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心房細動早期発見の現状と課題:系統的スクリーニングとコンシュマー主導型スクリーニングの組み合わせが有用:AFNET/EHRAコンセンサス会議より

2021年10月にハンブルグで2日に渡って行われた,Atrial Fibrillation NETwork (AFNET) と the European Heart Rhythm Association (EHRA)の第8回合同コンセンサスカンファランスの報告です。箇条書きでまとめました。


心房細動の早期発見とリズムコントロールに関するもので,いずれもいま心房細動分野では最もホットな話題です。今回はまず「早期発見ースクリーニング」から。

心房細動スクリーニングの実装

<アプローチ>
1)ESCでは,65歳以上の機会あるごとのスクリーニング(外来受診時ごとの検脈や心電図)とハイリスク者の系統的スクリーニング(定期的なデバイス使用)を推奨

2)機会あるごとのスクリーニング」は,最近のRCTで心房細動検出率を上げないことが示された。
・「系統的スクリーニング」は,2つのRCTで検出率を増加させる(一方はアウトカムも改善)。
・「コンシューマー主導型スクリーニング=スマートウォッチなど」は成長株で,それなりの能力はあるが,高齢者使用の可否,プライバシーや法的問題,なにより過剰診断や治療時期決定において課題あり。

<系統的スクリーニングのエビデンスに基づく実施>
1)75歳以上すべてと,65歳以上でハイリスクの人に医療機関から連絡し,単回心電図,携帯心電計(2週間1日1回),5−7日ホルターを繰り返す。

2)電子カルテや住民登録を使って、年齢に応じてスクリーニングの対象となる参加者を特定し、オンラインアンケートへのリンク(QRコードなど)が付いた手紙を送付

3)65歳以上では,プライマリ・ケア医の協力で併存疾患を同定し,ハイリスク者にECGパッチやPPGベースの脈拍計を郵送。

<コンシューマー主導の心房細動スクリーニング>
1)スマートウォッチなどは偽陽性率が高いことが懸念されるが,これまで大規模試験では比較的少ない。

2)医療資源の利用拡大(負担)につながる。問題として1)医療者による検証 2)心房細動以外の不整脈の検証 3)低リスク者への適応 がある。

3)医療資源の負担とはなるが,広い層への予防啓発やshared decision-makingの浸透という点で意味ある。

<ナレッジギャップ,ハードル>
以下の問題あり
1)臨床判断の問題:1)再診のタイミング 2)脳卒中リスクとなるようなAF burdenの閾値 3)抗凝固薬開始 の意思決定

2)リテラシー,マイノリティの参加,アウトリーチ活動,市民教育

3)経済的保証

### 機会ごとの検脈/心電図は有効かもしれないが,限界がある。系統的スクリーニングとコンシューマー主導スクリーングを組あわせて,治療の必要な心房細動を同定し,ABCパスウェイにいかにつなげるか、そこにはまだ技術的,社会経済的な面で不確定な問題がある。という感じです。

ここ数年で,この分野も全く様変わりしています。この会議は1年半前ですので,さらにコンシューマー主導スクリーニングの普及が進んでいますね。

この会議では,従来のABCパスウェイにも,ついに見直しが入りました。それについては次回まとめます。大変重要です。

心房細動早期発見の現状と課題:系統的スクリーニングとコンシュマー主導型スクリーニングの組み合わせが有用:AFNET/EHRAコンセンサス会議より_a0119856_10423919.jpeg
※一応全文の箇条書きもまとめました。参考までに(番号は本文中の文献番号です)。

【イントロダクション】
・特に高齢者において,検出されない心房細動は,公衆衛生学上重大な負担および,患者家族への重大な影響を与える1,2。
・心房細動がより多く長く続くと、より高い合併症率と関連するはずだと直感的に思われるが、この仮定をデータで裏付ける明確な生物学的勾配には欠けている3。
・スクリーニングする集団とスクリーニングのモード,分析が定義されている必要がある4,5。
・EAST-NET4試験では,早期のリズムコントロール療法のより、心房細動と心血管危険因子を持つ患者の心血管アウトカムや死亡率を改善できることが示されている4。
・新規心房細動への断固としたリズムコントロールが望ましいが,それには再発時のためのレートコントロールも含まれる。
・心房細動患者における認知機能評価にも注目が集まっており、認知機能障害が治療コンプライアンスに与える悪影響も指摘されている6。

・トランスレーショナルリサーチにおいて,心房心筋症という概念が提示されている。
・AIベースの情報統合は有望だか,データの公正かつ安全な使用と法的障壁の克服が必要。

・第8回AFNET/欧州心拍協会(EHRA)コンセンサス会議:不整脈・心不全専門医、心房細動患者、患者団体、薬理学者、翻訳科学者、一般開業医、神経科医、看護師、疫学者、公衆衛生医学コンサルタント、臨床試験医、医療経済学者など83名の国際的学際専門家。ドイツ、ハンブルク。2日間、全体会と分科会で議論

