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心房細動診療の4本目の柱:包括的心リスク因子管理:JACC誌

JACCから,心房細動管理の4番目の柱についての論説です。

Obesity, Exercise, Obstructive Sleep Apnea, and Modifiable Atherosclerotic Cardiovascular Disease Risk Factors in Atrial Fibrillation
Journal of the American College of Cardiology, Volume 66, Issue 25, Pages 2899-2906


3本柱は,抗凝固療法,リズム管理,レート管理。
4本目は包括的心リスク因子修飾(comprehensive cardiac risk factor modification (RFM))です,

修飾できるリスク因子としては,肥満,高血圧,脂質異常症,糖尿病,運動不足,閉塞性睡眠時無呼吸症候群,冠動脈疾患,年齢,性別(後2社は修飾不可能)が挙げられています。本文ではその他に喫煙とアルコールも挙げられています。
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各項目とも,いくつかの観察研究または項目によってはRCTもいくつか出てきており,そのどれもがこれらの是正により心房細動の発症率あるいはburden(持続時間や発症回数),ひいては脳塞栓や予後にも好影響とのペーパーが目白押しです。

心房細動で通院される方はその多くが高血圧や糖尿病,脂質異常症,肥満を持っておられますので,これらの管理は言われるまでもありません。この中で個人的にも以前から気にしているのはO-SASです。とくにやや肥満で若年者(65歳未満)の心房細動のかたをみたら,まず無呼吸のスクリーニングをすべきと思われます。またおなじく若年者のO-SASをみたら,一度はホルター心電図を行い,また受診のたびに脈拍のチェックは必要かと思います。

注意したいこととして,それぞれのオッズ比はそれほど高くありません。でもだからと言って上記の因子はどれも疎かにはできないものです。また運動,食事など非薬物療法でも十分対応できるものばかりです。

現代の予防医療の最大の問題点は,生活習慣病ごとにガイドラインが独立に存在していることだと思われます。
血圧,血糖,血清脂質,体重,骨密度,過活動膀胱スコア,認知機能検査,などなど,これらのひとつひとつにいちいちガイドライン通りの目標設定を行うことが,ポリファーマシーにつながり,またそれが全体としての個々人のアウトカムを良くするかどうかはわかっていないと思われます。

またそれ以前に全ての合併疾患に,ガイドライン通りに対応し,目標値を全分野で達成するためにはスーパーマン的努力と研さんが必要であり,目標のカバー率はかなり低いものと見込まれます。

当院では,75歳以上で,上記のようなリスクを3つ以上持っておられる脳心血管疾患予防のための受診者,いわゆるmultimobidityの患者さんには,
1)第一に(薬物療法以前に)禁煙と減塩,適度な運動を勧める:そして手作りのパンフを使用し,看護師や管理栄養士から受診のたびに説明する。

2)血圧,血糖,血清脂質はガイドラインの目標値の(strictでなく)中間的なレベルをめざす。

3)80歳以上の超高齢者については血圧以外はあまり厳しい目標を設定しない

4)脳心血管疾患予防薬はなるべく5種類以下に収める

といった事こそを目標としています。

心房細動管理は上記管理の延長として捉えたいと思います。

皆さんはいかがでしょうか?

$$$ 暮れに帰省した時,東北新幹線から見た富士山です。仙台から東京に向かうとき,冬の晴れた日などに大宮あたりからどーんと見えてまいります。
学生の頃最初に見た時,埼玉から富士山が見えるのを知らなくて,秩父山系にはずいぶん大きな山があるなあなどと錯覚したものでした。
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by dobashinaika | 2016-01-06 22:16 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

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