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不整脈のリスク評価に関する世界4学会合同のコンセンサス文書: Europace誌


ヨーロッパ、アメリカ、日本(パンパシフィック)、ラテンアメリカの4つの不整脈学会から合同で不整脈のリスク評価に関するコンセンサス文書が出ました。
心房細動の「早期発見」が注目されていますが,現時点での指針となる非常に実践的な内容です。

以前EHRAから出た「無症候性不整脈の評価におけるコンセンサス」[https://dobashin.exblog.jp/239213688/]同様、
'Should do this’    「すべき」
‘May do this’      「してもよい」
‘Do not do this’    「してはいけない」
の3カテゴリーで分けて評価されており、極めてわかりやすい内容です。

電気生理学的検査と心室頻拍のところはすみません。割愛します。

◉リスク評価のための一般的ツール:その強度、限界、検査前確率

【心電図(モニタリング含む)】

- <すべき>
- 心疾患を持つまたは疑われる全ての患者における12誘導心電図
- 遺伝性の高リスク症候群(QT延長症候群:LQTS、QT短縮症候群、ブルガダ症候群、不整脈原性心筋症:ACM)の診断、予後情報のための12誘導心電図
- 以下の例での運動負荷心電図:LQTS、ACM、HCM(肥大型心筋症)、カテコラミン感受性多形性心室頻拍、運動関連が記録されているまたは疑われる不整脈
- 以下の例でのホルター心電図:虚血性心筋症、ACM、HCMにおける非持続性心室頻拍の予後情報のため

- <してもよい>
- ACMの診断のための加算平均心電図及びQRSフラグメンテーション
- ブルガダ症候群のリスク層別化のための加算平均心電図及びQRSフラグメンテーション
- 心拍変動、心拍撹乱、加算平均心電図、交代性T波解析(追加の電気生理学的検査、器質的心疾患検索と組み合わせて)は器質的心疾患患者の高リスク、低リスクの同定に有用

【画像診断】

-< すべき>
- 心エコー:器質的心疾患における突然死の一次予防リスク評価のためのEF測定(MRI、CTでも代用可)
- MRI:心室頻拍例で心筋の瘢痕や炎症同定のため

- <しても良い>
- PET:心室頻拍例で心筋の瘢痕や炎症同定のためで冠動脈造影しない場合

【電気生理学的検査】
- (省略)

【植え込み型ループレコーダー】

- <すべき>
- ホルター心電図で診断できない原因不明の頻回の失神患者
- 包括的評価で原因が特定できず治療の指標がない、ICDやペースメーカーの適応もない高リスクの失神患者

- <しても良い>
- 動悸、めまい、前失神状態、頻回のPVC、非持続性VT、心房細動の疑い、心房細動アブレーション後のフォロー

【ウエアラブル/直接装着デバイス】

- <しても良い>
- 臨床的文脈や医師の判断を総合して、疾患の同定や管理に役立つデータが得られる場合
-
【バイオマーカー、組織、遺伝子】

- <すべき>
- 遺伝子診断:心室性不整脈や心臓突然死の高リスクと思われる幾つかの遺伝性不整脈疾患

- <しても良い>
- 造影MRI:心房細動や心筋症患者の心筋線維化や瘢痕を同定するため
- 血清NT-proBNP:心房細動負担(burden)の程度評価のため
- 血清CRP、他の炎症マーカー:将来の心房細動、心房の線維化高リスク例

◉特殊症例における心房細動リスク評価

【心不全合併例】

- <すべき>
- 心房細動リスクを高める臨床的因子の注意深い評価
- デバイス植え込み心不全患者での心房細動同定とその管理のための頻回の問診と遠隔モニタリング
- 心房細動高リスク同定のための心エコー

- <してもよい>
- 心房線維化と瘢痕の程度を見るためのMRI
- 将来の心房細動リスクや辛抱線以下の程度を知るためのバイオマーカー

- <してはいけない>
- 心房細動関連の分子遺伝学的解析による通常の遺伝子変異検索

【肥満,低血圧,糖尿病,睡眠時無呼吸,器質的心疾患】

- <すべき>
- 心房細動やその合併症発症関連の臨床的因子の評価

- <してもよい>
- 心房細動リスク同定のためのリスクスコア評価

【心臓手術施行患者】

- <すべき>
- 心房細動術後4−7日間の心拍モニタリング

- <しても良い>
- 心房細動術後患者の症候性および無症候性不整脈評価のための心拍モニタリング

【潜因性脳梗塞患者】

-<すべき>
- 拡散強調MRI:第一選択
- 心房細動検索のための長時間の精度の高いモニタリング
- 選択された患者における心房細動検索のための電話伝送、イベントレコーダー、植え込み型ループレコーダーなどの長時間モニタリング
- 心房細動高リスク(高齢、心血管リスクあり、合併症あり)例における植え込み型ループレコーダー

