2015年,心房細動関連論文ベスト5
こちらはケアネットにも公開したオフィシャルな?ベスト5です。
例年通り,世の中へのインパクトではなく,私およびプライマリ・ケア医の「現場に直接影響がある」という視点で選んでいます。
第5位;薬剤師の介入によるダビガトランのアドヒアランスの改善
Supriya Shore et al: Site-Level Variation in and Practices Associated With Dabigatran Adherence. JAMA. 2015;313(14):1443-1450
http://dobashin.exblog.jp/21124661/
その後の当院での抗凝固薬管理に大きな影響を与えた論文です。診療所の外来においても,医師だけでなく多職種で構造的,包括的に疾病を管理する視点を再確認しました。
第4位:日本の医療施設における新規経口抗凝固薬服用中の頭蓋内出血の特徴
Naoki Saji et al: Intracranial Hemorrhage Caused by Non-Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulants (NOACs) – Multicenter Retrospective Cohort Study in Japan –. Curculation Journal 2月20日
http://dobashin.exblog.jp/20931826/
日本の脳血管疾患専門施設のリアル・ワールドデータで大変貴重です。日本のNOAC内服下での頭蓋内出血は従来の報告や諸外国の登録研究と比べても軽症であることが示されています。
第3位:多発する心房期外収縮は脳梗塞と関連あり
Bjørn Strøier Larsen et al: Excessive Atrial Ectopy and Short Atrial Runs Increase the Risk of Stroke Beyond Incident Atrial FibrillationJ Am Coll Cardiol. 2015;66(3):232-241
http://dobashin.exblog.jp/21672961/
時々出会う心房期外収縮多発例。やはり注意が必要。
第2位:NOACのリアル・ワールドにおける消化管出血リスク
Comparative risk of gastrointestinal bleeding with dabigatran, rivaroxaban, and warfarin: population based cohort study
BMJ 2015; 350 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h1857
http://dobashin.exblog.jp/21195302/
とくに高齢者では先行発売されているNOACの消化管出血に要注意ということをしっかりと押さえておくべきということだと思われます。
第1位:心房細動患者の手術時ヘパリンブリッジの血栓塞栓率は非施行群と同じ。出血は多い
James D. Douketis et al:Perioperative Bridging Anticoagulation in Patients with Atrial Fibrillation. NEJM June 22, 2015
http://dobashin.exblog.jp/21378213/
この論文のインパクトは大きかったと思われます。これまで当たり前のように,疑いもせずに行ってきた治療の中,いかにエビデンスに乏しく検証されていないものが混じっているか,改めて考えさせられます。
次点(順不同)
心房細動脳卒中の生存期間は1.8年(中央値):Neurology誌
http://dobashin.exblog.jp/21346427/
日本の85歳以上心房細動患者の脳卒中発症率は85歳未満より高いが大出血率は同じ:chest誌
http://dobashin.exblog.jp/21477250/
ワルファリンを適正に管理すれば85歳以上でも安全かつ有効:J-RHYTHMレジストリーサブ解析:CJ誌
http://dobashin.exblog.jp/21610935/
心房細動関連脳卒中の5年生存率は39%:Stroke誌
http://dobashin.exblog.jp/21764539/
日本の大規模コホートでは心房細動のイベント予測因子はCHADS2スコアとやや違う:PLOS one誌
http://dobashin.exblog.jp/21820445/
NOAC導入時の出血、血栓塞栓イベントはワルファリンと有意差なし:Circ誌
http://dobashin.exblog.jp/21480675/
心房細動患者の脳卒中リスク予測はATRIAスコアが最適:JACC誌
http://dobashin.exblog.jp/21893263/
次点が多くてすみません^^
NOAC(DOAC)のリアルワールドデータが出てきて,どのようなときに注意したら良いかの全貌が明らかになってきた感があります。
そんな中で,今後はますます認知症,フレイル,多職種共同,multimobidityと言ったキーワードが軸になっていくように思います。
