ACCによる周術期の抗凝固療法に関する意思決定パスウェイ:ヘパリンブリッジの適応は超限定的
2017 ACC Expert Consensus Decision Pathway for Periprocedural Management of Anticoagulation in Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation
A Report of the American College of Cardiology Clinical Expert Consensus Document Task Force
Journal of the American College of Cardiology DOI: 10.1016/j.jacc.2016.11.024
ACCから周術期の抗凝固療法に関するエキスパ−トコンセンサスがでています。かなり詳しくシェーマも充実しており,現時点での集大成的なレビューと思われます
とてもまとめきれませんので,ACCのメルマガでお勉強
1.ここでの意思決定パスウェイは経口抗凝固薬長期内服の非弁膜症性心房細動における周術期の抗凝固薬管理に関する意思決定の迅速で有用なツールとなる
2.抗凝固薬中止を考えるときは,ビタミンK阻害薬(長期半減期)かDOAC((短期半減期)か,患者の出血リスク,手技の出血リスク,追加の医療情報に気を配る
3.以下の手技(ペースメーカー, ICD植え込みなど)は低出血リスクであり,抗凝固薬は継続
4.患者出血リスクはHAS-BLEDスコアを評価する。それに加え最近3ヶ月以内の出血,血小板以上,INRの上昇(VKA),手術手技による出血の既往に留意する
5.患者に出血リスクがないか低リスク手技場合かつ患者出血リスクが高くないときは,VKAは中止してはならない
6.VKAを中止するときは,INR1.5-1.9の場合手技の3〜4日前,INR2.0-3.0の場合5日,3.0を超える場合少なくとも5日中止する。手技前24時間以内にINRを再チェック
7.ヘパリンブリッジを考えるのは次の2つのシナリオのときのみ
1)VKA使用患者で年間10%以上の脳卒中/全身性塞栓症リスク(CHA2DS2-VAScスコア27^9点)を持つ,または3ヶ月以内の虚血性脳卒中
2)VKA使用患者で特に出血リスクのない脳卒中/全身性塞栓症の既往(3ヶ月以上前)のある人
8.DOACを中止するときは,中止日数はクレアチニンクリアランスとその手技の出血リスクで決まる。標準的な表はこの意思決定プロセスに沿っている。ヘパリンブリッジはDOAC治療には適応なし(すみません。表は掲載していません)
9.抗凝固薬再開時は,完全止血の確認をすべき。その後24時間以内にVKA治療再開と24〜72時間のヘパリンブリッジ(適応ありの場合。継続時間は出血リスクによる:筆者注:低出血リスクは24時間以内,高リスク例は48〜72時間ヘパリンブリッジ後)。DOACはもし患者が経口投与に耐えられないのでなければ,ヘパリンブリッジなしに24〜72時間前(出血リスクによる)に再開すべきではない(筆者注:高リスクでは24〜72時間経ってから,低リスクではその日のうちに)
10. DOACは機械弁患者に使用してなならない
### このレビューはアルゴリズムのシェーマが充実していますので,興味のある方は見てみてください。ただしアメリカさんらしく?いろんな場合を想定して盛り過ぎの感があり,ここまで書かなくてもわかるよ的な感じかもしれません。
ヘパリンブリッジは,VKAではかなり虚血性脳卒中の高リスクまたは既往歴のある人に限っており,NOACでは必要ないと言い切っているのが小気味よいです。
なお高出血リスクとはHAS-BLEDスコア3点以上のことかと思われます。
$$$ 仙台では恒例のどんと祭です。
A Report of the American College of Cardiology Clinical Expert Consensus Document Task Force
Journal of the American College of Cardiology DOI: 10.1016/j.jacc.2016.11.024
ACCから周術期の抗凝固療法に関するエキスパ−トコンセンサスがでています。かなり詳しくシェーマも充実しており,現時点での集大成的なレビューと思われます
とてもまとめきれませんので,ACCのメルマガでお勉強
1.ここでの意思決定パスウェイは経口抗凝固薬長期内服の非弁膜症性心房細動における周術期の抗凝固薬管理に関する意思決定の迅速で有用なツールとなる
2.抗凝固薬中止を考えるときは,ビタミンK阻害薬(長期半減期)かDOAC((短期半減期)か,患者の出血リスク,手技の出血リスク,追加の医療情報に気を配る
3.以下の手技(ペースメーカー, ICD植え込みなど)は低出血リスクであり,抗凝固薬は継続
4.患者出血リスクはHAS-BLEDスコアを評価する。それに加え最近3ヶ月以内の出血,血小板以上,INRの上昇(VKA),手術手技による出血の既往に留意する
5.患者に出血リスクがないか低リスク手技場合かつ患者出血リスクが高くないときは,VKAは中止してはならない
6.VKAを中止するときは,INR1.5-1.9の場合手技の3〜4日前,INR2.0-3.0の場合5日,3.0を超える場合少なくとも5日中止する。手技前24時間以内にINRを再チェック
7.ヘパリンブリッジを考えるのは次の2つのシナリオのときのみ
1)VKA使用患者で年間10%以上の脳卒中/全身性塞栓症リスク(CHA2DS2-VAScスコア27^9点)を持つ,または3ヶ月以内の虚血性脳卒中
2)VKA使用患者で特に出血リスクのない脳卒中/全身性塞栓症の既往(3ヶ月以上前)のある人
8.DOACを中止するときは,中止日数はクレアチニンクリアランスとその手技の出血リスクで決まる。標準的な表はこの意思決定プロセスに沿っている。ヘパリンブリッジはDOAC治療には適応なし(すみません。表は掲載していません)
9.抗凝固薬再開時は,完全止血の確認をすべき。その後24時間以内にVKA治療再開と24〜72時間のヘパリンブリッジ(適応ありの場合。継続時間は出血リスクによる:筆者注:低出血リスクは24時間以内,高リスク例は48〜72時間ヘパリンブリッジ後)。DOACはもし患者が経口投与に耐えられないのでなければ,ヘパリンブリッジなしに24〜72時間前(出血リスクによる)に再開すべきではない(筆者注:高リスクでは24〜72時間経ってから,低リスクではその日のうちに)
10. DOACは機械弁患者に使用してなならない
### このレビューはアルゴリズムのシェーマが充実していますので,興味のある方は見てみてください。ただしアメリカさんらしく?いろんな場合を想定して盛り過ぎの感があり,ここまで書かなくてもわかるよ的な感じかもしれません。
ヘパリンブリッジは,VKAではかなり虚血性脳卒中の高リスクまたは既往歴のある人に限っており,NOACでは必要ないと言い切っているのが小気味よいです。
なお高出血リスクとはHAS-BLEDスコア3点以上のことかと思われます。
$$$ 仙台では恒例のどんと祭です。
by dobashinaika
| 2017-01-16 23:55
| 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術
|
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土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
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筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
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