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60歳,CHADS2スコア1点の無症候性心房細動に抗凝固薬は必要か:Circ誌のケーススタディ

How to Manage Occult Atrial Fibrillation Detected on Long-Term Monitoring
Gregory Y.H. Lip
Circulation. 2016;133:1290-1295


Circulation誌から,Lip先生による症例検討です。

症例:60歳,男性。無症状。拡張型心筋症。CRT-D装着
デバイス点検の際,30%の時間帯で高レートエピソードあり。
血圧124/80。糖尿病始め他の心血管リスク無し。左室駆出分画40%。左房径42mm
CHA2DS2-VAScスコア1点。HAS−BLEDスコア0点
アスピリン,ACE阻害薬,スタチン,β遮断薬服用
この患者をどう管理するか?抗凝固すべきか?心房細動は負担となるか?

原因不明の脳塞栓症をcryptgenic strokeと呼びますが,その多くが無症候性心房細動由来と考えられており,様々なモニターデバイスを用いることで,明らかになる可能性が示唆されています。

それを裏付けるエビデンスが数多く紹介されています。

Take−home Messagesは以下のとおり
・無症候性心房細動はよくあるもので,かつ症候性心房細動よりも予後が悪い
・デバイス(植込み型ループレコーダーあるいは最新のペースメーカー)で診断される心房細動もよく認められ,無症候性で短いエピソードの心房性不整脈が明らかとなる
・最近エビデンスはそうした潜在性の心房頻脈が脳卒中/全身性塞栓症のリスクを増加させることを強く示唆する
・脳卒中のリスク因子がある場合,ビタミンK阻害薬(TTR70%以上)またはNOACが良い。

この症例の対処としては,
・CHA2DS2-VAScスコア1点なので,2014年ACC/AHAガイドラインからは抗凝固薬,アスピリン,抗凝固なしのいずれかが勧められる。これに対しESCガイドラインでは患者の好みを考慮の上で抗凝固薬が勧められている(推奨度IIa)。

討論と相談の末,この患者は脳卒中防止を切望しNOAC,とくにアピキサバン5mg1日2回による治療が開始された。アスピリンは中止となった。
60歳,CHADS2スコア1点の無症候性心房細動に抗凝固薬は必要か:Circ誌のケーススタディ_a0119856_2334441.gif


### 60歳,CHA2DS2-VAScスコア1点,CHADS2スコア1点,無症状,拡張型心筋症(CRT-D植え込み)で心房細動が見つかったケースです。日本のガイドラインではダビガトラン,アピキサバンなら推奨,リバーロキサバン,エドキサバン,ワルファリンなら考慮可となります。こうした場合は,スコアに現れないリスクをもう少し細かく診るというのが私の方針です。心不全でも拡張型心筋症で,EFや左房径こそまずまずですが,将来的にも心機能低下が予想されます。また心房細動が1日の30%と多くの負担となっています。

私が主治医であればやはり一応ワルファリンまたはNOACについて患者さんに提案すると思います。いかがでしょうか?

$$$ 近くの小学校校庭を悠々と散歩するネコ
60歳,CHADS2スコア1点の無症候性心房細動に抗凝固薬は必要か:Circ誌のケーススタディ_a0119856_235299.jpg

60歳,CHADS2スコア1点の無症候性心房細動に抗凝固薬は必要か:Circ誌のケーススタディ_a0119856_2352770.jpg

by dobashinaika | 2016-03-30 23:08 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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