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COVID-19と循環器病についての日本発信のレビュー:Circulation Journal 誌

COVID-19と循環器病についての日本発信のレビューです。日本循環器学会 #COVID19 対策特命チームが中心となって執筆されていますが,大変良くまとまっていますのでご紹介します。論文のリンクは一部貼れてません。後日飛べるようにします。


前文】
- 2020年3月7日現在,COVID-19と確定診断された101,927例が論文化されている。
- COVID19と心血管疾患(CVD)との関連は十分解明されていない
- 最近の中国からの報告では,44,415例中61,68例(13.8%)では重症疾患を有した
- 注目すべきことに,全体の致死率は2.3&だが,CVDの致死率は10.5%だった
- COVID19確定患者の23.7%が既存の疾患(高血圧,糖尿病など)を有しており,転帰不良と関連していた。
- これらの結果は, 事前に合併症を持つ人はCOVID19のリスクと合併症に注意すべきであることを示している。

【 COVID19の病態生理とCVDとの関係】
- SARS-CoV-2は,positive-strand RNAで人に感染することが証明された7番目のコロナウイルス
- SARS-CoV-2のゲノムは,SARS-CoVのゲノムと75-80%を共有し,ACE2という同じ細胞レセプターを使用。ACE2は心血管系と免疫系において極めて重要な役割を担っている。
- 一部の研究者は,SARS-CoV-2がACE2受容体に結合することを考慮し,COVID19とACE阻害薬やARBなどの降圧薬の関連を指摘している
- しかし欧州心臓病学会(ESC)は,COVID19患者においてRAS系阻害薬を変更することを支持していない。
- SARS患者の検死報告の多くが,主要な病理学的所見は,ウイルスの直接的効果と免疫病理学的な要因による広範な肺胞への影響であるとしている。
- これに対し,CVDにおけるSARS-CoVの病理は十分記載されていない。
- 心筋基質と血管壁の両者の浮腫が,心筋繊維の萎縮とともに,SARS-CoV感染の心臓の病理学的特徴を記載されてきた

【 CVD患者全体および個々の患者のリスクと予後】
- COVID19患者1099例の報告
- 重症者15.7%
- 重症者は非重症者に比べ,高齢,冠動脈疾患(5.8%),脳血管疾患(2.3%)を持つ
- 全体の6.1%が主要複合エンドポイントに至る(ICU5.0%,人工呼吸器2.3%,死亡1.4%)

- 138例の連続入院患者の報告
- ICU26.1%;このうちARDS61.1%,不整脈44.4%,ショック30.6%,急性心障害22.0%(バイオマーカーと心電図異常,エコー所見から診断)

- Weiらによるメカニズムの推察としては以下の3つ
1)ウイルスによるダイレクトな心筋炎
2)低酸素あるいはショックによって引き起こされる血行動態不良
3)免疫反応あるいはサイトカインストーム
- ICU患者は,よリ高齢で合併症が多い:高血圧58.3%,糖尿病22.2%,CVD25.0%,脳血管疾患16.7%3)
- 致死率4.3%

