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抗凝固薬の服薬アドヒアランスに関する総説-なぜ抗凝固薬は飲めないのか:TH誌


Thromb HaemostにNOACのアドヒアランスに関する総説がでています。

Adherence to oral anticoagulant therapy in patients with atrial fibrillation Focus on non-vitamin K antagonist oral anticoagulants
Thromb Haemost 2017 http://dx.doi.org/10.1160/TH16-10-0757

大雑把にまとめます。

<服薬アドヒアランスに影響する因子>
●患者側要因
・特性:年齢,民族,教育レベル,社会経済的ステータス,要介護度
・医療的状況:合併症,障害度,脆弱性,認知症,薬剤忍容性+副作用,ポリファーマシー
・行動要因:社会的孤立,精神疾患
・医学的知識への理解:薬剤服薬及び中止に関連したリスクとべネフィットへの理解

●医師/ヘルスシステム側要因
・知識:ガイドライン遵守度,推奨やリスク対処への気づき
・職場環境:専門施設,ヘルスシステムの構築,医師患者間の良好な関係,多職種アプローチ
・コスト:アクセシィビリテイ(公的,私的サービス),経済的要因

<NOACのアドヒアランス,パーシステンス>
・半減期が短いだけNOACはワルファリンよりアドヒアランス不良は許されない
・英国のGPデータベースでは,ワルファリンのアドヒアランスは1年目で70%,2年目で50%
・NOACの第3相試験では,18〜35%の非継続率。このうち副作用による中止はわずか。リアルワールドより厳格の管理での数値
・NOACのリアルワールドデータでは,38.0〜99.7%と極めて幅広い。80%を良好とする研究が多い
抗凝固薬の服薬アドヒアランスに関する総説-なぜ抗凝固薬は飲めないのか:TH誌_a0119856_23481542.png

<NOACのアドヒアランス/パーシステンスに関する考え方>
・一般的には1日2回のほうが,1日1回より血中濃度が良好に継続しやすい
・どのNAOCが最もネットクリニカルベネフットが良いかについては不明
・モデルデータからは,1日2回薬で1〜2錠/日飲まないよりも,1日1回で全然飲まなかったほうが血中濃度減少が大きいい
・臨床上有効な抗凝固モニターがない以上,しっかり飲んだかどうかの確認が重要
・現在,ピーク濃度が出血を規定するとされている。特に1日1回に比べ1日2回ではピークが低い
・このことは安全性を示唆するが,エドキサバンの第2相試験では同用量で1日2回よりも1回のほうが出血が少ないことが示されている

<NOACでのアドヒアランス向上策>
・ワルファリンではINRに基づく管理ができる。70%を概ね良好とする
・SAMe-TT2R2スコア(女性,60歳未満,既往歴,影響薬剤,喫煙,非白人)はアドヒアランス良好の可否を予測する因子
・同スコア2点以上では積極的に患者教育
・定期的なコンタクト,多職種からのアプローチ
・ヘルスプロバイダー間のエビデンス共有のアップデート:各種ソフト,e-サポート
・中心的な抗凝固クリニックにより運営される長期の管理
・患者教育により,抗凝固薬による脳卒中予防の重要性と実際の薬剤服用法の認識の定着 etc.

### 超厳格アドヒアランス管理のRCTでさえ最高で34.4%ものひとが服薬中途で脱落します。なぜこれほど抗凝固薬が飲めないのか。私は背景に抗凝固薬のもつ2つの宿命があると考えます。

1つは「退屈な薬である」ということ。ワルファリンはINRがありました。それとて血圧などに比べてなんとなく実感がわかない,むしろ出血の不安を掻き立てることさえある指標でした。ましてやNOAC。効いているのかどうか,危ないのかどうか全く実感することができません。飲んでいて喜びもヤバさ加減も湧かない薬,それがNOACです。

もう1つは「不条理な薬」であるということです。上記のように効いている実感がわかない上に,更に出血という重い有害事象がつきまとうし,実際皮下出血などはよく経験する。なんと割に合わない,不条理な薬なのでしょうか。

退屈で不条理と来ては70%程度の服薬率も頷けるかもしれません。ワタシ的には定期的に腎機能や貧血,aPTT,PTなどを採血し,飲まないことの脳梗塞リスクの重大性を薬剤師,看護師なども交えて確認,教育。認知症早期評価に傾注と言った当たり前の作戦しか思い浮かびません。

同様の総説は以下です。
http://dobashin.exblog.jp/20382624/

### ワルファリンは永遠に不滅です,なんて書いてワルファリン礼賛者のように感じられたかもしれないので,ワタシの基本的スタンスを確認。

以下のブログで示しているように「時と場合により使い分ける」です。大切なことはワルファリンかNOACかの2項対立ではなく,各薬剤の長所欠点を熟知して使うということです。殺鼠剤だったワルファリンだって時と場合によってはこれしかない場合もある。自分がAFのときだって時にはワルファリンのほうがいいこともあればNOACのほうがいい状況になることもある。こっちのほう絶対推し,だけはしないようにしたいということです。それこそがscientificな態度だと思うわけです。
http://dobashin.exblog.jp/21745479/

$$$ 昨日観ました。「真田丸」「シン・ゴジラ」とお気に入り豊作だったことしの白眉とも言うべき。非日常とは日常にこそ潜む,そして日常は非日常の下で連綿と息づく,そう感じます。
抗凝固薬の服薬アドヒアランスに関する総説-なぜ抗凝固薬は飲めないのか:TH誌_a0119856_2358456.jpg

by dobashinaika | 2016-12-05 23:52 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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