人気ブログランキング |

肺塞栓症の診断にWells クライテリアはプライマリーケアにおいても有用:BMJ

Diagnostic prediction models for suspected pulmonary embolism: systematic review and independent external validation in primary care
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h4438 (Published 08 September 2015)

目的:肺塞栓症を除外診断する予測モデルがプライマリーケアセッテイングで容易に適応できるかの検証

デザイン:システマティックレビューおよびそれらのモデルのプライマリーケアへの適応度評価のための外的妥当性検討

セッテイング:オランダの300のジェネラリスト

参加者:プライマリーケアで肺塞栓症を疑われた598患者のデータセット

アウトカム:
・系統的文献サーチによる全モデルの鑑別能力(計算及びC統計量から)
・Dダイマーを含むカットオフ値による肺塞栓リスクの高低評価後,感度,特異度,的中度,failure rate(偽陰性/検査陰性)を測定

結果:
1)10個の肺塞栓診断モデルが見つかった

2)次の5つのモデルをプライマリ・ケアデータセットにおいて妥当性評価;Wells, modified Wells, Simplified Wells, revised Geneva, simplified revosed Geneva

3)妥当性;全モデルで同等=C統計量0.75〜0.80

4)感度:88%(simplified revosed Geneva)〜96%(Simplified Wells)

5)特異度:48%(revised Geneva)〜53%(implified revosed Geneva)

6)failure rateは差がある:1.2%(Simplified Wells)〜3.1%(revised Geneva):絶対差1.98%

7)予測モデルにかかわらず,3人の患者では低リスクとして誤って層別化され,専門病院紹介後のみに診断された

結論:5つの肺塞栓診断予測モデルはプライマリ・ケアでも妥当であった。効果は同等だったが,Wellsクライテリアが低誤診率という点で最も優れていた。

### プライマリーケアでの胸痛患者さんを診る上で大変重要と思いご紹介しました。

肺塞栓の診断予測スコアとしてはWellsスコアとGenevaスコアが有名ですが,いずれも救急部門の患者のデータに基づいたものです。診断はプライマリーケアレベルでくだされる場面も多いため,こうしたスコアがプライマリーケアでも適応できるかの検討は実はかなり我々の知りたいところかと思います。

研究方法としては,プライマリーケアにおいて肺塞栓の疑いありとされた患者の各モデルでのスコアを解析して最終的にDダイマー及び専門施設で診断し,各モデルの妥当性を統計学的に解析するというものです。

ちなみにWellsクライテリアは以下で,
1)DVTの症状・身体所見(3点)
2)肺塞栓以外の可能性低い(3点)
3)心拍数>100(1.5点)
4)3日以上の臥床または4週以内の手術歴(1.5点)
5)肺塞栓またはDVTの既往(1.5点)
6)喀血(1点)
7)悪性腫瘍(1点)


Simpledは7点以上で高確率,2〜6点で中等度,1点以下で低確率とする評価法で,Modifiedは5点以上で「らしい」4点以下で「らしくない」とする評価法です。

プライマリーケアレベルでもSimpled Wellsスコアで低リスクかつDダイマー陰性なら肺塞栓の疑い10人中4人は除外できることだそうで,一応押さえておきます。

ただし,Wellsの基準は「肺塞栓以外の可能性低い」とあるのがくせもので,これをどう診抜くかは医師の腕になります。心不全,急性冠症候群,その他の肺疾患,大動脈解離,,,これらが否定的であることで決まってくるということでやはり肺塞栓は除外診断の面が強いのですね。

プライマリーセッティングではDVTの症状や喀血を呈する例はなかなか無く,BMJで今回Wellsがいいと言われても,やっぱりWellsだけでは物足りない気もします。かといって他の心電図所見,SIQIIITIIIなどの感度は低いですので,クライテリアに上げるにはなかなかこれだという所見がない(特にプライマリーケアでは)ということで,やはり肺塞栓,特に低リスク例の診断は難しい,まずその疾患を思い浮かべるところから始めよということかと思います。

