心房細動な日々 dobashin.exblog.jpブログトップ | 投稿 European Heart Journalの循環器2019年,心房細動編のまとめ(その2:カテーテルアブレーション)
昨日のESCのまとめその2です。カテーテルアブレーションについてです。
The year in cardiology: arrhythmias and pacing: The year in cardiology 2019A
John Camm, Gregory Y H Lip, Richard Schilling, Hugh Calkins, Jan Steffel
European Heart Journal, ehz931, https://doi.org/10.1093/eurheartj/ehz931
【アブレーション】
<臨床アウトカム>
・CABANA試験:アブレーションに関する報告は数多いが,最も強く期待されていたのはCABANA試験
・多施設RCT,アブレーションvs.薬物療法
・一次複合エンドポイント(死亡,重症脳卒中,重症出血,心停止)は同等
・この種の試験は,医師がアブレーション候補者をリクルートするので,途中から薬物療法→アブレーションのクロスオーバーが多いのが難点。本研究でも27.5%
・(最終的な)治療法で解析したが場合は予後改善が見られたが,この方法は無作為化の原則を損ないバイアスを増やす
・アブレーションによる微小塞栓は大きなインパクトを与えず,アブそのものは認知機能を改善する(308名,1年追跡)との研究あり
・QOLを一次エンドポイントにした初めての研究では,アブレーションが良好
・クライオアブレーションの知見としては,高周波アブレーションより速く,心嚢液貯留雨が少なく,施設の症例数に関わらずアウトカムに勝るとの報告があった
・登録研究は数多く,スウェーデンの登録研究で合併症,死亡は低率で,心房細動,VT,PVCのアブレーション数は,心房細動の再施行のため増加している
・ヨーロッパの登録研究では,クライオアブレーションは女性には効果的だが,合併症は多かった
・デンマークの登録研究では,心房細動アブレーションの成功率は90%で2年後の再発は13%
・ドイツの登録研究では,心嚢液貯留率0.9%(21141例中)でハイボリューム施設ほど少ない(高周波の場合)
・心筋梗塞後の心室細動ストームに対するアブレーションの報告(多施設110例)では,院内死亡率27%,2年後死亡率36%と高値で施行時間もかかる
・不整脈原性心筋症における反復性心室頻拍のアブレーションに関する後ろ向き試験(110例)では,薬物療法より効果的だが,心外と心内アプローチの両者を使用した
<新マッピング技術>
・複雑な不整脈におけるアブレーション不成功の原因は,メカニズム理解の欠如
・ripple mappingは持続性心房細動(53%vs.従来法39%),心房頻拍,不整脈原性心筋症に伴う心室頻拍に有用
・Non-contact mapping は12ヶ月持続の心房細動に有効(59%)
・STAR mapping systemは,持続性心房細動35例中80%に有効(18ヶ月)
・どの方法が普及するのか残された課題である
<エネルギー源>
・ハイパワー短時間高周波はいまのところ悪いアウトカムなし
・電気穿孔法(electroporation)は新エネルギー源として有望
・難治性心室頻拍の高周波アブレーションはイノベーション分野であり19例対象の小試験で有効とされている
<ガイドライン等>
・多くのガイドラインが出版されている
・心室性不整脈のアブレーションガイドラインは,プログラム刺激が予後予測に有効であり,心内電位を用いた方法も推奨している
・不整脈の性差が問題視され,アウトカムの違いはあるにせよ,女性に対するカテーテルアブレーションの適応に影響を与えるべきではない
### CABANA試験を大きく扱っています。この試験はここでも指摘されているように様々な解釈が可能なデザインですね。「”アブレーションを受けるのが適切と医師が思うような症例”では薬物より予後改善効果あり」ということは言えそうです。「誰を誰が適切に思うか」という段階で多くのバイアスが入り込むと思われます。
しかしいろいろなテクノロジーが開発されているのですね。「どの方法が普及するのか残された課題である」と述べられていますが,永遠に解決できない問題のようにも思えてきます。
by dobashinaika
| 2020-01-09 08:49
| 心房細動:アブレーション
|
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土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
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