- <しても良い>
- 心原性由来(主に心房細動)確認のための経食道心エコー

●ILRの植え込みコンセンサス
不整脈のリスク評価に関する世界4学会合同のコンセンサス文書: Europace誌_a0119856_07262387.png

【プロアスリートの心房細動リスク評価】

- <すべき>
- なし

- <しても良い>
- 症候性、無症候性を問わず、持久運動のアスリートにおける心房細動スクリーニング
- 運動の時間、強度を含む心房細動リスク評価

【遺伝性不整脈患者】

- <すべき>
- 心房細動高リスク例で、有症状時及び定期的検査の有益性のある患者
- 有症状時のサーベイランス及び無症候性患者の定期的サーベイランス

- <すべきでない>
- 電気生理学的検査

◉心房細動の合併症に対する評価法

【脳梗塞/TIA,認知機能低下に関する評価】

- <すべき>
- リスク因子に基づくアプローチ
- 認知機能低下が疑われた場合の認知機能評価

- <しても良い>
- 認知機能評価は多面的だが、まず単一のツールを使用しての評価
- 血管疾患 and/orアルツハイマー病の評価
- 総合的な健康評価
-
【左心耳閉鎖/結紮後の脳卒中/TIAリスク評価】

- <すべき>
- 術後6週間、できれば1年後の経食道心エコーによるバイス周辺血流の同定

- <しても良い>
- 脳卒中/TIAの既往、持続性心房細動、低心拍出量、血管疾患、抗凝固薬の早期中断といった項目があればデバイス関連血栓の探索を考える
- MDCTや冠動脈CTは経食道心エコーと同等のデバイス周辺血流同定能あり
- 術後残存左心耳とその機能、あるいは残存血流確認のためのイメージング
-
【心不全の発症と進行リスク】

- <すべき>
- 心不全患者の心房細動スクリーニングは、合併した場合単独よりもリスクが増幅されるため施行すべき
- 心房細動誘発性心筋症同定のためのモニタリングや心エコー、常時のリスク評価は標準管理の一環としてすべき
-
心房細動患者の死(突然死含む)のリスク】

- <すべき>
- 高齢、認知機能低下、糖尿病、高血圧、脳卒中の既往、血管疾患、心不全は心房細動患者の高死亡率のマーカーである

●心房細動の死亡リスクピラミッド
不整脈のリスク評価に関する世界4学会合同のコンセンサス文書: Europace誌_a0119856_07282724.png


【カテーテルアブレーションのリスク】

- <すべき>
- 神経、消化器、心血管系、末梢血管系の合併症リスクがあるため、アブレーション後30日以内のモニタリングはすべき

- <しても良い>
- WPW症候群のアブレーション後は、通常より心房細動発症リスクが上昇するため、追加のフォローアップが必要

◉特殊症例における心室性頻脈性不整脈のリスク評価法
(省略)
心室性頻脈性不整脈患者における有害事象のリスク評価法
(省略)

◉他の特殊な心臓の状態における有害事象のリスク評価法

【PVC】

- <すべき>
- 24時間以内に10000個以上または10%増加の場合、心機能及び心不全症状を評価すべき

- <しても良い>
- 多形性PVC、QRS幅>150msec、連結期<450msecの場合、心機能及び心不全症状を評価しても良い
-
【WPW症候群、心房頻拍などの上室頻拍】

- <すべき>
- イソプロテレノール負荷EPS:高リスクな職業/趣味を持つ人及び競技アスリートで無症候性WPWの人
- EPS:高リスク職業あるいは競技アスリートでない無症候性WPW

- <しても良い>
- 運動負荷、薬物負荷、ホルター心電図 :高リスク職業あるいは競技アスリートでない無症候性WPW
- カテコラミンの有無に関係しないEPS:順行性不応期</=250ms、心房細動中のRR間隔</=250ms、誘発性房室エントリー性頻拍、複数副伝導路
- EPSでフォローされる低リスク無症候性WPW、運動で消える早期興奮パターン、間欠性早期興奮の安静時心電図、またはホルター心電図での経過観察

### 注目される植込み型ループレコーダーは原因不明で頻回の失神のある患者,失神した時点でICDやペースメーカーの適応もない高リスクの失神患者は「すべき」で,単に心房細動の疑い、心房細動アブレーション後のフォローは「してもよい」でした。

当然ですが,当リスク例での侵襲的検査は「すべき」低リスク例では推奨度は高くないというところです。

$$$ 今日のさんぽ猫
不整脈のリスク評価に関する世界4学会合同のコンセンサス文書: Europace誌_a0119856_08134512.jpg

by dobashinaika | 2020-06-25 07:35 | 心房細動:診断 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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