- Hubeiらの限定的なデータでは,致死率11.7%と報告されたが,これにはリソースの欠如と対象者のバイアスが考えられている

- COVID19の致死率はSARSよりは低いが高齢者では高めである。

- CVD合併COVID19のアウトカムに関する研究は少ないが,致死率については主に多臓器不全であるとされている

【循環器医としての臨床的関わり】
- 今のところ,COVID19患者の心症状としては:心筋障害,心筋炎,不整脈,静脈血栓,心不全
- データは少ない,メインは肺炎とARDSなので循環器医は直接出会うことは少ない
- しかしながらCVD患者は高リスクと考えられるので,相談を受けた際のために準備する必要がある。
- ACCから臨床的速報やガイダンスが頻回にアップデートされている。骨子は以下
- 準備の重要性。特にPPE,施設やデバイスの管理(心電図,エコー,カテラボ,オペ室)
- 感染拡大の阻止とスタッフの感染防御の両方の重要性
- 1)Protection 2)Indication 3)Collaboration 4)Update
COVID-19と循環器病についての日本発信のレビュー:Circulation Journal 誌_a0119856_06121885.jpg
- PPEに関する最もアップデートな情報はWHOとCDCのウエブサイトが提供している
- PPEに加えデバイス管理は,循環器医がCOVID19患者を診るとき特に重要である。
- 心エコー機器:清潔で感染防御されるべき
- Kampf らの指摘通り多くのコロナウルスは無生物表面(ガラスやプラスティック表面)で9日まで居座るが,62-71%エタノール,0.5%過酸化水素水,0.1%次亜塩素酸ナトリウムでの処置で0,分以内に効果的に不活性化できる
- CDCやWHOのサイトは活用できるが,心エコーのプローブに関する消毒には製造メーカーの取扱説明書の参照がより求められる。
- ICU,カテ室,オペ室
- もしCOVID19感染者と診断される前にその患者と同室だった者は(新生児も含めて),感染が除外されるまで最低14日間の隔離が考慮される。
- SiらはCOVID19に感染した急性大動脈症候群患者の術前管理(術前カテ)の経験を報告している
- ZenらはCOVID19疑いあるいは確定患者のAMI時の診断治療に関するプロトコールを提唱している
- 心エコー
- アメリカ心エコー学会はCOVID19アウトブレイク時の心エコー患者の感染防御に関するステートメントを出しており有用である

以下は心臓関係団体のオンラインリソース
American College of Cardiology (ACC)
- ウェブセミナー,リンクサイト,他のリソースを含むACCのCOVID情報プラットフォーム
- 2020年2月から公表されている循環器医にとっても初のガイダンス

American Society of Echocardiography (ASE)
- 心エコーと設備管理法の解説

American Heart Association (AHA)
- ACC’s COVID-19 Hubに類似だが,より患者フレンドリーな内容

European Society of Cardiology (ESC)
- 最前線からの情報や多くの医師,医療チームに関するビデオを含んだオンラインプラットフォーム
- このステートメントでは,高血圧患者はCOVID19感染に関わらず 2018ESC/ESHのガイドラインに従ってACEIやARBを継続することが勧められている

Canadian Cardiovascular Society (CCS)
- ACC’s COVID-19 Hubに類似だが,いくつかのウェブセミナーや医師向けのガイダンス,患者向けメッセージあり
-
【患者のケア,管理】
- 循環器医の視点からはECMOの適応について注目すべき
- 米国胸部疾患学会/欧州集中治療学会/救急救命学会の実践ガイドラインはARDS患者のECMO使用については肯定でも否定でもない
- イタリアの麻酔,ペイン,蘇生,集中治療学会(SIAARIT)は,適切な医学情報がない場合の医師や他の医療者に対するガイドラインを発行している

【 将来の見通しと結論】
- COVID19に関する情報は時間単位でアップデートされる。患者はいまだ増加中であり,4月20日時点で世界全体で2,477,126名である。
- 素早い情報共有のため多くの論文が無料公開されている。bioRxiv, medRxiv, ChemRxivといったサーバーによるプレプリント(査読前)リプリント(2020.5.4訂正)サービスも利用できる。
- よりスムーズなアップデート情報の入手が可能となるであろう
- 今回の感染拡大は我々にパンデミックへの備えと国際協調の重要性を喚起してくれた。
- とくにCOVID19患者のCVD発症は低頻度であることを考えつつ,情報の収集と迅速な共有を活発に行うべきである。
- 現時点では絶対的治療はないが,多くのトライアルが進行中である。
- それらの治療法や研究により我々のCOVID19への理解が更に高まり,更新されるであろう。

### 大変ありがたいレビューです。循環器学会の若手のパワー素晴らしいです。

$$$ 暖かくなってきたので,朝散歩再開しました。猫はいつも平和
COVID-19と循環器病についての日本発信のレビュー:Circulation Journal 誌_a0119856_06224073.jpg


by dobashinaika | 2020-05-01 06:24 | 感染症 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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