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NOAC標準用量が適さない人への超低用量処方は有効かつ安全か?:ELDERCARE-AF試験


P:80歳以上のNVAF,CHADS2スコア≧2点
以下の推奨/標準用量に適さない条件を有する症例:
・CCr15-30ml/min(41.0%)
・重大出血.消化管出血の既往(22.6%)
・体重≦45kg(38.0%)
・NSAIDs継続使用(32.2%)
・抗血小板薬使用(53.8%)

E:エドキサバン15mg/日

C:プラセボ

O:有効性:脳卒中/全身性塞栓症,安全性:大出血(ISTH基準)


T:第III相,無作為割付け,二重盲検,多施設(日本,164施設),ITT解析

結果:
1)全984例。追跡期間中央値466.0日。途中脱落は,301例(うち死亡は,135例)。平均年齢86.6歳(≦85歳 45.4%,85歳超 54.6%)

2)有効性:edoxaban群2.3%/年 vs. プラセボ群6.7%/年[ハザード比(HR)0.34; 95%信頼区間(CI)0.19~0.61; 優越性のP <0.001]。サブグループ解析においても一貫した結果

3)edoxaban群3.3%/年 vs. プラセボ群1.8%/年[HR 1.87; 0.90~3.89; P =0.09]。edoxaban群で致死的出血の発生はなかったが,プラセボ群では2例発生した。

4)頭蓋内出血:edoxaban群0.3%/年 vs. プラセボ群0.6%/年[HR 0.50; 0.09~2.72]。

5)消化管出血:edoxaban群2.3%/年 vs. プラセボ群0.8%/年[HR 2.85; 1.03~7.88]。
NOAC標準用量が適さない人への超低用量処方は有効かつ安全か?:ELDERCARE-AF試験_a0119856_06164528.png

結論:日本の超高齢者のNVAF患者のうち経口抗凝固薬標準量が不適切な患者では,edoxaban(15mg/日)は,プラセボに比べ,大出血リスクを有意に増加させることなく,脳卒中および全身性塞栓症リスクを有意に低減させた。

### 昨年のAFIREに続き,日本からESC,NEJM同時発表の論文です。

80歳以上で出血リスクを持つ人にはクライテリア上標準用量であっても,なかなか処方しにくい心情がありました。この試験では低用量のそのまた半量という超低用量でのDOACとプラセボを比較した試験です。
結果は超低用量でも血栓塞栓症には有効で,大出血は有意には増やさない(消化管出血は有意に多い)というものでした。今後の抗凝固療法を考える上で大変重要な試験です。

考えるべきポイントとしては,推奨/標準用量に適さない条件がいくつかある点です。腎機能,出血の既往などがありますが,抗血小板薬併用が53.8%と実際は一番多く,現場では最も多いと思われるCCr15-30の条件には41.0%の人が当てはまりました。もちろん複数の条件を持つ人が多いと思われます。

サブグループ解析を見ると,上記条件の中で腎機能低下,出血の既往,低体重患者で血栓塞栓症を有意に抑制する一方,出血も腎機能低下,低体重患者で多かったようです。

これらの条件のうち,特にどれを重視すべきか,また出血(消化管出血)はやはり増える傾向が見受けられることから,今後もし市販されたとしても高齢というだけで超低用量を使ったり。他のNOACなどにも当てはめることは慎重にしたいところです。

ともあれ,超低用量でも血栓塞栓は増えないことがわかった点は大変大きく,今後が期待されます。

$$$ 最近は散歩中に出会う猫もやや少なめ。寒くなりました。
NOAC標準用量が適さない人への超低用量処方は有効かつ安全か?:ELDERCARE-AF試験_a0119856_06200583.jpeg








by dobashinaika | 2020-12-02 06:24 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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