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津川友介先生の講演「ビッグデータやAIで医療の未来はどう変わるのか?」を聴く@仙台

運良く津川友介氏の講演を聴くことができました。
津川先生はすでにいくつかのベストセラーを表す超有名人ですが,2005年医学部卒業で私の20年近い後輩ですw。スマートでキレッキレのプレゼンでしたが,いくつか考えさせられました。


以下講演のメモ書きです。走り書きゆえ細部の不明点はご容赦ください。


●医療 xAIの実例として以下の3つ
1) GoogleのDeepMInd:苦戦している。アメリカでは民間企業が個人情報を利用できないため。
2)マウントサイナイ病院:疾患の発症予測モデル、頭部CT画像診断:いい線いっている
3)ジョージア工科大学


●AIの3つの挑戦(問題)
1)特化型vs汎用型
2)深い(詳細な)データの不足
3)学習としてのAI x 因果推論がまだ存在しない


●特化型vs 汎用型(汎用型はまだ先の話):
アルファ碁vs ドラエモンの違いだが, この2つの間には大きなギャップがあり埋める方法がわかっていない。
病理診断、画像診断,検査結果の判別といったパータン認識ではAIは威力を発揮する。
しかし視覚、聴覚の分野を代替しているにすぎず,前頭葉、海馬などは代替できていなていない。
今後は予後予測の制度の向上,プレシジョンメディスンへの寄与が期待される


●深い(詳細な)データの不足:
現在広いデータ=サンプルサイズの大きなデータは取り扱える。
深い(解像度の高い)データ=患者一人一人に関する詳細なデータ(血液、画像、病理、治療内容、時系列データ、確定診断)が不足している。
個人情報保護の問題がクリアできていない。
アルファ碁はそれ同士で対戦したから人間を超えられた。 レファレンスが人間だけ,つまり最終診断が医者の確定診断では、人間を超えられない。


●AIに因果推論はできるのか?
まだわからない
以下の3つくらいしか学派がなく、かなり否定的な見通しがある
1)キャンベル(心理学)
2)ルービンンの因果モデル(統計学、経済学)
3)因果関係ダイアグラム(DAG):ジュディアパール(UCLA)

パールは, 学術的フレームワークができない ,または実験や反事実に対する想像力が必要なためAIは因果推論できないと悲観的な見方をしている。しかし津川氏は近い将来AIを用いた因果推論が開発されるとみている。


### 個人的には,郡司ペギオ幸夫氏が指摘するように,「強度」を客観的に定義し評価の基準とする限りにおいて,芸術だろうが,統計的因果推論だろうが,ゆくゆくはAIが人間を凌駕すると考えているので,概ね津川先生の論旨は納得できました。


面白かったのは,社会の要請によって生まれたような「疾患スペクトラム」に対してAIはどんな介入ができるのか」との質問に,医師(=人間)を正解とせず全く疾患のフレームワークがないところからのほうが,(最善の)治療に行き着くかもしれないというコメントが印象的でした。


AIには物事の意味はわからない,しかし意味のないところからこそ新しい疾患概念,あるいは治療が生まれるかもしれないという感じですかね。


いい講演でした。

津川友介先生の講演「ビッグデータやAIで医療の未来はどう変わるのか?」を聴く@仙台_a0119856_00013938.jpg


by dobashinaika | 2018-10-11 00:07 | 医療の問題 | Comments(0)


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