本当のところ,現実世界でNOACはワルファリンに比べ有効で安全なのか?:BMJ誌
Comparative effectiveness and safety of non-vitamin K antagonist oral anticoagulants and warfarin in patients with atrial fibrillation: propensity weighted nationwide cohort study
BMJ 2016; 353 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i3189 (Published 16 June 2016)
疑問:本当のところ,現実世界でNOACはワルファリンに比べ,有効で安全なのか?
デザイン:大規模国内コホート観察研究
セッティング:デンマークの3つのデータベース,2011年8月〜2015年10月
対象:
・非弁膜症性心房細動,抗凝固薬初投与の61678例
・ワルファリン57%,ダビガトラン150mg21%,リバーロキサバン20mg12%,アピキサバン5mg10%
アウトカム:
・有効性:虚血性脳卒中(一次),複合アウトカム(虚血性脳卒中/全身性塞栓症,虚血性脳卒中/全身性塞栓症+死亡)
・安全性:あらゆる出血,頭蓋内出血,大出血
結果:
1)虚血性脳卒中の診断を厳しくすると,NOACとワルファリンでは有意差なし
2)年間虚血性脳卒中/全身性塞栓症発症率(対ワルファリンハザード比):
・リバーロキサバン(3〜3.3%)0.83(0.66〜0.99)
・ダビガトラン2.8%,アピキサバン4.9%でワルファリンと有意差なし
3)死亡率(対ワルファリンハザード比)
・アピキサバン(5.2%)0.65(0.56〜0.75)
・ダビガトラン(2.7%)0.63(0.48〜0.82)
・リバーロキサバン(7.8%)では有意差なし
4)出血:
・アピキサバン(3.3%),ダビガトラン(2.4%)でワルファリンより有意に少ない(0.62;0.51〜0.74)
・リバーロキサバンはワルファリンと同等(5.3%)
![本当のところ,現実世界でNOACはワルファリンに比べ有効で安全なのか?:BMJ誌_a0119856_1842728.gif](https://pds.exblog.jp/pds/1/201606/19/56/a0119856_1842728.gif)
結論:日常臨床においては,全てのNAOCは有効性,安全性の点でワルファリンの代わりになりうると思われる。虚血性脳卒中の点では,NOAC間で有意差はない。死亡,出血,大出血はアピキサバンとダビガトランでワルファリンより有意に少なかった。
### BMJからNOACvsワルファリンの大きなリアルワールドデータが出ました。
患者背景を見ますと,ダビガトラン150mgは他より若年者でCHA2DS2-VAScスコアもHAS-BLEDスコアも低く,腎機能が良い集団のようです。ワルファリン群が最もリスクの多い患者層のように見えます(結果はマッチングされていますが)。
虚血性脳卒中だけだと3剤とも同様ですが,全身性塞栓症が加わるとリバーロキサバンが最もいいようです。この辺統計上の問題のような気もします。一方死亡率は,リバーロキサバンは他の2剤よりやや高く,ワルファリンと同等で出血が多いところから来ているのかもしれません。
低用量データがないので,日本の実臨床に当てはめるわけには行きませんが,一つの参考にはなります。もうちょっと詳細に読み込んでまたアップします。
$$$ ナス始めました。これから育つのが楽しみ。
![本当のところ,現実世界でNOACはワルファリンに比べ有効で安全なのか?:BMJ誌_a0119856_1813787.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201606/19/56/a0119856_1813787.jpg)
BMJ 2016; 353 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i3189 (Published 16 June 2016)
疑問:本当のところ,現実世界でNOACはワルファリンに比べ,有効で安全なのか?
デザイン:大規模国内コホート観察研究
セッティング:デンマークの3つのデータベース,2011年8月〜2015年10月
対象:
・非弁膜症性心房細動,抗凝固薬初投与の61678例
・ワルファリン57%,ダビガトラン150mg21%,リバーロキサバン20mg12%,アピキサバン5mg10%
アウトカム:
・有効性:虚血性脳卒中(一次),複合アウトカム(虚血性脳卒中/全身性塞栓症,虚血性脳卒中/全身性塞栓症+死亡)
・安全性:あらゆる出血,頭蓋内出血,大出血
結果:
1)虚血性脳卒中の診断を厳しくすると,NOACとワルファリンでは有意差なし
2)年間虚血性脳卒中/全身性塞栓症発症率(対ワルファリンハザード比):
・リバーロキサバン(3〜3.3%)0.83(0.66〜0.99)
・ダビガトラン2.8%,アピキサバン4.9%でワルファリンと有意差なし
3)死亡率(対ワルファリンハザード比)
・アピキサバン(5.2%)0.65(0.56〜0.75)
・ダビガトラン(2.7%)0.63(0.48〜0.82)
・リバーロキサバン(7.8%)では有意差なし
4)出血:
・アピキサバン(3.3%),ダビガトラン(2.4%)でワルファリンより有意に少ない(0.62;0.51〜0.74)
・リバーロキサバンはワルファリンと同等(5.3%)
![本当のところ,現実世界でNOACはワルファリンに比べ有効で安全なのか?:BMJ誌_a0119856_1842728.gif](https://pds.exblog.jp/pds/1/201606/19/56/a0119856_1842728.gif)
結論:日常臨床においては,全てのNAOCは有効性,安全性の点でワルファリンの代わりになりうると思われる。虚血性脳卒中の点では,NOAC間で有意差はない。死亡,出血,大出血はアピキサバンとダビガトランでワルファリンより有意に少なかった。
