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欧州不整脈学会(EHRA)のNOAC使用実践ガイド改訂版は非常に実戦的で細かい:EHJ誌


欧州不整脈学会(EHRA)から2013年に出版されたNOAC使用に関する実践的ガイドが改訂になっております。
前回同様非常に実践的で,臨床上よく遭遇する場面で具体的に何をどうしたらよいかということが,豊富なエビデンスを交えて事細かに書かれています。
ACCまとめサイトを引用します。



1. NOACの禁忌
・NOACの禁忌は、機械弁、中等度〜高度の僧帽弁狭窄(おおむねリウマチ熱由来)である。
・生体弁、僧帽弁修復術後、TAVI後の患者についてのデータは少ないが、処方は許容される。

2. 構造的フォローアップ
・NOAC使用においては、構造的なフォローアップが推奨される。
・構造的フォローアップとは,NOACの適応についての記載、ベースラインの検査データ(Hb、腎機能、肝機能、凝固能)、教育の提供、1年以上の併存疾患のフォローアップからなる。腎機能低下の高齢者では,頻回の検査が必要である。
欧州不整脈学会(EHRA)のNOAC使用実践ガイド改訂版は非常に実戦的で細かい:EHJ誌_a0119856_23135370.png

3. 腎機能チェック
・CCrでの腎機能算定が重要である。適切な容量設定にCCrが使われる。
・CCr<15-30ml/minあるいは透析患者はNOACはすすめられない。
・(注;米国ではアピキサバンはクレアチニン値,体重,年齢(欧州とは用量が異なる)で用量決定。アピキサバンとリバーロキサバンはFDAで透析時使用が認可されている)

4. 肝機能チェック
・NOAC使用前,肝機能チェックも重要である。
・NOACはChild-Pugh分類Cの肝機能障害には禁忌
・リバーロキサバンは分類Bでも禁忌

5. ワルファリン⇔NOACの切り替え
・ワルファリンからNOACへのスイッチは、INR,<2.5(筆者注:日本では70歳未満2.0,70歳上1,6)で開始される。
・NOACからワルファリンへのスイッチ時は,INR<2(日本では上記数値以上)になるまでNOACを併用する。NOAC停止後1〜3日は、INRの治療域停留の確認のためINR測定を行う。

6. NOACの薬物相互作用
・NOACの薬物相互作用は少ないが,未だに重要な相互作用はある
・P-糖蛋白阻害薬,CYP3A4関連薬剤など
・ドロネダロン,リファンピシン,HIVプロテアーゼ阻害薬,イトラコナゾール,ケトコナゾール,ボリコナゾール,セントジョーンズワート,デキサメサゾンは重要

7. 非致死性出血時
・正常腎機能であれば,NOACの血中濃度は12〜24時間以内に正常化するはず
・腎機能障害患者は,特にダビガトランでは血中濃度正常化は延長する。

8. 致死性出血時
・ダビガトランでは,イダルシズマブ5mgを15分以上かけて投与される。
・Xa阻害薬では,プロトロンビン複合体製剤50U/kgが投与される。
・すべての患者でサポーティブ治療:機械的止血,内視鏡的または外科的止血(適応ありなら)がなされるべき。

9. 消化管出血後
・脳卒中リスクが残存し再出血リスクを上回るならば,NOACはできるだけ速やかに(通常4-7日)再投与べき。

10. 外科手術時
・術前24-48時間でのNOAC休止で,手術は安全に施行可能。
・CKD患者でダビガトラン服用者は上記より長い休止期間が必要。
・出血リスクが回避されたならば,術後72時間以内にNOAC標準用量を再開する。

11. 急性冠症候群時
・NOAC服用中患者においては,ST上昇型心筋梗塞あるいは発症24-48時間の非ST上昇型心筋梗塞ではPCI(できれば橈骨動脈アプローチ)が可能である。
・NOACと抗血小板薬併用時はPPIを考慮せよ

12. 抗血小板薬併用
・NOAC+抗血小板薬単剤あるいは2剤併用例では,抗血小板薬併用期間の出来る限りの短縮が望まれる。
・待機的PCI患者は,2剤(NOAC+クロピドグレル,退院後1年)治療が良い。
・ACS患者(PCI施行)は,3剤3ヶ月、2剤(前記)を1年後まで。
・1年後はすべての患者でNOAC単剤。

13. 急性脳梗塞発症時
・NOAC内服患者では,もしNOACの血中濃度が測定下限以下であるか,最終内服時間から48時間以上で腎機能が正常であれば,血栓溶解療法を行う。神経学的障害にもよるが,CTで出血を否定できれば3〜14日以内の再開を考える。

### 前回に比べると,「構造的フォローアップ」のキーコンセプト同じですが,できるだけ通常量を使うことが強調され,またCCr別にNOACの用量設定も交えた細かな使い分けや抗血小板薬併用期間など,これまでの各種ガイドラインにはない踏み込んだ内容も見られます。
(前回についてのブログはこちら

転倒リスクや心房細動と悪性腫瘍の項目も追加されています。

これ完全和訳すれば売れるかも。それにガイドラインいらないかもしれません(適応についての記載はないですが)。

$$$ 今日のにゃんこ
欧州不整脈学会(EHRA)のNOAC使用実践ガイド改訂版は非常に実戦的で細かい:EHJ誌_a0119856_23124715.jpg

by dobashinaika | 2018-03-30 23:18 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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