平成19年東北大学大学院医学系研究科病院管理学教室同窓会会報 より
-PDAから手帳へ-
勤務医から開業医に転身し、何もかもが私にとって変化したが、開業3年目にしてはじめて、大きく変化したことがある。
それまで愛用していたPDAを手放し、普通の手帳に回帰したことである。
勤務医時代にSONYのクリエ→SHARPのザウルスとずっと電子手帳の恩恵を受けてきた。
勤務医時代最も役立ったのは、「今日の治療薬」「UpToDate」などの医療知識を本を広げることなく入手できることであった。
しかしいまやそれも必要ない。
ほぼ一日中診察室の椅子に座っての生活であるから、デスクトップパソコンで事が足り、PDAの手軽さは必要ないのである。
変わりに、何かにつけメモをする作業が多くなった。
問診をしているとき、身体所見をとっているとき、臨床上のいろんな疑問がわいてくる。
また突如保健医療上の問題点に気づくこともある。
そのようなときPDAにスタイラスで記入するのは大変労力がいる。
やはりすばやく物事を書き取るのは、ペンに紙なのである。
これはデジタルツールとアナログツールという好みの問題ではない。
何か他の媒体に自分の頭に浮かんだ物を残しておく、そうした知的欲求が生じやすい環境には、手帳が適合しやすいということである。
思えば、勤務医時代はそのような欲求が生じる余裕も時間もなかった。
ひたすら目の前の現象(患者)に、いかに効率的に反応するかというすべを、強要されるような環境なのである。
そのような環境では、すばやく知識の断片が得られる電子機器はお手軽で便利である。
しかしながら、ゆっくり自分のアイディアや考えを残す、まとめるといった作業には向かない。
情報のアウトプットには手帳、インプットにはPDAが適する、ということだろうか。
勤務医がなだれを打って開業医に転身する時勢であるが、情報を手際よく受け止めすばやく反応せざるを得ない場面の連続、上記の文脈で言えば、PDAフレンドリーな作業環境に、皆が疲れているのではあるまいか。
ゆっくり頭の中を整理する、自分の感情も含めて何らかの形で外に出す、そうした脳内のもやもやを吐き出す作業に費やす時間も余裕もない。
そうした肉体的だけでなく知的にも殺伐とした状況に多くの勤務医が置かれている。
われわれは知恵を出し合って、こうしたPDA的脊髄反射的環境から手帳的大脳皮質的環境へと勤務医を含めたすべての医療従事者を解放する手立てを考える必要がある。
かく言う私はと言えば、散々悩んだ挙句システム手帳を買って使ってはいるものの、すぐに新製品のイーモバイルが気になって買うか買うまいかで夜も眠れないといった状況である。
やっぱり今になっても脊髄反射的生活からなかなか脱却できないでいるのである。
勤務医から開業医に転身し、何もかもが私にとって変化したが、開業3年目にしてはじめて、大きく変化したことがある。
それまで愛用していたPDAを手放し、普通の手帳に回帰したことである。
勤務医時代にSONYのクリエ→SHARPのザウルスとずっと電子手帳の恩恵を受けてきた。
勤務医時代最も役立ったのは、「今日の治療薬」「UpToDate」などの医療知識を本を広げることなく入手できることであった。
しかしいまやそれも必要ない。
ほぼ一日中診察室の椅子に座っての生活であるから、デスクトップパソコンで事が足り、PDAの手軽さは必要ないのである。
変わりに、何かにつけメモをする作業が多くなった。
問診をしているとき、身体所見をとっているとき、臨床上のいろんな疑問がわいてくる。
また突如保健医療上の問題点に気づくこともある。
そのようなときPDAにスタイラスで記入するのは大変労力がいる。
やはりすばやく物事を書き取るのは、ペンに紙なのである。
これはデジタルツールとアナログツールという好みの問題ではない。
何か他の媒体に自分の頭に浮かんだ物を残しておく、そうした知的欲求が生じやすい環境には、手帳が適合しやすいということである。
思えば、勤務医時代はそのような欲求が生じる余裕も時間もなかった。
ひたすら目の前の現象(患者)に、いかに効率的に反応するかというすべを、強要されるような環境なのである。
そのような環境では、すばやく知識の断片が得られる電子機器はお手軽で便利である。
しかしながら、ゆっくり自分のアイディアや考えを残す、まとめるといった作業には向かない。
情報のアウトプットには手帳、インプットにはPDAが適する、ということだろうか。
勤務医がなだれを打って開業医に転身する時勢であるが、情報を手際よく受け止めすばやく反応せざるを得ない場面の連続、上記の文脈で言えば、PDAフレンドリーな作業環境に、皆が疲れているのではあるまいか。
ゆっくり頭の中を整理する、自分の感情も含めて何らかの形で外に出す、そうした脳内のもやもやを吐き出す作業に費やす時間も余裕もない。
そうした肉体的だけでなく知的にも殺伐とした状況に多くの勤務医が置かれている。
われわれは知恵を出し合って、こうしたPDA的脊髄反射的環境から手帳的大脳皮質的環境へと勤務医を含めたすべての医療従事者を解放する手立てを考える必要がある。
かく言う私はと言えば、散々悩んだ挙句システム手帳を買って使ってはいるものの、すぐに新製品のイーモバイルが気になって買うか買うまいかで夜も眠れないといった状況である。
やっぱり今になっても脊髄反射的生活からなかなか脱却できないでいるのである。
by dobashinaika
| 2007-03-01 08:00
| 開業医生活
土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
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筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
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