人気ブログランキング | 話題のタグを見る

待望のCABANA試験(心房細動対象,カテアブvs薬物療法のRCT)発表されました:JAMA誌


疑問:心房細動の患者におけるカテーテルアブレーションは,薬物療法に比べ,心血管イベントや死亡を減らすのか

P:世界10カ国,126施設から登録された心房細動2204例。65歳以上,1つ以上のリスク

E:カテーテルアブレーション(肺静脈隔離術+追加焼灼)

C:薬物療法(ガイドラインに基づいた標準的なリズム/レ−トコントロール)

O:主要エンドポイント(全死亡,後遺症のある脳卒中,重篤な出血,心停止)
二次エンドポイント;13あり(論文公開されたのは全死亡,心血管入院,心房細動再発)

結果:
1)平均年齢68歳,女性37.2%,発作性42.9%,持続性57.1%),試験完遂率89.3%,追跡期間平均48.5ヶ月

2)カテアブ群中90.8%がアブ施行。薬物群中27.5%がカテアブも受ける

3)主要エンドポイント:
アブ群8.0% vs. 薬物群9.2%:HR0.86 95%CI 0.65-1.15;P= .30
待望のCABANA試験(心房細動対象,カテアブvs薬物療法のRCT)発表されました:JAMA誌_a0119856_22513060.png

4)二次エンドポイント
4-1)全死亡:アブ群5.2% vs. 薬物群6.1%:HR0.85,95%CI 0.60-1.21;P= .38
4-2)死亡または心血管入院:アブ群51.7% vs. 薬物群58.1%:HR0.83, 95%CI 0.74-0.93;P= .001
4-3))心房細動再発:アブ群49.9% vs. 薬物群69.5%:HR0.52, 95%CI 0.45
-0.60;P<.001

結論:心房細動患者において,カテーテルアブレーションは薬物療法に比べ,全死亡,後遺症のある脳卒中,重篤な出血,心停止という主要エンドポイントを明らかには減少させなかった。しかしながらこの結果は,予測されたよりも低いイベント率と治療のクロスオーバーが影響しており,結果の解釈には注意が必要である。

### すでに学会発表されていますが,待望のCABANA試験の論文化です。クロスオーバー,特に薬物群でアブも施行した例が27.5%もいるので,その人はアブでアウトカムが良くなった可能性もあります。

一方最終的にアブ群の26.5%で抗不整脈薬を服用していました。

ということでon-treatment解析をするとアブ群のHR 0.67 (95%CI0.50-0.89)となります。
待望のCABANA試験(心房細動対象,カテアブvs薬物療法のRCT)発表されました:JAMA誌_a0119856_22520802.png
患者背景としては発作性が47%と半分以下で,一般的にカテアブの第一選択となる発作性心房細動よりは心房細動としては進行しているケースが対象と思われます。そのせいかアブ群の再発率が49.9%とかなり高い印象です。

薬物群の薬物療法の内訳は,抗不整脈薬が88.4%で処方され,1剤が545例と半分程度で,種類はアミオダロン以外のI群薬も使用されています。レートコントロールは85%で施行されβブロッカーが多いようでした。

また同時に発表された12ヶ月後のQOLをアウトカムとする論文では,アブ群で明らかにQOLの改善が示されています。

結果の解釈は難しいですね。何より,今では発作性,若年者では第1選択となっており,そうした人の予後をまず知りたいところですが,多分短期間ではアウトカムが少ないしランダム化すること自体難しいと思われます。

しかしながら,本論文はそうしたQOL改善をまずは主眼としアブをする例のみならず,むしろ持続性も含めた心房細動に対してカテアブの予後改善効果が期待できるかを問うもので,非常に本質的なトライアルと考えられます。

今回の論文からは生命予後改善を目的としたアブレーションというコンセプトは証明されなかったが,カテーテルアブレーションの価値自体が否定されたものではない。従来の症状改善を第一の適応とすることは依然として支持する内容であったと考えられます。