【心房細動スクリーニングの実装】
スクリーニングのアプローチ
・2020年,ESCガイドラインのスクリーニングに関する推奨は以下1:
1)65歳以上の高齢者における心房細動の機会あるごとのスクリーニング(クラスI、レベルB)
2)75歳以上、または脳卒中のリスクが高い高齢者における心房細動の系統的スクリーニング(クラスIIa、レベルB)
・スクリーニング以外の目的で受診した際の機会あるごとの「スクリーニングの推奨:2005 年以前に英国で実施された脈拍触診を用いた研究に基づくもの

・<プライマリケアにおける機会あるごとのスクリーニング>は、 65 歳以上の高齢者における心房細動の検出を増加させないことが示された8。
・VITAL-AF(Screening for Atrial Fibrillation Among Older Patients in Primary Care Clinics)試験では、定期的な診察時に単一リードのハンドヘルド ECG を使用した場合、85 歳以上の患者で検出が増加するシグナルを除き、心房細動検出に差がないことが証明されている9。
・MonDAFIS(Systematic monitoring for detection of atrial fibrillation in patients with acute ischaemic stroke)試験では,急性性虚血性脳卒中の入院患者に、最長7日間入院してホルター心電図を追加記録するモニタリングと通常ケアを比較したが,同様の見解が示された10.
・これらの研究は、機会的スクリーニングのよく知られた欠点=ハイリスク層を見逃す可能性のあることを示唆する。

・<体系的な心電図スクリーニング>は、未受診患者を含めることで心房細動の検出を改善できることが、最近の 2 つのRCTで実証されている11,12。
1)STROKESTOP 試験では、75-76 歳の人対象に、携帯心電計で毎日 2 週間記録したが,死亡、脳卒中、重篤な出血の複合転帰が対照群と比較して減少した。
2)LOOP試験では、3年間植込み型LOOPレコーダーを使用し,6分以上の心房細動が検出された場合経口抗凝固薬(OAC)療法が開始された。心房細動の検出とOACの開始が3倍に増加したにもかかわらず、対照群と比較して脳卒中と全身性塞栓症のアウトカムが改善することはなかった。

・心房細動を検出するアルゴリズムを組み込んだ多くの医療機器の普及で。消費者主導のスクリーニングは、成長傾向13-15。
・スマートウォッチなど検出の概念的な能力は示されている。
・しかし技術へのアクセス、高齢者集やハイリスク集団での使用、プライバシー、法律、データ転送の問題、心房細動診断の検証、そして重要なことは、臨床的意義のない不整脈を過剰診断する可能性,治療を開始する時期に関する適切な情報(どう判断するかなどの問題あり。
・短くて稀な心房性不整脈を検出することの治療的意義が理解され、高齢者集団における使いやすさと信頼性が改善されれば、心房細動スクリーニングを強化するのに適した方法となるかもしれない16,17。

【心房細動の系統的スクリーニングのエビデンスに基づく実施】
・第8回AFNET EHRAコンセンサス会議の参加者は、心房細動の体系的なスクリーニングを実施するために、さまざまな医療システムに適した、シンプルでスケーラブルかつ実用的な心房細動スクリーニング方法を提案している。
・コンセンサス会議の専門家は、75 歳以上のすべての人に系統的なスクリーニングを推奨し、65-74 歳で追加の危険因子 (例: 心不全、高血圧、糖尿病、脳卒中/TIA、心筋梗塞、下肢動脈疾患、NT-proBNP≧125 ng/L,フォトプレチスモグラフィー上陽性(図1))を持つ人には系統的なスクリーニングを考慮することができるとしている。
・スクリーニングの対象となる個人は、担当医療機関から、地域の都合や慣行に基づいて、手紙、電子メール、電話、またはテキストメッセージで招待される可能性がある。
・理想的には、この招待状には、心房細動スクリーニングの潜在的な利益と害に関する情報を、参加者の母国語で、簡単な表現で記載することが望ましい。

・スクリーニングの方法は、利用可能な医療資源にマッチさせる必要がある1。
・対面の場合、例えばリズムストリップや12誘導心電図を用いた1回のスクリーニングで心房細動を診断することができる。あるいは、5-7 日間(最大 14 日間)の連続 ECG パッチまたはホルター記録を実施することもできる18 。連続モニタリングでは、現行のガイドラインによれば、30 秒以上続く心房細動エピソードが診断の対象となる19。

