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左心耳閉鎖術に関するコンセンサス・ステートメントのまとめ

Society for Cardiovascular Angiography & Interventions/Heart Rhythm Society (SCAI/HRS) から,左心耳閉鎖デバイスについてのコンセンサスステートメントが出ています。ACCのまとめサイトより。


1. 心房細動(AF)は虚血性脳卒中のリスクを4~5倍上昇させ、米国で年間70万件発生する脳血管障害の25%を占めると言われている。

2. 歴史的に、心房細動における脳卒中予防の標準治療は経口抗凝固療法(OAC)であったが、患者、処方者、医療資源の問題が多く、このセッティングでのOAC使用は制限されている。この治療ギャップのために、非弁膜症性心房細動患者における脳卒中予防のための有効かつ安全な非薬物療法に対するunmet clinical needが生まれ、LAACの分野に拍車がかかっている。

3. 経カテーテル的LAACは、血栓塞栓リスクの高い非弁膜症性心房細動患者であって、長期のOACが適さず、LAACの恩恵を受けられるだけの余命(最低1年以上)とQOLがある患者に適切である。意思決定の共有のために、患者と医療者の話し合いが必要である。過去20年間で、経カテーテル血管内治療(LAAC)の分野は急速に拡大し、無数の機器が承認または臨床開発中である。

4. LAACを実施する医師は、50回以上の左側切除術または構造的処置、25回以上の心房中隔穿刺(TSP)を含む経験を有するべきである。インターベンショナルイメージングの医師は、LAACを単独でサポートする前に、25回以上のTSPをガイドする経験を持つべきである。

5. 技能の維持のために、施行医は2年ごとに25回以上のTSPと12回以上のLAACを実施する必要がある。新しいプログラムおよびLAACの経験が浅い医師は、オンサイトの心臓血管外科のバックアップを受けるべきである。

6. LAACの前に、経食道心エコー(TEE)または心臓CTによるベースライン撮影を行うことが推奨される。また、TEEまたは心臓内エコーによる術中画像ガイダンスも推奨される。

7. 静脈アクセス、抗凝固療法、TSP、デリバリーシースの選択と配置、左房圧測定、デバイスの展開など、手技の技術的側面は、特定のLAACデバイスの分類に従って実行する必要がある。術者は、LAACに関連する手技的合併症の回避、認知、管理について熟知している必要がある。

8. 退院前の画像診断では、心嚢液貯留やデバイスの塞栓を除外するために、2次元経胸壁心エコー検査を実施すべきである。数時間の観察でLAAC後の合併症や心嚢液貯留がないことが確認されれば、当日退院が適切であろう。

9. デバイスに関連した血栓は抗凝固療法で治療する必要がある。45~90日間隔で繰り返し撮像を行い、抗凝固療法を中止して消失するかどうかを評価することができる。LAACに関連した異所性心房中隔欠損のルーチンの閉鎖は、実施すべきではない。

10. LAAC後の抗血栓療法として、ワルファリン、直接経口抗凝固薬、抗血小板薬2剤を、検討されたレジメンと各装置の使用説明書に従って、各患者の出血リスクに合わせて処方すべきである。

11. LAAC後45~90日目に、デバイス周囲のリークやデバイス関連の血栓を評価するため、TEEまたはCCTが推奨される。

12.L AACと組み合わせた処置(例:構造的介入、肺静脈隔離)は、進行中のランダム化比較試験からデータが得られていないため、日常的に推奨されていない。
左心耳閉鎖術に関するコンセンサス・ステートメントのまとめ_a0119856_07245065.jpg


### プライマリ・ケア医としては,どんな症例が適応なのかが気になります。
日本の適応基準は,以下のとおりです。
前提として「CHADS2スコアまたはCHA2DS2-VAScスコアに基づく脳卒中および全身性塞栓症のリスクが高く,長期的に抗凝固療法が推奨される患者にのみ考慮されるべきであり,これらの患者のうち以下の要因の1つまたは複数に適合する患者に対して,長期的抗凝固療法の代替として検討される治療である.」があり,その上で
・ HAS-BLED スコアが 3 以上の患者
• 転倒にともなう外傷に対して治療を必要とした既往が複数回ある患者
• びまん性脳アミロイド血管症の既往のある患者
• 抗血小板薬の 2 剤以上の併用が長期(1年以上)にわたって必要な患者
• 出血学術研究協議会(BARC)のタイプ 3 に該当する大出血の既往を有する患者
となっています。

BARCスコアのタイプ3とは以下です。
Type3a:明らかな出血+出血に関連したヘモグロビンの低下3~5 g/dL.明らかな出血に伴う輸血.
Type3b:明らかな出血+ヘモグロビンの低下≧5 g/dL,心タンポナーデ,外科的介入を要する出血(歯科/鼻/皮膚/痔を除く),血管作用薬の静注を要する出血.T
ype3c:頭蓋内出血,剖検,画像検査,または腰椎穿刺により確認されたもの,視力の損傷を伴う眼内出血.
日本の基準は,このBARCスコアが入ってることがポイントです。

ESC2020および米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)2019年AFガイドラインでは,CHA2DS2-VAScが2以上(男性)または3以上(女性)で,出血の既往、転倒リスク、コントロールされていない高血圧、腎不全または肝不全、アルコール使用、抗血小板薬または非ステロイド薬の併用、高リスクの職業、コンプライアンス違反、不安定なPT-INR、OAC不耐性/アレルギー、薬物相互作用を含む出血リスクの増加(例:HAS-BLEDスコア3以上)またはOAC不耐性であることが必要とされています。

デバイスの進歩と,ラーニングカーブで安全性の向上が著しい分野ですが,適応については悩ましいケースがまだあります。術後の抗血栓療法も気になります。胸腔鏡下左心耳切除術との比較も知りたいところです。

左心耳閉鎖術に関するコンセンサス・ステートメントのまとめ_a0119856_07260509.jpeg


by dobashinaika | 2023-06-10 07:29 | 心房細動:左心耳デバイス | Comments(0)


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