日々論文を追っていくと,それまで日常的に行ってきた医療行為への信頼性が大きく揺らぐ瞬間出会ったりします。こうした出会いがエビデンスを読み解く楽しみでもあります。
今年1年ご愛読ありがとうございました。来年もよろしくお願い申し上げます。
例年通り,世の中へのインパクトではなく,私およびプライマリ・ケア医の「現場に直接影響がある」という視点で選んでいます。
第5位;薬剤師の介入によるダビガトランのアドヒアランスの改善
Supriya Shore et al: Site-Level Variation in and Practices Associated With Dabigatran Adherence. JAMA. 2015;313(14):1443-1450
http://dobashin.exblog.jp/21124661/
その後の当院での抗凝固薬管理に大きな影響を与えた論文です。診療所の外来においても,医師だけでなく多職種で構造的,包括的に疾病を管理する視点を再確認しました。
第4位:日本の医療施設における新規経口抗凝固薬服用中の頭蓋内出血の特徴
Naoki Saji et al: Intracranial Hemorrhage Caused by Non-Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulants (NOACs) – Multicenter Retrospective Cohort Study in Japan –. Curculation Journal 2月20日
http://dobashin.exblog.jp/20931826/
日本の脳血管疾患専門施設のリアル・ワールドデータで大変貴重です。日本のNOAC内服下での頭蓋内出血は従来の報告や諸外国の登録研究と比べても軽症であることが示されています。
第3位:多発する心房期外収縮は脳梗塞と関連あり
Bjørn Strøier Larsen et al: Excessive Atrial Ectopy and Short Atrial Runs Increase the Risk of Stroke Beyond Incident Atrial FibrillationJ Am Coll Cardiol. 2015;66(3):232-241
http://dobashin.exblog.jp/21672961/
時々出会う心房期外収縮多発例。やはり注意が必要。
第2位:NOACのリアル・ワールドにおける消化管出血リスク
Comparative risk of gastrointestinal bleeding with dabigatran, rivaroxaban, and warfarin: population based cohort study
BMJ 2015; 350 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h1857
http://dobashin.exblog.jp/21195302/
とくに高齢者では先行発売されているNOACの消化管出血に要注意ということをしっかりと押さえておくべきということだと思われます。
第1位:心房細動患者の手術時ヘパリンブリッジの血栓塞栓率は非施行群と同じ。出血は多い
James D. Douketis et al:Perioperative Bridging Anticoagulation in Patients with Atrial Fibrillation. NEJM June 22, 2015
http://dobashin.exblog.jp/21378213/
この論文のインパクトは大きかったと思われます。これまで当たり前のように,疑いもせずに行ってきた治療の中,いかにエビデンスに乏しく検証されていないものが混じっているか,改めて考えさせられます。
次点(順不同)
心房細動脳卒中の生存期間は1.8年(中央値):Neurology誌
http://dobashin.exblog.jp/21346427/
日本の85歳以上心房細動患者の脳卒中発症率は85歳未満より高いが大出血率は同じ:chest誌
http://dobashin.exblog.jp/21477250/
ワルファリンを適正に管理すれば85歳以上でも安全かつ有効:J-RHYTHMレジストリーサブ解析:CJ誌
http://dobashin.exblog.jp/21610935/
心房細動関連脳卒中の5年生存率は39%:Stroke誌
http://dobashin.exblog.jp/21764539/
日本の大規模コホートでは心房細動のイベント予測因子はCHADS2スコアとやや違う:PLOS one誌
http://dobashin.exblog.jp/21820445/
NOAC導入時の出血、血栓塞栓イベントはワルファリンと有意差なし:Circ誌
http://dobashin.exblog.jp/21480675/
心房細動患者の脳卒中リスク予測はATRIAスコアが最適:JACC誌
http://dobashin.exblog.jp/21893263/
次点が多くてすみません^^
NOAC(DOAC)のリアルワールドデータが出てきて,どのようなときに注意したら良いかの全貌が明らかになってきた感があります。
