AF burden :新たなアウトカム予測因子と治療ターゲット その1:EHJ誌より
【イントロダクション】
・心房細動由来の心血管イベントリスクは、 併存疾患に依存すると考えられていたが,最近の臨床試験の結果はそれを覆す。
・早期リズムコントロール治療のに関するエビデンス、心房細動の持続時間を短くすることで転帰を減少させることができるという概念を裏付けている。
・まれで短いエピソードのデバイス検出心房細動(DDAF)患者では、抗凝固療法を行わなくても脳卒中の発症率は低く(1.1~1.2%/年)、抗凝固療法の効果は弱い。
【心房細動の自然経過と退縮】
・新しく心房細動と診断された患者の初診は、発作性、持続性、あるいは「初発」が1/3ずつを占める
・1 年に発作性から持続性に進行する患者は 20 人に 1 人程度 (5%/ 年)
・併存疾患のない発作性心房細動患者の半数以上は 25 年間進行しない
・多くの心房細動患者は 1 年間の経過観察で再発を示さず、 中には持続性心房細動の後に発作性心房細動を示し、 心房細動のパターンが後退する例さえある
・発作性心房細動患者の平均心房細動負荷は、 植込み型心電図モニターや毎日の心電図モニターを使用した場合 約11%
・RACE-Vでは、一部で発作性が非発作性パターンに進行し(5.5%/年)、全体的な心房細動負荷は低いままであった。
・EAST-AFNET 4試験において、通常治療群でもの60%が2年後に洞調律であったことや、心房細動アブレーションが12ヵ月の待機期間後も有効性を維持していることは、心房細動の再発や進行が緩徐かつ多様であることの証明
・概念的には、非発作性心房細動患者の心房細動負荷は100%であるべきであるが、自然退縮により不整脈負荷は70~100%に減少する (図1)
<デバイスによる心房細動の検出>
・micro-AF、不顕性心房細動、心房高頻度エピソードと呼ばれる短く連覇する心房性不整脈は、心房細動、脳卒中、死亡のリスクと関連している
・NOAH-AFNET 6試験では、登録時に記録された心房性高頻度エピソードのほとんどすべて(97%)が、経験豊富なコアラボによって心房細動であると確認された
・DDAFは、心電図で診断された心房細動の10倍以上(デバイスを植え込み、脳卒中の危険因子を有する患者の約30%)発見されている
・LOOP試験では、心房細動負荷の中央値は0.13%であり、患者の16%は24時間以上持続するエピソードに進行したが、22%は過去6ヵ月以上のモニタリングでエピソードを繰り返さなかった
【心房細動の負荷、 併存疾患、 転帰の相互作用】
・併存疾患は心房細動の進行を促進する。CHADS2スコアが高く,併存疾患が多い患者ではDDAFの負担が大きい
・機器データと電子カルテの転帰を関連付けた大規模観察研究では、DDAFの負担が高く、CHA2DS2-VAScスコアが非常に高いことが、脳卒中/全身性塞栓症のリスクが高いことと関連している
・DDAFと併存疾患の間の相互作用は微妙であり、おそらく直線的ではない
・同時に、心房細動は心不全、脳卒中、心血管死のリスクを高める(表1)。
1)心房細動と左室機能 :
・心房細動は心室機能を直接障害し 、 不整脈誘発性心筋症を引き起こす可能性があるが、 心房細動アブレーションにより洞調律を正常に戻すと回復する
・心不全と心房細動負荷の間には強い双方向の関連があり、 心不全が心房細動を助長することもあればその逆もある
・心房負荷軽減目的のリズムコントロール/アブレーションはHFrHFの心不全イベントを軽減
・HFpEFに関しては試験が進行中
2)心房細動と脳卒中:
・左心耳閉塞術と早期リズムコントロール療法は、それぞれ抗凝固療法に加えて脳卒中を3分の1減少させる
・脳卒中後の急性期には心房性不整脈の頻度が高い
3)心血管死:
・心房細動に起因することもあれば、心房細動とは無関係に起こることもある
・抗凝固療法の試験でみられた死亡率の低下は、脳卒中の予防が心血管死を減少させることを示唆している。
・心血管死や総死亡に対する早期リズムコントロール9や心房細動アブレーションの効果は、おそらく脳卒中や心不全を予防することによる
・全体として、心血管死に対する心房細動のこれらの効果は、心血管死を引き起こす他の疾患と競合しており、心血管死に対する心房細動の寄与は、他の心血管疾患の数、強度、治療の質に依存する。
