AF burdenという概念の重要性と限界:Circulation誌

長らくお休みしてすみません。
最近家庭医療の方で仕事やら関心が集中してしまい,ブログから遠ざかっていました。発信はやはり大切でですので,またぼちぼち書いていきます。

この間も論文ウォッチはやってまして,いくつか興味深いネタが溜まっています。
本日は最近最も考えさせられた論説から


ACCのまとめサイトから引用です。

1.現行ガイドラインでは,心房細動の出現は,30秒以上継続し,絶対的に不規則のRR間隔,認識可能で明らかなP波の欠如と定義されている。AF burden(心房細動負担)は,最長の心房細動持続時間,発作回数,ある一定期間での心房細動累積時間など多くの表現方法がある

2.多くの研究は,心房細動を二分法(あるかないか)で評価しており,AF burdenは評価されていない

3.現行ガイドラインでは,抗凝固薬の適応決定に血管系リスク(CHA2DS2-VAScスコアで評価)の使用を勧めており,AF burdenは考えられていない。データの混合はあるが,現在最強のエビデンスは発作性よりも持続性心房細動のほうが高リスクであることが示唆されている

4.AF burdenは,デュアルチャンバー植込み型デバイス(ペースメーカー,ICD)で評価される。ループレコーダーやシングルチャンバーはRR感覚を指標とするので,感度,特異度はデュアルより落ちる。

5.植込み型デバイスからのデータでは,5〜6分の比較的短いAFエピソードでさえ脳卒中のリスクを増やすことが知られている。興味深いことに,植込み型デバイスの患者では多くの虚血性脳卒中が,心房細動エピソードとは関係ない時期に起きている。脳卒中をきたすAF burdenの閾値はわかっていない

6.心房細動は心不全,認知症,心筋梗塞,慢性腎臓病から末期腎不全,心臓突然死,全死亡のような非脳卒中にも関連がある

7.運動不足,肥満,高血圧は心房細動罹患を増やす傾向がある。しかし,動脈硬化あるいはライフスタイルの因子がどれほどAF burdenに寄与しているかは明らかではない

8.体重減少,適正体重維持がAF burden減少に効果がある。強力な降圧がAF burdenを減らすかどうか定かではない。ストレス管理(ヨガ,マインドフルネス)がAF burdenを低下させるかどうかのRCTが求められている

9.一過性のAF burdenの累積あるいはAF密度というコンセプトが提案されてきている。AF密度は全心房細動エピソード中の最小時間によって測定されるもので,仮説に基づく斉一なburdenからどのくらい逸脱しているかで表現される。すなわち同じAF burdenであっても,多くの短い心房細動発作よりも,少なくても長いエピソードのほうがAF密度は高い

10.モニタリング技術の発展はAF burdenの顕著は変化の同定を可能にするであろう

### 以前から疑問に思っていたことをまとめてくれた内容です。同じ心房細動でも,数分間の発作と長時間の発作では脳卒中リスクは違って当然ですが,現行ガイドラインはとにかく心電図で心房細動が見つかれば「心房細動症例」として抗凝固薬適応のまな板に乗ってしまうことになります。持続時間とか発作回数が当然考慮されてなければならないのにおかしい,と思っていました。

しかしそれを正確に測定する手段がないのです。発作性心房細動例全例にループレコーダーを植え込むわけにも行きません。長時間型のホルター心電図も発作性心房細動だけの患者さんには負担です。

この問題,無症候性心房細動の同定問題と同根で評価方法に鍵があるようです。例えば非常に軽量で湿布感覚で貼付できるようなデバイスとか,スマホでAF burdenまでわかれば,CHA2DS2-VAScスコアなども変わってくるかもしれません。

$$$ 居座られましたw
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by dobashinaika | 2018-05-12 05:49 | 心房細動:診断 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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