そんな中で,今後はますます認知症,フレイル,多職種共同,multimobidityと言ったキーワードが軸になっていくように思います。
日々論文を追っていくと,それまで日常的に行ってきた医療行為への信頼性が大きく揺らぐ瞬間出会ったりします。こうした出会いがエビデンスを読み解く楽しみでもあります。
今年1年ご愛読ありがとうございました。来年もよろしくお願い申し上げます。
by dobashinaika
| 2015-12-28 21:22
| 心房細動診療:根本原理
|
Comments(0)
土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
S | M | T | W | T | F | S |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 |
27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
カテゴリ
全体インフォメーション
医者が患者になった時
患者さん向けパンフレット
心房細動診療:根本原理
心房細動:重要論文リンク集
心房細動:疫学・リスク因子
心房細動:診断
抗凝固療法:全般
抗凝固療法:リアルワールドデータ
抗凝固療法:凝固系基礎知識
抗凝固療法:ガイドライン
抗凝固療法:各スコア一覧
抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術
抗凝固療法:適応、スコア評価
抗凝固療法:比較、使い分け
抗凝固療法:中和方法
抗凝固療法:抗血小板薬併用
脳卒中後
抗凝固療法:患者さん用パンフ
抗凝固療法:ワーファリン
抗凝固療法:ダビガトラン
抗凝固療法:リバーロキサバン
抗凝固療法:アピキサバン
抗凝固療法:エドキサバン
心房細動:アブレーション
心房細動:左心耳デバイス
心房細動:ダウンストリーム治療
心房細動:アップストリーム治療
心室性不整脈
Brugada症候群
心臓突然死
不整脈全般
リスク/意思決定
医療の問題
EBM
開業医生活
心理社会学的アプローチ
土橋内科医院
土橋通り界隈
開業医の勉強
感染症
音楽、美術など
虚血性心疾患
内分泌・甲状腺
循環器疾患その他
土橋EBM教室
寺子屋勉強会
ペースメーカー友の会
新型インフルエンザ
3.11
Covid-19
未分類
タグ
日本人(44)ケアネット(40)
どばし健康カフェ(35)
高齢者(32)
リバーロキサバン(29)
リアルワールド(28)
新規抗凝固薬(25)
ガイドライン(25)
ダビガトラン(24)
アドヒアランス(23)
CHA2DS2-VAScスコア(21)
ワルファリン(21)
共病記(20)
ESC(20)
心不全(19)
カテーテルアブレーション(18)
無症候性心房細動(14)
認知症(14)
頭蓋内出血(13)
消化管出血(13)
ブログパーツ
ライフログ
著作
プライマリ・ケア医のための心房細動入門 全面改訂版
編集
最近読んだ本
最新の記事
ヨーロッパ心臓病学会の新しい.. |
at 2024-09-01 23:53 |
心房細動とHFrEF:昔から.. |
at 2024-08-18 21:39 |
AF burden :新たな.. |
at 2024-08-15 14:46 |
高齢の心房細動患者における2.. |
at 2024-06-25 07:25 |
2024年JCS/JHRS不.. |
at 2024-03-21 22:45 |
日本独自の新しい心房細動脳梗.. |
at 2024-03-17 22:31 |
心房細動診療に残された大きな.. |
at 2024-01-03 23:00 |
東日本大震災と熊本地震におけ.. |
at 2024-01-02 16:11 |
脳梗塞発症後の心房細動患者に.. |
at 2024-01-01 18:41 |
ACC/AHAなどから202.. |
at 2023-12-10 23:12 |
検索
記事ランキング
最新のコメント
血栓の生成過程が理解でき.. |
by 河田 at 10:08 |
コメントありがとうござい.. |
by dobashinaika at 06:41 |
突然のコメント失礼致しま.. |
by シマダ at 21:13 |
小田倉先生、はじめまして.. |
by 出口 智基 at 17:11 |
ワーファリンについてのブ.. |
by さすけ at 23:46 |
いつもブログ拝見しており.. |
by さすらい at 16:25 |
いつもブログ拝見しており.. |
by さすらい at 16:25 |
取り上げていただきありが.. |
by 大塚俊哉 at 09:53 |
> 11さん ありがと.. |
by dobashinaika at 03:12 |
「とつぜんし」が・・・・.. |
by 11 at 07:29 |
以前の記事
2024年 09月2024年 08月
2024年 06月
2024年 03月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 08月
2023年 06月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 03月
2007年 03月
2006年 03月
2005年 08月
2005年 02月
2005年 01月