人気ブログランキング |

高齢者における抗血栓症法に関するエキスパートの意見:EHJ誌

Antithrombotic therapy in the elderly: expert position paper of the European Society of Cardiology Working Group on Thrombosis
Felicita Andreotti et al on behalf of the ESC Thrombosis Working Group
European Heart Journal doi:10.1093/eurheartj/ehv304


ESCから高齢者の抗血栓療法のエキスパ−トポジションペーパーがでています。
抗凝固療法のところを簡約します。

<イントロ>
・75歳以上を'elderly'とよぶ
・各種データベースやリスクスコアは65歳で切っている

<虚血と出血のリスクに関する年齢のまとめ>
・CHA2DS-VAScスコア1−2の人も3点以上の人も、HAS-BLEDスコアの高い人も低い人も年々イベントリスクは増加
・抗凝固療法はそれらイベントリスクを全て下げる

<抗凝固薬>
【ビタミンK阻害薬】

・年齢とともに出血は増加
・米国の高齢者の薬物相互作用による救急入院99,628例のうちワルファリン関連は3分の1
・RCTでのワルファリン大出血率は75歳未満で1.7−3.0%、75歳以上で4.2−5.2%
・同じINRのに到達するのに若年者より低用量で良い
・上昇したINRを正常化させるには時間が必要
・75歳上のNVAF対象のBAFTA試験では、アスピリンより脳卒中/全身性塞栓症予防効果ぬ優れ、出血は同じ
・静脈血栓塞栓症でも適応あり。禁忌なし
・若年者よリ、低用量でタイトな管理が必要

【直接トロンビン阻害薬:ダビガトラン】
・RE-LY での脳卒中/全身性塞栓症予防:150x2では年齢に関係なし
・頭蓋外出血;110x2で顕著に減らすが75歳以上でなその傾向はない。150x2では75歳以上で明らかに増える
・頭蓋内出血:年齢にかかわらず減る
・消化管出血:150x2で増える
・腎機能低下:CrCL30未満→米国では75x2。欧州では80歳以上では110x2
・年齢だけではダビガトランの使用禁忌にはならないが、血中濃度、引いては虚血や出血に影響する
・150x2に変わって110x2を考慮するときは年齢75〜79であり、欧州では80歳以上で推奨される

【直接Xa阻害薬:リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン】
・ROCKET-AF試験
・44%は75歳以上
・脳卒中/全身性塞栓症;ワルファリンに非劣性
・大出血:ワルファリンと同等
・頭蓋内出血、致死的大出血は減少
・消化管出血は増やす
・上記の関係に関し年令による交互作用なし

・ARISTOTOLE
・31%が75歳以上
・脳卒中/全身性塞栓症、大出血、頭蓋内出血、死亡率共ワルファリンに勝る
・80歳以上の13%にも同様の結果
・消化管出血はワルファリンとくらべてコモンではない

・ENGEGE AF-TIMI48
・40%が75歳以上
・脳卒中/全身性塞栓症は減らす
・大出血、頭蓋内出血減らす
・消化管出血は60mgでより多い
・30mgは虚血性脳卒中を増やすが、死亡率、消化管出血は減らす
・これらの結果は異なる年齢のサブグループでも同じ

・CrCL15超の例では、我々はワルファリンよりも直接Xa阻害薬を勧める
・頭蓋内出血は少ない、全体の有効性、安全性が良い。モニターの必要がない
・薬剤相互作用、消化管出血の可能性、腎機能低下例における減量には注意


### 75歳以上についての言説ととらえましょう。ダビガトランについては明確なことは言っていないようです。
その他のXa阻害薬は、本試験と75歳以上の結果がほぼ変わりないことから、概ね75歳以上でもNOACを推奨のようです。
ただ85歳以上となると各RCTでも数%しかエントリーされておらず、しかしながら実臨床では大変多くなってきており、この論文を読んだとしても悩むところです。

