ワルファリン管理の新しい指標WCM:Circ QCO誌
Improving Anticoagulation MeasurementNovel Warfarin Composite Measure
Zayd Razouki et al
Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes.2015; 8: 600-607
背景:TTRとINR変動性 (variability)はそれぞれワルファリン管理の指標であり,独立してアウトカムに影響を与える。この2つの複合指標 (warfarin composite measure :
WCM)の有効性を検討
方法:
・対象:ワルファリン服用患者103897人,100の抗凝固クリニック
・TTRと長期のINR変動性を同等に重み付けしたWCMを開発
・アウトカム(心房細動患者40404人):虚血性脳卒中,大出血,致死的出血
結果:
1)WCMは,脳卒中,致死的出血において,最高4分位と最低4分位のはハザード比の差がTTR,INR変動性単独よりも大きかった
2)大出血にはその傾向なし
3)Kappa スコア(2つの診断ツールの一致率)じゃWCMとTTR (k=0,56),INR変動性 (k=0.62)とは中等度の相関があったが,TTRとINR変動制との相関は低かった (k=0,13)。
結論:WCMはワルファリンの合併症リスクを最大限に評価し,TTRやINRの限界をカバーする効果が有る。抗凝固クリニックの優先順位がこの指標を選ぶことにより変化した
### INR変動性 (variability)がはじめて提唱された論文はこちらです。
Comparison of control and stability of oral anticoagulant therapy using acenocoumarol versus phenprocoumon.
何の事はない,対象範囲内での標準偏差です。これを元にINR変動性の有用性を同じ筆者ら既に報告しています(ブログに載せずすみません(^_^;))。
Improving Quality Measurement for Anticoagulation Adding International Normalized Ratio Variability to Percent Time in Therapeutic Range
たしかにTTRが良くても例えば1.6〜2.6の範囲内で先月は1.6,今月は2.6などとばらつく患者もいます。一方,つねにTTRが低めで1.5〜1.6をウロウロしていても,variabilityは良いということもあります。これら2つの組み合わせ指標は,理論的には大変有効だと思われます。
良いのはわかりますが,算出が大変ですね。ソフトをカルテに組み込む必要があります。むしろこうした論文で知りたいのは,variabilityが大きい症例はどういう症例なのか,高齢者がやはり多いのか,食生活に変動がないのか。など逸脱例のプロフィールを知ることかと思います。
ワルファリンにかぎらず,各種NOACのPMSを始めとするリアルワールドデータも続々と出てきていますが,こういうのを見て,「RCTと同じだ」だけで納得しては前進しないと思います。リアルワールドデータは,むしろどんな症例が出血したのか,塞栓症を起こしたのか,どんな症例で低用量への変更が行われていたのかなどの情報活用に使うべきだと思います。
$$$ 散歩中発見の手袋おとしもの,そろそろこんな季節。

Zayd Razouki et al
Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes.2015; 8: 600-607
背景:TTRとINR変動性 (variability)はそれぞれワルファリン管理の指標であり,独立してアウトカムに影響を与える。この2つの複合指標 (warfarin composite measure :
WCM)の有効性を検討
方法:
・対象:ワルファリン服用患者103897人,100の抗凝固クリニック
・TTRと長期のINR変動性を同等に重み付けしたWCMを開発
・アウトカム(心房細動患者40404人):虚血性脳卒中,大出血,致死的出血
結果:
1)WCMは,脳卒中,致死的出血において,最高4分位と最低4分位のはハザード比の差がTTR,INR変動性単独よりも大きかった
2)大出血にはその傾向なし
3)Kappa スコア(2つの診断ツールの一致率)じゃWCMとTTR (k=0,56),INR変動性 (k=0.62)とは中等度の相関があったが,TTRとINR変動制との相関は低かった (k=0,13)。
結論:WCMはワルファリンの合併症リスクを最大限に評価し,TTRやINRの限界をカバーする効果が有る。抗凝固クリニックの優先順位がこの指標を選ぶことにより変化した
### INR変動性 (variability)がはじめて提唱された論文はこちらです。
Comparison of control and stability of oral anticoagulant therapy using acenocoumarol versus phenprocoumon.
