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NOACの10年:ワルファリンは時代遅れ?:EHJ誌より

あけましておめでとうございます。
今年も目についた論文をゆっくりと読んでいきます。
まずはEHJに昨年掲載のNOAC総説から


【non-vitamin K antagonists oral anticoagulantsの歴史ー’New’は未だに本当に’new’か?】

・NOACの略称は‘new oral anticoagulants’(直接トロンビン阻害薬:ダビガトランと3つのXa因子阻害薬:リバーロキサバン,アピキサバン,エドキサバン)をまとめたもの
・当初はDVT(深部静脈血栓症)とPE(肺塞栓)の第III相試験が先行。その後NVAF(非弁膜症性心房細動)における血栓塞栓症予防の試験が完了
・NOACという呼称は不運。すでに最初の試験から20年,上梓されてから数年たち,newのNはdirectのDに変わった
・DOACという略称は考えられたものであり,直接の凝固系抑制作用を間接抑制と区別するけれども,新しい略称としては大きな欠点がある:いくつかの新旧のガイドラインが未だにNOACの略称を使用しているからである。データベースサーチの結果をフォローするためにこの略称は必要なので,この略称は残すべきである
・ただしNOACの定義は,non-Vitamin K oral anticoagulantsに変わった
・最新のESCガイドラインは,VKAからNOACへの変更はクラスIIbからに変わった(TTR70%未満)
NOACの10年:ワルファリンは時代遅れ?:EHJ誌より_a0119856_12055341.png
第III相試験とメタ解析
RE-LT試験:ダビガトラン。ITT解析(非劣性),PROBE法(優越性)
ROCKET-AF試験:リバーロキサバン。二重盲検ーダブルダミー,per-protocol/on treatment解析(非劣性)。全てでなく,一回でも服用歴のある人のみ解析。非劣性のイベントにおいては,安全性の優越性はon treatmentで施行。副次エンドポイントは優越性解析
ARISTOTOLE試験;アピキサバン。主要/副次エンドポイントとも優越性
ENGAGE AF-TIMI48試験:エドキサバン。ITT解析(優越性),OT解析(非劣性)
・ROCKET-AF試験のみ安全性エンドポイントは大出血および非大出血(CRNMB)。他の試験は大出血のみ
・ずべてCHADS2スコア採用。ROCKET-AFとENGAGE AFは2点以上。ROCKET-AFは実質3点以上。RE-LY, ARISTOTLEは1点以上
・平均CHADS2スコア:RE-LY2.1-2.2, ARISTOTOLLE2.1, ROCKET-AF3.5, ENGAGE AF2.8
・ダビガトラン2x150mg,アピキサバン2x5mg:優越性あり
・注意点:直接比較なし。試験対象も一様でない
・以下の図は4試験のメタ解析
NOACの10年:ワルファリンは時代遅れ?:EHJ誌より_a0119856_12092293.png
・ エドキサバンvs他の3剤比較
・対アピキサバン:死亡,心筋梗塞,大出血は同等。大出血,その他の出血,消化管出血はアピキサバンが少ない
・低用量エドキサバンvsアピキサバン:脳卒中/SEはアピで少ない,大出血はエドで少ない
・対ダビガトラン:有効性は低用量ダビガトランとの差はなし。大出血,消化管出血はエドキサバンのほうが少ない。高用量ダビガトランのほうが脳卒中/SE少ないが大出血多い
・対リバーロキサバン:有効性エンドポイント,死亡率は同等。大出血,CRNMBはリバーロキサバンが多い

・エドキサバンvs他の3剤。CHADS2スコアと観察期間補正
・大出血(高用量エドキサバン):リバーロキサバン,ダビガトラン150/110より少ない。エドキサバンは同等
・大出血(低用量エドキサバン):他の3剤より少ない。
・脳卒中/全身性塞栓症(高用量):他の3剤と同等
・脳卒中/全身性塞栓症(低用量):アピキサバン,ダビ150より多い

・23試験,94656例。対ワルファリンメタ解析
・脳卒中/全身性塞栓症:全NOAC<ワルファリン,エドキサバン60,リバーロキサバン20>ダビガトラン150
・全死亡:全NOAC優位
・大出血:アピ5,ダビ110,エド60/30<ワルファリン,ダビ150>アピ5,リバーロ20>アピ5,リバーロ20>エド60
・頭蓋内出血:ほとんどのNOAC<ワルファリン
・消化管出血:いくつかのNOAC>ワルファリン
・アピキサバン5はアウトカム,コストとも最高位にランクされる

高齢者サブ解析】
・NOACのほうがワルファリンよりアウトカム良好
・60%以上のAF患者で5剤以上服用(特に大出血リスク高い例)
・大出血(75歳以上):ダビ110<ワルファリン,エド30<ワルファリン
・アピキサバン2.5:80歳以上,体重≦60kg,クレアチニン≧1.5,
・リバーロキサバン:年令による減量必要なし(腎機能正常例)
・高齢者へのNOAC使用:腎機能低下を考慮してのNOAC選定を行えば妥当な戦略と言える。

Funding: This paper was published as part of a supplement financially supported by Bayer AG and the scientific content has not been influenced in any way by the sponsor.

Conflict of interest: Dr M.H. has received honoraria and speaker fees from Astra Zeneca, Berlin Chemie Boehringer Ingelheim,
Bayer, Bristol Myers Squibb, Pfizer, and Daiichi-Sankyo. Dr A.G. has received honoraria and speaker fees from Astra Zeneca, Berlin Chemie, Boehringer Ingelheim, Bayer, Bristol Myers Squibb, Pfizer, andDaiichi-Sankyo.

### エビデンス的には概ねNOAC優位なものの,アウトカムはNOACごとにまちまち。場合によりワルファリンと同等かそれ以下の場合もあります。
私自身はアピキサバン5mgx2をベースに,1日1回がお好みの方はエドキサバン,リバーロキサバン。若年者,アブレーション待機者などはダビガトラン150という感じですね。いままで通りです。もちろんワルファリンも使ってます。

このあと,リアルワールドデータ,PCI,カルディオヴァージョン症例についての論説が続きます。今日はこのへんで



by dobashinaika | 2021-01-03 12:16 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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