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”ワルファリン、使えてこそのNOAC/DOAC”という演題で講演しました。

昨日は,ワルファリンを販売している製薬企業が協賛する通称「血液サラサラ研究会」で講演いたしました。今時ワルファリン推しの講演会など皆無でしょうし,開催してもその講演会のCP比は当然赤字でしょうから,協賛していただいた製薬企業(もちろんE社)の懐の深さに深謝致します(ただし,同社の協賛は今回が最後とのことで残念ですが。。)
”ワルファリン、使えてこそのNOAC/DOAC”という演題で講演しました。_a0119856_23494727.jpg
講演の主要スライドを掲載しました。
骨子はこんな感じです。

NOACの「不都合な真実」は患者階層ごとにある
”ワルファリン、使えてこそのNOAC/DOAC”という演題で講演しました。_a0119856_00030335.jpg


レベル0(RCT参加者)
・ワルファリン群のターゲットINRが日本のそれより高い
・NOACの用量設定,服薬回数について根拠希薄な部分がある

レベル0-レベル1(実臨床患者;アドヒアランス良好)間
・RCT基準に合致する実臨床患者は50〜70%くらい
・RCTと実臨床を埋めるRWDもいまいち混沌としている(FushimiのアウトカムはNOAC=ワルファリン)

レベル1−2(実臨床患者:アドヒアランス不良)間
・NOACはよく管理されたワルファリンに比べアドヒアランスが良いとは必ずしも言えない
・NOACを飲み忘れた場合のリスクは高い

レベル2−3(高コストのため飲めない方)間
・低所得者,年金生活者,療養病床/施設入所者は服用できない

レベル3−4(診断されていない心房細動)間=これは抗凝固薬全体の不都合です。
・潜因性脳塞栓は33%も存在

その他:NOACの不都合
・4つのNOACいずれも出血その他でだめで,ワルファリンしか使えない場合がある。
・小出血,脱水時などモニタリングによるこまめな管理をしたいができない。
・人工弁,僧帽弁狭窄症は禁忌,左室内血栓は適応外

などお話し,LIp先生の使わけアルゴリズムを示しまとめました。
”ワルファリン、使えてこそのNOAC/DOAC”という演題で講演しました。_a0119856_23483523.jpg
もちろん異論はあると思われます。そうはいっても,NOACの簡便さと頭蓋内出血の少なさの魅力は大きいのではないかと。確かにNOACが抗凝固薬の普及に果たした役割は非常に大きいと思われます。わたしも実際半数の人には処方しています。

ですが,私としてはもちろん「ワルファリンだけでいい」と言いたいわけではなく,まだまだ「ワルファリンの活躍できるテリトリーは多く」,「ワルファリンでしか対応できない症例も少なくない」,ので「非常に低価格で,使い勝手次第ではNOAC/DOACと同等なアウトカムを持つ従来薬の使いこなしスキルを,臨床家としては持ち合わせておきたい」と言いたいのです。
”ワルファリン、使えてこそのNOAC/DOAC”という演題で講演しました。_a0119856_23475939.jpg

なお,本講演会も,いつもどおり製薬企業との間で金銭的COIはありません。
”ワルファリン、使えてこそのNOAC/DOAC”という演題で講演しました。_a0119856_23471116.jpg
$$$ 週末所用で30数年ぶりにシーズン最盛期の京都へ。永観堂の凄まじいばかりの紅葉です。
”ワルファリン、使えてこそのNOAC/DOAC”という演題で講演しました。_a0119856_23532141.jpg













by dobashinaika | 2017-12-01 00:06 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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