心房細動は、症状、QOL、その他の転帰にも影響を及ぼす。認知症やQOLへの影響については、別のところで取り上げているので、本稿では詳しく述べない。
【リズムコントロール療法は心房細動の負担を軽減し、 心房細動関連の転帰を予防する】
・心房細動アブレーションは抗不整脈薬に比べ、心房細動の再発を予防し、心房細動再発までの期間を延長し、心房細動の負担を軽減する。また、発作性心房細動から持続性心房細動への進行を遅らせる。
・早期リズムコントロールの安全性と有効性は、大規模医療データセットのいくつかの非ランダム化解析で再現されている
・これらは、心不全で駆出率が低下した患者や心臓移植待機患者における心房細動アブレーションの転帰改善効果と一致している。
・同様に、ATHENA試験では、ドロネダロンによるリズムコントロール療法が脳卒中の減少を含む転帰を改善する効果がすでに認められている
・より古いAFFIRM試験とRACE試験の中立的な結果は、明らかに安定した洞調律でリズムコントロールを受けている患者における経口抗凝固療法の中止と、前世紀に行われていた抗不整脈薬療法の催不整脈作用の増強によって説明できる。
・AF-CHF試験では、心房細動で左室駆出率が35%未満の患者において、アミオダロン群と非リズムコントロール群とが比較され、心血管死における差は認められなかった
・心房細動におけるアミオダロンの中立的な効果は完全には理解されていないが、特にCASTLE-AF試験やCASTLE-HTx試験の結果との関連で考えると、アミオダロンによる心房細動負荷の減少が心血管イベントを減少させるのに十分でなかった可能性がある
・さらに、AF-CHF の主要転帰である心血管死は、当時適用されていた利用可能な心不全治療を考慮すると最も感度の高い主要転帰パラメータではなかった(前節を参照)
・リズムコントロールによる転帰の減少効果は、合併症の負担が大きい患者(CHA2DS2-VAScスコア4以上)においてより顕著であり、その中の2つリスクの相互作用を示唆している
・併存疾患負荷の高い患者 に対して、早期のリズムコントロールを系統的に行いその後心房細動負荷を下げると、心血管系の転帰がより顕著に低下する
・同様に、心房細動アブレーションと薬物療法との差は、心不全を有し合併症の負担が大きい患者においてより顕著である
<症状と生活の質>
・これに対する効果については抗不整脈薬よりも心房細動アブレーションの方が顕著である
・どちらの治療法を用いても長期的なリズムコントロールが可能である
・明らかに、 心房細動に関連する症状や心理的苦痛、 QOL の他の領域 を軽減することは、 心房細動患者を含むすべての慢性心血管病患者 において、 重要な治療目標であることに変わりはない
・症状の軽減が心房細動の負担軽減に続くことは考えられるが、 この複雑な治療領域では、他の機序や因子が相互に作用する。
### これまで心房細動に関係する心血管イベント,たとえばStrokeにしても心不全にしても併存する疾患に依存して増えると考えられてきました。その最たるものがCHADS2スコア,CHA2DS2-VAScスコアです。しかし昨今AF burden=心房細動負担という新たな概念が登場しました。
どのくらいの持続時間,頻度,ばらつきで発作が出現するのかが,心房細動のイベント発生や予後にまで影響し,またアブレーションなどの治療選択に関与するという報告が相次いでいます。
このため,最近では従来のリズム治療≦レート治療からむしろリズム治療≧レート治療,もしくはリズム治療>レート治療という状況に変わってきています。
それは検出デバイスの発達と,カテーテルアブレーション技術の進歩によるところが大きいと思われます。
ただそのburdenの測定法がやはり確立されておらず,Device-detected AFという新しい心房細動の分類ができるほど,デバイスでのburden測定が重要視されてきています。逆に言うと,普通の発作性心房細動の正確なbruden測定はなかなか困難であり,さまざまなデバイスを組み合わせて判断するというのが現状かと思われます。
次回は残りの抗凝固療法とAF burdenの関係など お話します。
$$$
by dobashinaika
| 2024-08-15 14:46
| 心房細動:疫学・リスク因子
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