南山堂の雑誌「治療」3月号特集「救急じゃない心電図」が発売されました。
私が編集幹事を担当させていただきました,南山堂の雑誌「治療」3月号特集「救急じゃない心電図」が発売されました。
自分で言うのもなんですが拾い読みするだけでもすごい勉強になりました。
いまさら心電図?という疑問に少しでも答えられれば幸いです。
序文はあいからわずAIネタです。
今月はもう1つ担当した雑誌が出ますのでよろしくお願いいたします。
序文「今月の視点」及び巻末の「心に残った言葉」を引用させていただきます。
来るべきAI時代,にもかかわらず心電図を読む「意味」とは?
1903年,オランダの生理学者Willem Einthovenは,心臓の電気活動を記録することに成功し1924年ノーベル賞を受賞しました。当時の心電図はすでに現在と変わらない正確さでしたが,その時点では単なる「曲線」にしか過ぎませんでした。それに「意味」を与えたのが,田原淳博士による刺激伝導系の解明でした。解剖学的研究により,単なる波の一つ一つが意味を持つようになったのです。
心電図はその後の研究により,「心臓疾患」というさまざまな意味も持つことがわかりました。未だに循環器疾患の基本的ツールとして揺るぎないのは,その簡便さとそれに比して多くの意味を私たちに教えてくれるからです。ごく最近まで私たちはこの単なる「曲線」から様々な意味を読み取るべく勉強したのでした。
今,そうした勉強をしなくてもその意味を人間よりも正確に教えてくれる先生が出現しようとしています。そう,AI(人工知能)です。すでに開発が進んでいる通り,近い将来心電図の読影は恐ろしい正確さでAIが行ってくれるでしょう。その時私たちの出番はなくなるのでしょうか。
いや,そんなことはないでしょう。AIが教えてくれるのはあくまで心電図という電気信号が発する意味です。特に救急の場ではなく十分時間が与えられている場合,その意味が,患者さんの「全身状態」という文脈の中でどのような別の意味に変換されるのか。さらには心電図の意味が,その患者さんの生活世界という文脈の中にどのような新しい意味を持つのか。AIが与えた意味を,さらに大きな文脈の中の意味に変換することが重要になると思われます,それはAIにはできない,そしてそれこそがこれからの医師に求められることかもしれません。文脈の中の心電図の意味,本企画がそんな事を考えるきっかけになれば幸いです。
出典(雑誌「治療」2019年3月号「今月の視点」より)
「なぜ意思決定支援なのか?欲望決定支援でなぜいけないのか?」
2018年9月23日、超満員の東京大学駒場キャンパス大教室で行われたシンポジウム「オープンダイアローグと中動態の世界」において哲学者の國分功一郎さんの講演で語られたのがこの言葉で、FBやツイッターでも大いに話題となりました。
インフォームドコンセントの名の下に、結局は患者さんに意思決定の責任を押し付けてはいないか。良心的な医師なら誰しもこう思うことがあるのではないでしょうか。國分さんはそうした意思決定は「冷たいもの」であり、より熱い「欲望」に患者さんが自ら気付くことを支援せよと訴えます。
実際、患者さんの欲望は複雑です。「脳梗塞にはなりたくない、でも美味しいものは食べたい」。こうした単純でない欲望を良い方向に形成していくための支援はすごく難しいように思います。でもだからといって本当の欲望かもわからない「意思」を仕立て上げ責任を押し付けるような支援はしたくない。この言葉は臨床家に、膝打ちをさせながらも重い宿題を背負わせる。そんな提言かもしれません。
出典(雑誌「治療」2019年3月号「編集幹事の先生に聞く心に残った言葉」より)
by dobashinaika
| 2019-03-02 22:28
| 不整脈全般
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土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
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筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
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