしている。リスク認知が「頭」と「腹」のせめぎあいであることを改めて痛感。
次に確率、統計をおさらいするのに適した本として飯田泰之「考える技術としての統計学」(NHKブックス)、小島寛之「確率的発想法」(NHKブックス)。前者で回帰分析の原理を改めて整理できた。また後者を読むと「確率」概念を根本から理解できる。コモン・ノレッジ、つまり「集団としての知識」が「個人の知識を足し合わせたもの」と同一ではない、ジョン・ロールズの「無知のヴェール」においては「自分に降りかかる確率においても無知である」という言説に、なるほどと思うことしきり。
眞淳平「人類が生まれるための12の偶然」(岩波ジュニア新書)はビッグバンから太陽系、月、地球の成り立ち、水をはじめとする物質のはじまり、地球における生命と人類誕生の歴史まで高校生レベルに分かるように解きほぐされており、快感を持って読むことができた。
「日本の論点」編集部「その先が読めるビジネス年表」(文藝春秋)は私のような経済音痴が読むのに最適で、最近世の中で起こっていることの最低限を概観できた。
その勢いでわかりやすさを重視し細野真宏「「未納が増えると年金が破たんする」って誰が言った?」(扶桑社新書)を読んだが、わかりやす過ぎてもっと別のソースも読みたくなった。ただ著者のいう「数学的思考力」であるが、演繹法と帰納法(仮説演繹法)のことを指しており、これ自体は科学的作法のABCである。Amazonの本書に対する書評等を見るとこうした科学に関する基本的理解をもっと一般に知らしむべきであることを痛感する。
石川輝吉「カント 信じるための哲学」(NHK出版))はカントのおさらいをしようと思って読んだが、むしろ原著「純粋理性批判」(平凡社ライブラリー)をまた読みたくなってしまった。高校以来あちこちつまみ読みはしているものの通読したことが一度もないので、これを機会にトライしてみようか、と一瞬思った。
最後にカント哲学者の中島義道とそれと正反対な見解を持つ小浜逸郎「やはり、人はわかりあえない」(PHP新書)。私は両者とも好きであり、著作はどちらもほとんど読んできたが、その二人の対決とあって、最近では一番面白く読んだ。中島氏は小浜氏の著作に対し、「読み進むごとにイライラが募り、でも次のものを読みたくなる。」と評しているが、私にとって中島氏の著作こそその形容が当てはまる。氏の吐き出す言葉はそれだけ毒をもっているが、その毒を中和するのでなく、毒の成分を分析し、むしろ毒性など少ないあるいは毒を装った嗜好品であるとしてたしなめるのが小浜氏である。小浜氏の論理は「そうだよなー」といつも納得させられるが、でも中島氏の「毒」も味わってみたいのである。
「秋の夜長」ならぬ「夏の夜長」も本がそのときの隙間を埋めてくれる。時に埋められすぎて寝不足になるのが悩みだが。。。
まず最近マイブームのリスク・確率本から、ダン・ガードナー「リスクにあなたは騙される」(早川書房)。基本的には理性と感情の対立概念を軸に、リスクを心理学、行動経済学から読み解くのであるが、次々に示される数多くのエピソード、データ、雑学などが他の書物より格段に説得力のあるものにしている。リスク認知が「頭」と「腹」のせめぎあいであることを改めて痛感。
次に確率、統計をおさらいするのに適した本として飯田泰之「考える技術としての統計学」(NHKブックス)、小島寛之「確率的発想法」(NHKブックス)。前者で回帰分析の原理を改めて整理できた。また後者を読むと「確率」概念を根本から理解できる。コモン・ノレッジ、つまり「集団としての知識」が「個人の知識を足し合わせたもの」と同一ではない、ジョン・ロールズの「無知のヴェール」においては「自分に降りかかる確率においても無知である」という言説に、なるほどと思うことしきり。
眞淳平「人類が生まれるための12の偶然」(岩波ジュニア新書)はビッグバンから太陽系、月、地球の成り立ち、水をはじめとする物質のはじまり、地球における生命と人類誕生の歴史まで高校生レベルに分かるように解きほぐされており、快感を持って読むことができた。
「日本の論点」編集部「その先が読めるビジネス年表」(文藝春秋)は私のような経済音痴が読むのに最適で、最近世の中で起こっていることの最低限を概観できた。
その勢いでわかりやすさを重視し細野真宏「「未納が増えると年金が破たんする」って誰が言った?」(扶桑社新書)を読んだが、わかりやす過ぎてもっと別のソースも読みたくなった。ただ著者のいう「数学的思考力」であるが、演繹法と帰納法(仮説演繹法)のことを指しており、これ自体は科学的作法のABCである。Amazonの本書に対する書評等を見るとこうした科学に関する基本的理解をもっと一般に知らしむべきであることを痛感する。
石川輝吉「カント 信じるための哲学」(NHK出版))はカントのおさらいをしようと思って読んだが、むしろ原著「純粋理性批判」(平凡社ライブラリー)をまた読みたくなってしまった。高校以来あちこちつまみ読みはしているものの通読したことが一度もないので、これを機会にトライしてみようか、と一瞬思った。
最後にカント哲学者の中島義道とそれと正反対な見解を持つ小浜逸郎「やはり、人はわかりあえない」(PHP新書)。私は両者とも好きであり、著作はどちらもほとんど読んできたが、その二人の対決とあって、最近では一番面白く読んだ。中島氏は小浜氏の著作に対し、「読み進むごとにイライラが募り、でも次のものを読みたくなる。」と評しているが、私にとって中島氏の著作こそその形容が当てはまる。氏の吐き出す言葉はそれだけ毒をもっているが、その毒を中和するのでなく、毒の成分を分析し、むしろ毒性など少ないあるいは毒を装った嗜好品であるとしてたしなめるのが小浜氏である。小浜氏の論理は「そうだよなー」といつも納得させられるが、でも中島氏の「毒」も味わってみたいのである。
「秋の夜長」ならぬ「夏の夜長」も本がそのときの隙間を埋めてくれる。時に埋められすぎて寝不足になるのが悩みだが。。。
by dobashinaika
| 2009-08-15 13:43
| 開業医生活
土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
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筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
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