症状がない不整脈をどうすべきか:欧州不整脈学会による無症候性不整脈の管理に関するコンセンサス文書 #CardioJapan
これまた膨大ですが,
‘Should do this’ 「すべき」
‘May do this’ 「してもよい」
‘Do not do this’ 「してはいけない」
の3カテゴリーで分けているのも非常にフレンドリー
<無症候性心房期外収縮,非持続性心房頻拍>
・高頻度(>500回/日)心房期外収縮にたいしての長時間モニタリング:「すべき」(Expert consensus )
・高頻度心房期外収縮に対するリスク因子(高血圧,体重管理,睡眠時無呼吸)の管理と器質的心疾患の評価:
「すべき」(Expert consensus )
・短時間心房細動それ自体は抗凝固薬の適応ではない。高頻度(>500/日または20回未満のショートラン)では抗凝固開始を考えても良い:「してもよい」(Expert consensus )
・心房細動が記録さていない,低〜中等度心房期外収縮への抗凝固療法:「すべきでない」(Expert consensus )
<無症候性早期症候群(WPW含む)>
・間欠性デルタ波または電気生理学的検査で高リスクを示さないケースへのアブレーションなしのフォローアップ:「すべき」
・リスク層別化のための電気生理学的検査。高リスク例(副伝導路の不応期<240ms,早期興奮性心房細動あり,複数副伝導路)へのカテーテルアブレーション:「すべき」
・高強度またはプロのスポーツ選手,職業リスクの高い人へのアブレーション:「してもよい」
・アブレーションおよび無症候性を治療しないことのリスクを受容することに関する患者,家族との詳細な話し合い:「すべき」
<心房高頻度エピソード:AHRE(非持続性心房細動)>
(デバイス記録で最短5分,>心房レート180bpm,または少なくとも30秒の心房細動)
・AHREありは,なしに比べて脳卒中の高リスクと考える:「すべき」
・抗凝固薬投与までのさらなる詳細な検討(抗凝固薬の有効性は不明なので):「すべき」
・一部のCHA2DS2-VAScスコア>2の患者への抗凝固療法:「してもよい」
・AHREのみへの抗凝固療法:「すべきでない」
<無症候性心房細動>
・脳卒中リスクスコアに基づく無症候性心房細動の抗凝固療法(症候性同様):「すべき」
・高リスク(CHA2DS2-VAScスコア≧2)のスクリーニング:「してもよい」(Expert opinion )
・生活スタイルの変容:「すべき」
・真に無症候性か,あるいは心房細動に関連する何らかの症状があるのかを区別するための除細動:「してもよ
い」
・頻脈性心筋症予防のためのレートコントロール:「すべき」
・詳細なIC後の患者の好みに基づく限定的なアブレーション:「してもよい」(Expert opinion )
図はEHRAから以前も出ている心房細動患者へのABCパスウェイです。
<心室期外収縮>
・高頻度の心室期外収縮(>500/日)を持つ患者の専門医への紹介(器質的心疾患,電気的異常同定のため):「すべき」
・非常に高頻度な心室期外収縮(>1日20%)への高密度なフォローアップ(突然死や心血管死の指標なので):「してもよい」
・頻脈性心筋症を合併した心室期外収縮への治療:「すべき」(Expert consensus )
・予後改善のための基礎心疾患の治療:「すべき」(Expert consensus )
<心室頻拍>
・無症候性非持続性心室頻拍に対する十分な評価(基礎心疾患,虚血,電気的異常)
:「すべき」
・急性冠症候群ではない,LVEF<35%の持続性心室頻拍へのICD:「すべき」
・LVEF>40%の非持続性心室頻拍における基礎心疾患治療の最適化(特別な抗不整脈治療は必要なし):「すべき」
<頻脈誘発性心筋症>
・他の要因(心筋梗塞,弁膜症,高血圧,アルコール,薬剤性,ストレス性など)の除外:「すべき」
・心不全,心房細動(レートコントロール)の薬物療法:「すべき」
・持続性or反復性心房/心室性不整脈へのアブレーション:「してもよい」
<無症候性徐脈>
・無症候性の重症徐脈 or 6秒以上の心停止を認める失神患者への診断と治療:「すべき」
・完全に無症候性の徐脈への治療:「すべきでない」
<患者の視点>
・状況理解,可能な治療法,疾患の見通し,考えうるアウトカムに関する患者,家族への教育:「すべき」
・疾患と治療についての情報をハートケアチームから何度も,あるいは新しい戦略が導入されるときに伝えること:「すべき」
・治療に対する患者の意向と意思決定への参画:「すべき」
### これまたEHRAからの詳細で親切なコンセンサスの提示です。
無症候性の不整脈をどうするか,現場では悩むことも多いですが,3段階に分けて明確に教えてくれます。
