スタチンのエビデンスをどう解釈するか:Lancetの総説より


Interpretation of the evidence for the efficacy and safety of statin therapy
Lancet DOI: http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(16)31357-5


Lancetにスタチン療法の有効性安全性に関するエビデンスの解釈に関する総説が掲載されています。
週刊誌などでも,その適応が話題となっており,この際整理したいと思います。
例によってACCのメルマガで9ポイントにまとめてくれていますので,それを訳します。

1.RCTはアウトカムの違いを明確化し,治療と効果の因果関係を明らかにする。

2.多数の異なるタイプの患者対象に異なるクライテリアで行われるRCTは,治療法に対する信頼できる情報を提供し,異なる集団への適応を可能にする。

3.データベースに基づく大規模観察研究は,稀な例においても効果を確認することができる

4.RCTから得られる特異的なアウトカムの平均的効果を観察研究での絶対リスクに当てはめるには,絶対リスクの総合的評価が必要

5.
・RCTではLDLコレステロールを40mg/dl下げるごとに大血管イベント(冠動脈死,心筋梗塞,脳卒中,冠動脈再建術)を25%減らす
スタチン療法の絶対的効果は各例における心血管イベントの絶対リスクとLDLCの減少度とに依存する
・たとえば,LDLCを低コストスタチン(アトルバスタチン40mg/日;月4ドル,80mg/dl)を5年間10,000人に使うと,二次予防患者では1,000人(10%絶対効果),一次予防では500人(5%絶対効果)
・より長期間使用したほうが大きな効果が得られる

6.   
・長期間のスタチン使用には重大な副作用がある。
・アトルバスタチン40mg/日は10,000例5年間でミオパチー5例(CPK上昇,やめないと横紋筋融解症)
・50〜100例で新規糖尿病発症
・5〜10例で脳出血

7.スタチン療法は,5年間10,000人に50−100人に症候性の有害事象(筋肉痛,脱力)を起こす。しかしながらRCTでは,それらの有害事象がスタチンに起因するとは結論付けられない(小田倉注:統計的有意差がつかないなど)

8.・RCTに基づけば,有害事象が効果と副作用のバランスを超えて多いという事はできない。
・有害事象が過大評価されるために,高リスク患者がアンダーユーズになるかもしれない。
・筋肉関連症状は服用中止で速やかに改善する一方,薬を飲まないことによる心筋梗塞や脳卒中は重大な結果をもたらす

9.今後の見通し:著者らは動脈効果疾患の予防と治療に関する国際的専門集団であり,多くの高リスク患者がまれな副作用た恐れのためにスタチンをやめたり,効果のはっきりしない高価な代替治療を求めることに警鐘を鳴らしている

### すでに週刊誌記事に対する幾つかのブログでかねがね述べてきたことが,ここにも凝縮されています。

私が一番,危惧することがが上記「8」のなかで「有害事象が過大評価されるために,高リスク患者がアンダーユーズになるかもしれない」としっかり書かれていました。
ただし,特に一次予防での絶対リスク減少は,日本人の場合欧米人よりかなり低いので,上記のことは当てはまらないと思われますでの注意が必要です。
(日本人の適応については一応まとめたのでこちらを参照ください)

#### こうした論文を目にするたびに,医療に限らず人生における意思決定について考えさせられます。以下意思決定に関する談笑,もとい断章

〜未来の自分の行動を決定するには,世界(リスク)を認知する必要がある。

〜世界の認知には正しいリテラシーが必要である。だから私たち医療者は。日々学習するのである。

〜世界とは,そしてリスクとは連続変数であり,行動決定は「する」「しない」の離散変数である。

〜連続変数から離散変数を導くには,必ず飛躍が必要になる。

〜飛躍の幅を決定するのはリテラシーの他に,リスクを語る者に対する信頼度,個人に依存した経験や価値観などの因子が入り込む。

〜飛躍の幅をなるべく狭めるためにリテラシーを磨く必要がある。

$$$ 連休は近場を散策。ひさしぶりに行きました。ポケモンたくさんいました。
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by dobashinaika | 2016-10-11 21:54 | 虚血性心疾患 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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