医師,患者に対する質の高い多面的な教育介入により,抗凝固薬の処方は増加する:Lancet誌
疑問:心房細動の抗凝固療法において多面的な教育介入は良いのか?
方法:・2アーム,前向き,国際比較試験
・心房細動で抗凝固療法適応患者
・介入群:質の高い教育的介入
・対照群:通常のケア
・主要アウトカム:1年後の抗凝固薬処方の変化.
・副次アウトカム:脳卒中
結果:
1)2281人:5カ国(アルゼンチン,ブラジル,中国,インド,ルーマニア),48施設
2)平均追跡期間:12ヶ月
3)抗凝固薬処方増加率:
介入群68→80%
通常群64→67%
4)絶対減少:9.1%,オッズ比:3.28,p=0.0002
5)脳卒中:介入群オッズ比0.48 (95%CI 0.23-0.99, p=0.043)
解釈:抗凝固薬処方増加を目的とする,心房細動患者に対する多施設,多面的教育介入が,抗凝固薬の処方割合を明らかに増加させた。こうした介入は,世界中の心房細動患者における脳卒中予防促進の可能性を持っている。
ファンド:Bayer, Boehringer Ingelheim, Bristol-Myers Squibb, Daiichi Sankyo, and Pfizer
### 介入群での介入内容は,患者,家族に対する,教育的パンフ,ウェブまたはビデオによる教育資料。および医師,看護師,ヘルスワーカー,その他のスタッフによる患者,家族への抗凝固薬のリスクベネフィットに関する動機づけ。各ヘルスプロバイダへのガイドラインにおける推奨についてのシステマティックレビューの配布、Eメールやwebセミナー,ポッドキャスト,専用モノグラフ,ソーシャルメデイア,インスタントメッセージ,電話等による抗凝固薬情報の提供
などどのことです。
multifaceted,つまり多面的な教育介入とは,パンフ,ウェブ,ビデオなど駆使して患者さん,ご家族に抗凝固薬についての情報を提供するの当時に,医療従事者にもガイドラインや論文などをポッドキャストなどまで動員してその適応つき啓蒙すると言った内容です。
たしかに,抗凝固薬投与開始時には,そのリスクべネフィトから飲み方に至るまで,非常に多くの情報についての説明が必要になります。診察室での医師からだけの通リ一辺の説明よりも多職種から,各種メディアqを多用しての,多面的なアプローチのほうが印象に残り,抗凝固薬処方へのモチベーションが上がるのは当然と思われます。
同様の,質の高い介入を看護師がすることでのアウトカム改善についての研究もあります。
これからは抗凝固療法(あるいは全ての医療行為)についての情報提供は,医師だけによるモノトーンなものから,ITを駆使しての,多職種による多面的なものが求められるものと思われます。
$$$ ダビンチとミケランジェロのデッサンに会ってきました。デッサンといえども,手を伸ばすと柔らかな肌をすぐにでも感じ取れるような,そして今にも絵からこちら側に飛び出てきそうな生身の”ひと”がそこにいました。全身鳥肌感動が瞬時に味合える幸せ。
by dobashinaika
| 2017-09-21 00:23
| 心房細動診療:根本原理
|
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by dobashinaika
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