高頻度の短時間心房細動もCHA2DS2-VAScスコア2点以上なら抗凝固療法考えても良いとなっていて,ASSERT試験の治験に基づくものと思われますが,ちょっと攻めすぎの感もあります。Expert consensus も多いですね。
しかしながら現場の参考には大いになります。
$$$ 本日は仙台,桜に雪です。
by dobashinaika
| 2019-04-12 00:37
| 不整脈全般
|
Comments(0)
土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
カテゴリ
全体インフォメーション
医者が患者になった時
患者さん向けパンフレット
心房細動診療:根本原理
心房細動:重要論文リンク集
心房細動:疫学・リスク因子
心房細動:診断
抗凝固療法:全般
抗凝固療法:リアルワールドデータ
抗凝固療法:凝固系基礎知識
抗凝固療法:ガイドライン
抗凝固療法:各スコア一覧
抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術
抗凝固療法:適応、スコア評価
抗凝固療法:比較、使い分け
抗凝固療法:中和方法
抗凝固療法:抗血小板薬併用
脳卒中後
抗凝固療法:患者さん用パンフ
抗凝固療法:ワーファリン
抗凝固療法:ダビガトラン
抗凝固療法:リバーロキサバン
抗凝固療法:アピキサバン
抗凝固療法:エドキサバン
心房細動:アブレーション
心房細動:左心耳デバイス
心房細動:ダウンストリーム治療
心房細動:アップストリーム治療
心室性不整脈
Brugada症候群
心臓突然死
不整脈全般
リスク/意思決定
医療の問題
EBM
開業医生活
心理社会学的アプローチ
土橋内科医院
土橋通り界隈
開業医の勉強
感染症
音楽、美術など
虚血性心疾患
内分泌・甲状腺
循環器疾患その他
土橋EBM教室
寺子屋勉強会
ペースメーカー友の会
新型インフルエンザ
3.11
Covid-19
未分類
タグ
日本人(44)ケアネット(40)
どばし健康カフェ(35)
高齢者(32)
リバーロキサバン(29)
リアルワールド(28)
ガイドライン(26)
新規抗凝固薬(25)
ダビガトラン(24)
アドヒアランス(23)
CHA2DS2-VAScスコア(21)
ワルファリン(21)
共病記(20)
ESC(20)
カテーテルアブレーション(19)
心不全(19)
無症候性心房細動(14)
認知症(14)
消化管出血(13)
頭蓋内出血(13)
ブログパーツ
ライフログ
著作
プライマリ・ケア医のための心房細動入門 全面改訂版
編集
最近読んだ本
最新の記事
心房細動アブレーションのタイ.. |
at 2025-01-05 12:11 |
JAMA Networkによ.. |
at 2025-01-04 17:33 |
ヨーロッパ心臓病学会の新しい.. |
at 2024-09-01 23:53 |
心房細動とHFrEF:昔から.. |
at 2024-08-18 21:39 |
AF burden :新たな.. |
at 2024-08-15 14:46 |
高齢の心房細動患者における2.. |
at 2024-06-25 07:25 |
2024年JCS/JHRS不.. |
at 2024-03-21 22:45 |
日本独自の新しい心房細動脳梗.. |
at 2024-03-17 22:31 |
心房細動診療に残された大きな.. |
at 2024-01-03 23:00 |
東日本大震災と熊本地震におけ.. |
at 2024-01-02 16:11 |
検索
記事ランキング
最新のコメント
血栓の生成過程が理解でき.. |
by 河田 at 10:08 |
コメントありがとうござい.. |
by dobashinaika at 06:41 |
突然のコメント失礼致しま.. |
by シマダ at 21:13 |
小田倉先生、はじめまして.. |
by 出口 智基 at 17:11 |
ワーファリンについてのブ.. |
by さすけ at 23:46 |
いつもブログ拝見しており.. |
by さすらい at 16:25 |
いつもブログ拝見しており.. |
by さすらい at 16:25 |
取り上げていただきありが.. |
by 大塚俊哉 at 09:53 |
> 11さん ありがと.. |
by dobashinaika at 03:12 |
「とつぜんし」が・・・・.. |
by 11 at 07:29 |
以前の記事
2025年 01月2024年 09月
2024年 08月
2024年 06月
2024年 03月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 08月
2023年 06月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 03月
2007年 03月
2006年 03月
2005年 08月
2005年 02月
2005年 01月