何の事はない,対象範囲内での標準偏差です。これを元にINR変動性の有用性を同じ筆者ら既に報告しています(ブログに載せずすみません(^_^;))。
Improving Quality Measurement for Anticoagulation Adding International Normalized Ratio Variability to Percent Time in Therapeutic Range
たしかにTTRが良くても例えば1.6〜2.6の範囲内で先月は1.6,今月は2.6などとばらつく患者もいます。一方,つねにTTRが低めで1.5〜1.6をウロウロしていても,variabilityは良いということもあります。これら2つの組み合わせ指標は,理論的には大変有効だと思われます。
良いのはわかりますが,算出が大変ですね。ソフトをカルテに組み込む必要があります。むしろこうした論文で知りたいのは,variabilityが大きい症例はどういう症例なのか,高齢者がやはり多いのか,食生活に変動がないのか。など逸脱例のプロフィールを知ることかと思います。
ワルファリンにかぎらず,各種NOACのPMSを始めとするリアルワールドデータも続々と出てきていますが,こういうのを見て,「RCTと同じだ」だけで納得しては前進しないと思います。リアルワールドデータは,むしろどんな症例が出血したのか,塞栓症を起こしたのか,どんな症例で低用量への変更が行われていたのかなどの情報活用に使うべきだと思います。
$$$ 散歩中発見の手袋おとしもの,そろそろこんな季節。

by dobashinaika
| 2015-11-24 22:39
| 抗凝固療法:ワーファリン
|
Comments(0)
土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
S | M | T | W | T | F | S |
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
31 |
筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
カテゴリ
全体インフォメーション
医者が患者になった時
患者さん向けパンフレット
心房細動診療:根本原理
心房細動:重要論文リンク集
心房細動:疫学・リスク因子
心房細動:診断
抗凝固療法:全般
抗凝固療法:リアルワールドデータ
抗凝固療法:凝固系基礎知識
抗凝固療法:ガイドライン
抗凝固療法:各スコア一覧
抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術
抗凝固療法:適応、スコア評価
抗凝固療法:比較、使い分け
抗凝固療法:中和方法
抗凝固療法:抗血小板薬併用
脳卒中後
抗凝固療法:患者さん用パンフ
抗凝固療法:ワーファリン
抗凝固療法:ダビガトラン
抗凝固療法:リバーロキサバン
抗凝固療法:アピキサバン
抗凝固療法:エドキサバン
心房細動:アブレーション
心房細動:左心耳デバイス
心房細動:ダウンストリーム治療
心房細動:アップストリーム治療
心室性不整脈
Brugada症候群
心臓突然死
不整脈全般
リスク/意思決定
医療の問題
EBM
開業医生活
心理社会学的アプローチ
土橋内科医院
土橋通り界隈
開業医の勉強
感染症
音楽、美術など
虚血性心疾患
内分泌・甲状腺
循環器疾患その他
土橋EBM教室
寺子屋勉強会
ペースメーカー友の会
新型インフルエンザ
3.11
Covid-19
未分類
タグ
日本人(44)ケアネット(40)
どばし健康カフェ(35)
高齢者(31)
リバーロキサバン(28)
リアルワールド(28)
新規抗凝固薬(25)
ダビガトラン(24)
ガイドライン(24)
アドヒアランス(23)
ワルファリン(21)
CHA2DS2-VAScスコア(21)
共病記(20)
ESC(19)
カテーテルアブレーション(18)
心不全(18)
認知症(14)
無症候性心房細動(14)
頭蓋内出血(13)
消化管出血(13)
ブログパーツ
ライフログ
著作
プライマリ・ケア医のための心房細動入門 全面改訂版
編集
最近読んだ本
最新の記事
ACC/AHAなどから202.. |
at 2023-12-10 23:12 |
ライフスタイルを重視した新し.. |
at 2023-11-06 21:31 |
入院中に心房細動が初めて記録.. |
at 2023-11-05 11:14 |
フレイル高齢心房細動患者では.. |
at 2023-08-30 22:39 |
左心耳閉鎖術に関するコンセン.. |
at 2023-06-10 07:29 |
患者ー医療者間の「心房細動体.. |
at 2023-04-26 07:27 |
心房細動における認知症の評価.. |
at 2023-04-20 07:29 |
AIによる心房細動の診断と発.. |
at 2023-04-14 07:30 |
心房細動診療の新しい"ABC.. |
at 2023-04-10 05:00 |
心房細動早期発見の現状と課題.. |
at 2023-04-09 10:58 |
検索
記事ランキング
最新のコメント
血栓の生成過程が理解でき.. |
by 河田 at 10:08 |
コメントありがとうござい.. |
by dobashinaika at 06:41 |
突然のコメント失礼致しま.. |
by シマダ at 21:13 |
小田倉先生、はじめまして.. |
by 出口 智基 at 17:11 |
ワーファリンについてのブ.. |
by さすけ at 23:46 |
いつもブログ拝見しており.. |
by さすらい at 16:25 |
いつもブログ拝見しており.. |
by さすらい at 16:25 |
取り上げていただきありが.. |
by 大塚俊哉 at 09:53 |
> 11さん ありがと.. |
by dobashinaika at 03:12 |
「とつぜんし」が・・・・.. |
by 11 at 07:29 |
以前の記事
2023年 12月2023年 11月
2023年 08月
2023年 06月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 03月
2007年 03月
2006年 03月
2005年 08月
2005年 02月
2005年 01月