・心房細動の発見後、診断確定、予後評価のために、心房細動管理に精通した医療チームによる、対面または遠隔での医療評価が必要である。
・評価では、患者情報、CHA2DS2-VASCスコアの確認、その他の合併する心血管疾患や危険因子の検出を行う。その後、併存する心血管疾患や危険因子の診断と治療を考慮し、ガイドラインが推奨するアプローチのすべての要素を取り入れた包括的な心房細動管理を開始するこ。
・このような患者では、検出前のリスクのカテゴリーごとに、繰り返しスクリーニング/モニタリングの時間枠を設定する必要がある。
・心電図を用いた反復スクリーニングの価値とフォローアップ(FU)の理想的な時点はまだ不明であり、将来の試験で調査する必要がある20-22。

・COVID-19後、心房細動スクリーニングのデジタルアプローチが急速に開発され、好ましい方法になる可能あり。系統的な心房細動のスクリーニングは、完全にデジタル技術で実現可能:
・ 電子カルテや住民登録(あれば)を使って、年齢に応じてスクリーニングの対象となる参加者を特定し、オンラインアンケートへのリンク(QRコードなど)が付いた手紙を送って、個人がスクリーニングプログラムに参加する意思があるかどうかを確認することができる。
・また、65~74歳の個人には、併存疾患に関する質問に答えてもらう(必要であれば一般開業医の助けを借りる、図1)。その後、ECGパッチやPPGベースの脈拍計などのスクリーニング機器を参加者に郵送して記録し、医療提供者に返却してデジタル経路を完成させることができる。あるいは、参加者がすでに入手している機器を利用することも可能である。
・心房細動が検出され、記録で確認された場合、参加者は、A-B-Cパスウェイに従って推奨通りの治療を実施するために医療専門家との予約を取るように招待され1、これはまたデジタル予約として実施できる可能性もある。

【コンシューマー主導の心房細動スクリーニング】
・自分の機器を用いる、すなわち消費者主導のスクリーニングでは、機器による偽陽性が系統的スクリーニングよりも高頻度かもしれない。
・偽陽性の割合は、機器の仕様やそのアルゴリズム、個人における検査前の確率に依存する。そのため個人のリスクや認識されていない症状などを考慮した確認が必要である。
・大規模なApple13、Huawei23、Fitbit (NCT04380415) Heart Studiesは、スクリーニング参加者の迅速かつ全国的な募集の可能性を示し、偽陽性の割合が低いことを実証している。しかし参加者の大半は50歳未満であり、脱落率は高かった。
・また、消費者主導の心房細動スクリーニングは、短期的には医療資源の利用拡大につながることが示された。
・まず、医療専門家による確認と検証。第二に、他の不整脈の所見があった場合の検証。第三に、低リスクの人への施行。
・脳卒中リスクのない患者や若年層におけるスクリーニングの意味や効果については、エビデンスが不足している。関係する資源の大きさは不明であり、評価の際に推定する必要がある。
・コンシューマー主導スクリーニングは、ハイリスク者の体系的なスクリーニングプログラムへの入り口となる可能性があるため、資源は相当なものになるかもしれないが、有利な面もある。
・それは、人々を巻き込むこと=心房細動や自分の健康についての管理や学習,予防への意識喚起と,それによってshared decision-makingという概念がより強化される可能性を持っている14。

・コンシューマー主導のスクリーニングによって発見された心房細動の臨床的な意味は不明であり、より専門的な研究が必要である。
・コンシューマー主導のスクリーニングでは、推定される心房細動の負担は、使用する機器によって異なる13-15。
・最近のデータでは、未治療の機会ごとのスクリーニングで検出された心房細動は、臨床的に検出された心房細動と同様の脳卒中リスクを有することが示されている21,25。
・ 心強いことに、LOOP試験で用いられた抗凝固療法は、出血リスクの増加を示さなかったが、脳卒中率は予想よりも低かった12。

【知識のギャップとハードル】
・モニタリングによる検出と,以下のような臨床判断,社会情勢とのギャップがある。
・以下の臨床的判断についての情報不足:1)再診の理想的なタイミング 2)脳卒中リスクの上昇についての心房細動負荷の閾値 3)経口抗凝固療法(および他の心房細動治療)の開始
・デジタルヘルスリテラシー、マイノリティの参加、アクセスの平等26-28、参加を可能にするデジタル機器、アウトリーチ活動、地理的距離の克服29、心房細動に対する認識、教育が重要
・経済的な補償も必要がある。世界のほとんどの地域では、心電図さえも広く普及しておらず、脈拍触診を代替手段として考慮しなければならないのに、今日、デジタル心房細動スクリーニングを進めることは、特権である。

$$$
心房細動早期発見の現状と課題:系統的スクリーニングとコンシュマー主導型スクリーニングの組み合わせが有用:AFNET/EHRAコンセンサス会議より_a0119856_10540722.jpg


by dobashinaika | 2023-04-09 10:58 | 心房細動:診断 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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