改めて言いますが,このように患者のアセスメントスコアの多くはERや入院患者セッテイングで作成された物が多いと思われます。CHADS2スコアからして入院患者ベースです。こうした救急ベースのスコアのプライマリーレベルへの「外的妥当性」を「評価する」という取り組み,非常にありがたいです。こういう研究をもっと読みたいなあ。
by dobashinaika | 2015-09-09 22:52 | 循環器疾患その他 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

プロフィールを見る
画像一覧
更新通知を受け取る

S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

カテゴリ

全体
インフォメーション
医者が患者になった時
患者さん向けパンフレット
心房細動診療:根本原理
心房細動:重要論文リンク集
心房細動:疫学・リスク因子
心房細動:診断
抗凝固療法:全般
抗凝固療法:リアルワールドデータ
抗凝固療法:凝固系基礎知識
抗凝固療法:ガイドライン
抗凝固療法:各スコア一覧
抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術
抗凝固療法:適応、スコア評価
抗凝固療法:比較、使い分け
抗凝固療法:中和方法
抗凝固療法:抗血小板薬併用
脳卒中後
抗凝固療法:患者さん用パンフ
抗凝固療法:ワーファリン
抗凝固療法:ダビガトラン
抗凝固療法:リバーロキサバン
抗凝固療法:アピキサバン
抗凝固療法:エドキサバン
心房細動:アブレーション
心房細動:左心耳デバイス
心房細動:ダウンストリーム治療
心房細動:アップストリーム治療
心室性不整脈
Brugada症候群
心臓突然死
不整脈全般
リスク/意思決定
医療の問題
EBM
開業医生活
心理社会学的アプローチ
土橋内科医院
土橋通り界隈
開業医の勉強
感染症
音楽、美術など
虚血性心疾患
内分泌・甲状腺
循環器疾患その他
土橋EBM教室
寺子屋勉強会
ペースメーカー友の会
新型インフルエンザ
3.11
未分類

タグ

(40)
(34)
(34)
(27)
(27)
(26)
(25)
(24)
(21)
(20)
(19)
(18)
(17)
(16)
(14)
(13)
(13)
(13)
(13)
(13)

ブログパーツ

ライフログ

著作

もう怖くない 心房細動の抗凝固療法


プライマリ・ケア医のための心房細動入門

編集

治療 2015年 04 月号 [雑誌]

最近読んだ本

ケアの本質―生きることの意味


ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から


中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)


健康格差社会への処方箋


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書)

最新の記事

心房細動診断においてスマホに..
at 2019-09-19 06:30
第17回どばし健康カフェ「心..
at 2019-09-05 08:51
強い症状のない血行動態の安定..
at 2019-09-04 06:36
冠動脈疾患合併心房細動におけ..
at 2019-09-03 07:29
製薬企業をスポンサーとするD..
at 2019-08-30 08:29
心房細動に対する経皮的頸動脈..
at 2019-08-22 06:42
フレイルと心房細動,抗凝固療..
at 2019-08-21 07:00
オープンダイアローグと診療所診療
at 2019-08-13 07:00
周術期ヘパリンブリッジなしで..
at 2019-08-09 06:28
日経メディカルオンライン更新..
at 2019-08-06 07:30

検索

記事ランキング

最新のコメント

いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
取り上げていただきありが..
by 大塚俊哉 at 09:53
> 11さん ありがと..
by dobashinaika at 03:12
「とつぜんし」が・・・・..
by 11 at 07:29
> 山川玲子さん 山川..
by dobashinaika at 23:14
運慶展を観た方にWEB小..
by omachi at 19:45
> terryさん ご..
by dobashinaika at 08:38
簡潔なまとめ、有り難うご..
by 櫻井啓一郎 at 23:16
いつも大変勉強になります..
by n kagiyama at 14:39

以前の記事

2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 03月
2007年 03月
2006年 03月
2005年 08月
2005年 02月
2005年 01月

ブログジャンル

健康・医療
病気・闘病

画像一覧

ファン