全例アブ!ということを支持しない結果でやや安心しています。。。

EHJの昨年のまとめコメントも参照ください。

$$$ 上野公園の早咲きの桜,満開でした。
待望のCABANA試験(心房細動対象,カテアブvs薬物療法のRCT)発表されました:JAMA誌_a0119856_22533355.jpg

by dobashinaika | 2019-03-17 23:00 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

カテゴリ

全体
インフォメーション
医者が患者になった時
患者さん向けパンフレット
心房細動診療:根本原理
心房細動:重要論文リンク集
心房細動:疫学・リスク因子
心房細動:診断
抗凝固療法:全般
抗凝固療法:リアルワールドデータ
抗凝固療法:凝固系基礎知識
抗凝固療法:ガイドライン
抗凝固療法:各スコア一覧
抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術
抗凝固療法:適応、スコア評価
抗凝固療法:比較、使い分け
抗凝固療法:中和方法
抗凝固療法:抗血小板薬併用
脳卒中後
抗凝固療法:患者さん用パンフ
抗凝固療法:ワーファリン
抗凝固療法:ダビガトラン
抗凝固療法:リバーロキサバン
抗凝固療法:アピキサバン
抗凝固療法:エドキサバン
心房細動:アブレーション
心房細動:左心耳デバイス
心房細動:ダウンストリーム治療
心房細動:アップストリーム治療
心室性不整脈
Brugada症候群
心臓突然死
不整脈全般
リスク/意思決定
医療の問題
EBM
開業医生活
心理社会学的アプローチ
土橋内科医院
土橋通り界隈
開業医の勉強
感染症
音楽、美術など
虚血性心疾患
内分泌・甲状腺
循環器疾患その他
土橋EBM教室
寺子屋勉強会
ペースメーカー友の会
新型インフルエンザ
3.11
Covid-19
未分類

タグ

(44)
(40)
(35)
(32)
(29)
(28)
(25)
(25)
(24)
(23)
(21)
(21)
(20)
(20)
(19)
(18)
(14)
(14)
(13)
(13)

ブログパーツ

ライフログ

著作
プライマリ・ケア医のための心房細動入門 全面改訂版

もう怖くない 心房細動の抗凝固療法 [PR]


プライマリ・ケア医のための心房細動入門 [PR]

編集

治療 2015年 04 月号 [雑誌] [PR]

最近読んだ本

ケアの本質―生きることの意味 [PR]


ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から [PR]


中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく) [PR]


健康格差社会への処方箋 [PR]


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書) [PR]

最新の記事

ヨーロッパ心臓病学会の新しい..
at 2024-09-01 23:53
心房細動とHFrEF:昔から..
at 2024-08-18 21:39
AF burden :新たな..
at 2024-08-15 14:46
高齢の心房細動患者における2..
at 2024-06-25 07:25
2024年JCS/JHRS不..
at 2024-03-21 22:45
日本独自の新しい心房細動脳梗..
at 2024-03-17 22:31
心房細動診療に残された大きな..
at 2024-01-03 23:00
東日本大震災と熊本地震におけ..
at 2024-01-02 16:11
脳梗塞発症後の心房細動患者に..
at 2024-01-01 18:41
ACC/AHAなどから202..
at 2023-12-10 23:12

検索

記事ランキング

最新のコメント

血栓の生成過程が理解でき..
by 河田 at 10:08
コメントありがとうござい..
by dobashinaika at 06:41
突然のコメント失礼致しま..
by シマダ at 21:13
小田倉先生、はじめまして..
by 出口 智基 at 17:11
ワーファリンについてのブ..
by さすけ at 23:46
いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
取り上げていただきありが..
by 大塚俊哉 at 09:53
> 11さん ありがと..
by dobashinaika at 03:12
「とつぜんし」が・・・・..
by 11 at 07:29

以前の記事

2024年 09月
2024年 08月
2024年 06月
2024年 03月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 08月
2023年 06月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 03月
2007年 03月
2006年 03月
2005年 08月
2005年 02月
2005年 01月

ブログジャンル

健康・医療
病気・闘病

画像一覧

ファン