また高齢の方では、認知機能と転倒リスクが常に問題となるので、そのことについても言及して欲しかった気がします。

個人的には、要するにエビデンス的にはXa阻害薬でも良いが、85歳以上、認知症、高転倒リスクについては一律な解答はない。そうしたComplicatedなケースでない場合はNOACで良い、というスタンスを取って行きたいと思います。

$$$ ブラタモリで紹介された、当院すぐ裏手の四ツ谷用水の洗い場あと。見事に階段上になっています。
a0119856_2291771.jpg

そして今日のにゃんこ
a0119856_2295880.jpg

by dobashinaika | 2015-07-14 22:11 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

プロフィールを見る
画像一覧
更新通知を受け取る

S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

カテゴリ

全体
インフォメーション
医者が患者になった時
患者さん向けパンフレット
心房細動診療:根本原理
心房細動:重要論文リンク集
心房細動:疫学・リスク因子
心房細動:診断
抗凝固療法:全般
抗凝固療法:リアルワールドデータ
抗凝固療法:凝固系基礎知識
抗凝固療法:ガイドライン
抗凝固療法:各スコア一覧
抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術
抗凝固療法:適応、スコア評価
抗凝固療法:比較、使い分け
抗凝固療法:中和方法
抗凝固療法:抗血小板薬併用
脳卒中後
抗凝固療法:患者さん用パンフ
抗凝固療法:ワーファリン
抗凝固療法:ダビガトラン
抗凝固療法:リバーロキサバン
抗凝固療法:アピキサバン
抗凝固療法:エドキサバン
心房細動:アブレーション
心房細動:左心耳デバイス
心房細動:ダウンストリーム治療
心房細動:アップストリーム治療
心室性不整脈
Brugada症候群
心臓突然死
不整脈全般
リスク/意思決定
医療の問題
EBM
開業医生活
心理社会学的アプローチ
土橋内科医院
土橋通り界隈
開業医の勉強
感染症
音楽、美術など
虚血性心疾患
内分泌・甲状腺
循環器疾患その他
土橋EBM教室
寺子屋勉強会
ペースメーカー友の会
新型インフルエンザ
3.11
未分類

タグ

(40)
(35)
(35)
(27)
(27)
(26)
(25)
(24)
(21)
(20)
(20)
(19)
(18)
(16)
(14)
(13)
(13)
(13)
(13)
(13)

ブログパーツ

ライフログ

著作

もう怖くない 心房細動の抗凝固療法


プライマリ・ケア医のための心房細動入門

編集

治療 2015年 04 月号 [雑誌]

最近読んだ本

ケアの本質―生きることの意味


ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から


中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)


健康格差社会への処方箋


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書)

最新の記事

【Apple Heart S..
at 2019-11-26 07:35
心房細動合併透析患者において..
at 2019-11-21 06:49
日本の心房細動患者の死因の半..
at 2019-11-11 07:22
CHA2DS2-VAScスコ..
at 2019-10-30 17:36
中高年開業医におけるヤブ化防..
at 2019-10-18 07:27
日経メディカルオンライン:第..
at 2019-10-15 06:26
新規発症心房細動では服薬アド..
at 2019-10-06 10:47
心房細動診断においてスマホに..
at 2019-09-19 06:30
第17回どばし健康カフェ「心..
at 2019-09-05 08:51
強い症状のない血行動態の安定..
at 2019-09-04 06:36

検索

記事ランキング

最新のコメント

いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
取り上げていただきありが..
by 大塚俊哉 at 09:53
> 11さん ありがと..
by dobashinaika at 03:12
「とつぜんし」が・・・・..
by 11 at 07:29
> 山川玲子さん 山川..
by dobashinaika at 23:14
運慶展を観た方にWEB小..
by omachi at 19:45
> terryさん ご..
by dobashinaika at 08:38
簡潔なまとめ、有り難うご..
by 櫻井啓一郎 at 23:16
いつも大変勉強になります..
by n kagiyama at 14:39

以前の記事

2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 03月
2007年 03月
2006年 03月
2005年 08月
2005年 02月
2005年 01月

ブログジャンル

健康・医療
病気・闘病

画像一覧

ファン