### BMJからNOACvsワルファリンの大きなリアルワールドデータが出ました。
患者背景を見ますと,ダビガトラン150mgは他より若年者でCHA2DS2-VAScスコアもHAS-BLEDスコアも低く,腎機能が良い集団のようです。ワルファリン群が最もリスクの多い患者層のように見えます(結果はマッチングされていますが)。
虚血性脳卒中だけだと3剤とも同様ですが,全身性塞栓症が加わるとリバーロキサバンが最もいいようです。この辺統計上の問題のような気もします。一方死亡率は,リバーロキサバンは他の2剤よりやや高く,ワルファリンと同等で出血が多いところから来ているのかもしれません。
低用量データがないので,日本の実臨床に当てはめるわけには行きませんが,一つの参考にはなります。もうちょっと詳細に読み込んでまたアップします。
$$$ ナス始めました。これから育つのが楽しみ。
![本当のところ,現実世界でNOACはワルファリンに比べ有効で安全なのか?:BMJ誌_a0119856_1813787.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201606/19/56/a0119856_1813787.jpg)
by dobashinaika
| 2016-06-19 18:02
| 抗凝固療法:リアルワールド
|
Comments(0)
土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
カテゴリ
全体インフォメーション
医者が患者になった時
患者さん向けパンフレット
心房細動診療:根本原理
心房細動:重要論文リンク集
心房細動:疫学・リスク因子
心房細動:診断
抗凝固療法:全般
抗凝固療法:リアルワールドデータ
抗凝固療法:凝固系基礎知識
抗凝固療法:ガイドライン
抗凝固療法:各スコア一覧
抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術
抗凝固療法:適応、スコア評価
抗凝固療法:比較、使い分け
抗凝固療法:中和方法
抗凝固療法:抗血小板薬併用
脳卒中後
抗凝固療法:患者さん用パンフ
抗凝固療法:ワーファリン
抗凝固療法:ダビガトラン
抗凝固療法:リバーロキサバン
抗凝固療法:アピキサバン
抗凝固療法:エドキサバン
心房細動:アブレーション
心房細動:左心耳デバイス
心房細動:ダウンストリーム治療
心房細動:アップストリーム治療
心室性不整脈
Brugada症候群
心臓突然死
不整脈全般
リスク/意思決定
医療の問題
EBM
開業医生活
心理社会学的アプローチ
土橋内科医院
土橋通り界隈
開業医の勉強
感染症
音楽、美術など
虚血性心疾患
内分泌・甲状腺
循環器疾患その他
土橋EBM教室
寺子屋勉強会
ペースメーカー友の会
新型インフルエンザ
3.11
Covid-19
未分類
タグ
日本人(44)ケアネット(40)
どばし健康カフェ(35)
高齢者(32)
リバーロキサバン(29)
リアルワールド(28)
ガイドライン(26)
新規抗凝固薬(25)
ダビガトラン(24)
アドヒアランス(23)
CHA2DS2-VAScスコア(21)
ワルファリン(21)
共病記(20)
ESC(20)
カテーテルアブレーション(19)
心不全(19)
無症候性心房細動(14)
認知症(14)
消化管出血(13)
頭蓋内出血(13)
ブログパーツ
ライフログ
著作
プライマリ・ケア医のための心房細動入門 全面改訂版
編集
最近読んだ本
最新の記事
心房細動アブレーションのタイ.. |
at 2025-01-05 12:11 |
JAMA Networkによ.. |
at 2025-01-04 17:33 |
ヨーロッパ心臓病学会の新しい.. |
at 2024-09-01 23:53 |
心房細動とHFrEF:昔から.. |
at 2024-08-18 21:39 |
AF burden :新たな.. |
at 2024-08-15 14:46 |
高齢の心房細動患者における2.. |
at 2024-06-25 07:25 |
2024年JCS/JHRS不.. |
at 2024-03-21 22:45 |
日本独自の新しい心房細動脳梗.. |
at 2024-03-17 22:31 |
心房細動診療に残された大きな.. |
at 2024-01-03 23:00 |
東日本大震災と熊本地震におけ.. |
at 2024-01-02 16:11 |
検索
記事ランキング
最新のコメント
血栓の生成過程が理解でき.. |
by 河田 at 10:08 |
コメントありがとうござい.. |
by dobashinaika at 06:41 |
突然のコメント失礼致しま.. |
by シマダ at 21:13 |
小田倉先生、はじめまして.. |
by 出口 智基 at 17:11 |
ワーファリンについてのブ.. |
by さすけ at 23:46 |
いつもブログ拝見しており.. |
by さすらい at 16:25 |
いつもブログ拝見しており.. |
by さすらい at 16:25 |
取り上げていただきありが.. |
by 大塚俊哉 at 09:53 |
> 11さん ありがと.. |
by dobashinaika at 03:12 |
「とつぜんし」が・・・・.. |
by 11 at 07:29 |
以前の記事
2025年 01月2024年 09月
2024年 08月
2024年 06月
2024年 03月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 08月
2023年 06月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 03月
2007年 03月
2006年 03月
2005年 08月
2005年 02月
2005年 01月