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脳卒中低リスクの人への抗凝固薬はこう考える:Stroke誌

Should Atrial Fibrillation Patients With Only 1 Nongender-Related CHA2DS2-VASc Risk Factor Be Anticoagulated?
Stroike;Mya 26;Epub ahead of print


疑問:性差に関係しない脳塞栓危険因子1つ(CHA2DS2-VAScスコア男性1点,女性2点)の人に抗凝固薬は必要か?

方法:
・一般住民対象
・2つの方法(Singer,Connolly)でネットクリニカルベネフィットを算出
・対象8962人:性差に関係しない危険因子0または1つ=25%。うち45%は抗凝固薬なし

結果:
1)平均追跡期間:1,028 ± 1,189日

2)脳卒中/全身性塞栓症年間発症率:危険因子なし0.68%vs.危険因子1つ2.09%(補正後2.82%)

3)危険因子1つの人のネットクリニカルベネフィット:ビタミンK阻害薬>無治療。抗血小板薬は無治療と差なし

結論:性差に関係しない危険因子を1つのみを持つひとにおいて,抗凝固薬の血栓塞栓症におけるネットクリニカルベネフィットは良好。

### 周知のように日本の代表的データベースでは,CHADS2スコア0〜1の人の年間脳卒中発症率は1%に満たないことが示されているわけです。
http://dobashin.exblog.jp/20541922/

1%以下の塞栓症に比べ大出血は1%以上といわれていますので,であれば抗凝固薬は適応にならないはずです。しかし現実にはJ-RHTYMレジストリーでも多くの低リスク患者さんに処方されています。また実際脳血管専門施設に搬送される脳塞栓症例の30%はCHADS2スコア0〜1の低リスク例であり,やはり救うべき対象として考えねばなりません。

どう考えたら良いか。
まあこれまでもさんざん言ってきてはいますが,CHADS2にしてもCHA2DS2-VAScにしても,低スコア層の患者プロフィールには相当の幅があるのです。例えばCHADS2スコア4点となると,糖尿病,高血圧,75歳以上,心不全の4つを合併する例というのは,相当絞られた患者集団です。一方,1点で高血圧だけなどとなると,相当に色々なレベルの人が含まれてしまう。「低リスク層ほど「リスク評価がアバウトになってしまう」。これこそがこうしたスコア化の宿命とも言える原理だと思われます。

ですので,低リスク層には,特に日本人のように欧米よりさらに低リスクの集団を扱う場合は,もう少し別の「サブスコア」みたいなものを考えないと,何でもかんでも適応になってしまうのではないでしょうか。

例えば年齢を70歳でさらに分けるとか,腎機能,左房径,血圧,糖尿病の重症度など,あまり煩雑でないしかし塞栓症に係る指標を新たに見出すことが必要とも思われます。指当り当院では,血圧,糖尿病は少ない薬剤で管理良好な例には1点では処方しないですね。一方,70歳以上でCCrが50前後,あるいは高血圧,糖尿病に複数の薬剤を使用してもやや管理不良などの例には積極的に処方します。左房径はエビデンス待ちです。

ただ指標を多くしてしまうと漏れも出てくるし,評価も煩雑になるというジレンマがある。これまだまだ難題です。

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by dobashinaika | 2016-06-17 21:35 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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